六十五日目 元服の儀
「いやーめでたい!実にめでたいのぅ!」
周りが慌てて準備をしている時に一人高座に座りかえる国親。
その頃、俺は別の部屋に移動させられ、綺麗な着物に着替えさせられていた。7歳くらいの男の子達に囲まれ、着方を知らない俺にあーでもないこーでもないと教えてもらい、ようやくの所で着ることが出来た。
「ありがとう!」
「苦しいところはありませぬか?」
「うん、大丈夫!」
俺が大広間へと戻った時には滞りなく準備が進んでおり、いつでも儀式を始められる状態であった。
「本命の登場じゃ!」
「殿、少しはしゃぎすぎですよ。全く、お酒まで飲んで....。」
「今日ぐらい良いではないか!菊之助は息子も同然と思おておるからな!いっその事、儂の後を継ぐか!!」
「「え.....?」」
「殿、お口が過ぎます。」
「はっはっはっ!冗談じゃよ!さっ、始めようではないか!親政、良い名は思いついたか?」
「はっ。"親秀"などどうでしょうか?」
「秀でているか...。うむ、良いではないか!早速、儀式を始めようぞ!」
「菊之助、こっちじゃ。」
笑顔の重俊に手招きされ、位置に着いたのは国親を正面に右手。反対には烏帽子を持っている親政が。両者は向かい合い、俺は膝を着く。
「これより貴様は元服し、親秀と名乗れ。これで貴様も立派な武士よ....。」
あ、親政が少し照れてる。今まで百姓上がりとかなんとかしか言われてこなかった人の口からまさか立派な武士なんて言葉が聞けるなんて、もう感動。まぁ、このちゃんとした場で貴様って呼んでくる辺りは親政らしいけど....。
「ふふ。」
「何が可笑しい!早く頭を下げろ!!」
「は、はい!」
俺が頭を下げた所に親政はそっと烏帽子を乗せて顎の下で紐をくくり固定してくれた。その流れで親政も膝を着き、二人して国親の方へ顔を向けた。
「うむ、良い儀式であった!では親秀、何か申すことはあるか?」
「はっ、それではこの場をお借りして....。」
「何も勿体ぶっておる。さぁさぁ何でも構わん!」
前々から考えていた。家臣になった時、最初に提案をしようと。
俺はすぅーっと深く息を吸う。
「次に攻めるべきは河野でごさいます!!」
「「はぁ?!!」」




