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(旧)天下一の向日葵  作者: 茶眼の竜
第二章 成り上がる向日葵
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六十六日目 旅立ちの時


「次に攻めるべきは河野(こうの)でごさいます!!」

「「はぁ?!!」」


この言葉には、何でもと言った国親(くにちか)でさえ大驚き。長宗我部(ちょうそかべ)家臣団の全員が口をパクパクと....。


「き、菊之助(きくのすけ)殿っ?!」

「き、貴様!殿の前で、な、何を言うか!!」

「はっはっはっ!面白いでは無いか!」

「菊之助の考える事だ、何か良い策があるのではないかと思うが....。し、しかし...。」

「ふむ、親秀(ちかひで)、なぜそのように思おたのですか?」


意外な事にも一番に掘り下げてきたのは孝頼(たかより)だった。


「理由としては、河野が瀬戸内の向こうにいる毛利(もうり)と手を結んでしまっては四国統一をするのが遅くなってしまいます。」

「時間をかけゆっくりと行けば良いのではないか?」

「我らがゆっくりとしていればその分周りの大国は力を蓄え、四国に手を伸ばそうとしてきます。既に三好(みよし)讃岐国(さぬきのくに)を手に入れています。そこを潰すのに時間をかけるべきです。」

「ふむ、しかし、そもそも我らが四国を統一出来るとは限らんぞ?河野を攻めている間に一条(いちじょう)に攻められ、滅ぼされるという可能性はないか?」

「そうですね、ただ、逆に一条を攻めている間に河野が攻めて来ないとは限りませぬ。であれば、前者の方が簡単ではありませんか?

「う、うむ....。」

「殿、如何致しましょう。」


ほろ酔い気分で上機嫌だと思っていた国親の顔は既に戦の顔となっていた。


「親秀、勝算はあるのか。」

「いえ、今はありませぬ。」

「貴様、それでよく申したな!!」


まぁ待て待て、と国親が親政(ちかまさ)を抑えるが、静まりそうないね。でも怒られても仕方が無いことを言ったのだから、逆に国親が怒らないのが不思議だ。


「先の戦で殿が見たと言う敵の妖術がある限り、こちらに勝ち目はないでしょう。しかし、その術をこちらも使えるようになれば同等か、それ以上の戦力となりましょう。」

「あの妖術が使えるようになるのか?!」

「はい。そもそもあれは妖術ではなく、種ヶ島という武器です。あとは手に入れ、兵に持たせるだけでごさいます。」

「ほほう。」


みんな納得してくれてそうだ。話はトントン拍子で進んでいき、このまま上手くいくと思っていた。だが、まさか孝頼がそんな事を聞いてくるなんて。まぁ予想してなかった訳では無いのだけれど。


「親秀はどこでその情報を?」


なんて答えたらいいのか一瞬息が詰まる。俺は前世で歴史が好きだったため、これから起こることを粗方知っている。そんな事言える訳が無い。しかし、答えない訳にもいかない。


「ら、乱波が....。」

「乱波?」

「い、いえ、出雲(いずも)から聞きました!」

「え?!」


乱波と言った後々面倒くさそうだから、すまんが出雲、匿ってくれ!


「なんと、出雲殿、本当なのですか?」

「ええ?!」


頼む、と申し訳なさそうに出雲を見ていたら納得したのか、諦めた顔をして頷き始めた。


「はい、あれは妖術ではありません。菊之助殿が話した事は全て事実でございます。某が本山(もとやま)家に仕えている時に一度見たことがあります。」

「で、あるか。」

「殿...。」


国親は腕を組み、少し間を開けてから話し始めた。


「親秀の提案は理にかなっている。次は一条と事を構えることとなると思っていたが、河野と三好も放置はできん。それに、種ヶ島という武器、実に興味深い。よって、親秀、お前に命を言い渡す。手段は問わん、種ヶ島を入手し、軍備を強化せよ!」

「ははっ!」

「それに伴って何か要望はないか?少しくらいなら受け入れてやれそうだが。」

「では、遠出をしたいと思いますので、少しばかりのお金と弥三郎(やさぶろう)を同行させる許可を頂きたいのです。」

「銭は用意させよう。しかし何故、弥三郎を連れて行くのだ。」

「弥三郎は一人になると何をしでかすか分かりませんからね。それにあの子は外の世界を見るべきです。今後のためにも。」

「今回の二の前になるのもあれだしのぅ。わかった、許可しょう。」

「しかし、殿....。」

「孝頼、お主はいつも最初に心配をする。大丈夫じゃよ。なんたって親秀は"悪魔"と噂されるぐらいだからのぅ。」


悪魔。そうかそれで朝からここにいる人たちの目が怖いんだ。どこか俺の事を警戒しているような、そんな感じ。


「許可して頂きありがとうございます。それではわたしは準備がありますのでこれにて。」


俺と出雲が去った後でも大広間では話し合いが続いていた。


「宜しいのですか、殿。」

「何がじゃ。」

「黒幕が泰惟(やすこれ)と分かったものの、あの者が白と決まった訳ではありませぬ。」

「うむ、だが、少なからずあやつは我が家のために動いてくれている。信じても良いのではないか。」

「某はここ最近あいつの行動を見はっていましたが、何もおかしな行動はしていなかった。白と思ってもよろしいでしょう。」

「某もそう思いますが、まさか親政殿からそのような事が聞けるなんて。」

「ふんっ。」

「まぁ孝頼、皆がここまで言うのだ信じてもよかろう。それにあやつがやろうと思えば一国を滅ぼすのも容易いだろう。少し退却していたとはいえ、あの泰惟軍6000をたった一人で全滅させたのだから。」

「"悪魔"ですか。分かりました、殿に免じてあの者を信じることにしましょう。」


ーーーーーーーーーーーーーーー


二日後、俺と弥三郎は国親に挨拶を済ませ、種ヶ島探しの旅に出た。


「菊之助、これからどこに行くのだ?」

(さかい)に行こうと思う。」

「そこに種ヶ島というのがあるのか?」

「多分な。」

「お主、此度もらった土地はどうするのだ?放っておくのか?」

「今日はやけに質問が多いな。放っている訳ではないよ、村の事は出雲に任せた。やって欲しいことがあったからな。堺まで時間はたっぷりある、出雲に頼んだことを教えてあげるよ。」

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