五十九日目 八流の戦い8
久礼野には丘を下った先に少し開けた場所がある。そこで長宗我部軍と河野軍が争ったであろう光景が広がっていた。
「九七....。四助....。」
俺は必死に友を探した。
辺りは無数の屍が転がり、大地は赤く染まっていた。それはまるで地獄のような光景。
「吉丸.....。」
ふと、重なり合った死体が視界に入った。丁度、三人分。
「九七、四助、吉丸.....。ーーーーーーっつっっ!!!!!」
三人の死体は庇い合う様に倒れていた。
おそらくその通りなのだろう。
九七が下敷きとなり、その上から後の二人のものが覆いかぶさっていた。二人とも背中に傷を残して。
「菊之助殿...。」
「わ....。わか...とらは....。」
俺は辺りを見渡した。
あいつの髪は黄色だ。目立たないはずが無い。赤く染った地面に咲く、一輪の菊の様だった。
「ーーーーーあああぁぁぁぁぁあああぁっっっっつつつ!!!!」
心の中で叫んだはずだったのだが、我慢出来ずに盛れてしまった叫び。その声に敵の残兵が気付き近づいてくる。
「おい、見ろよ。まだ生き残りがいたぜ!」
「へへっ!まだ、殺し足りないと思ってた所だぜ!」
「全く、よく後からノコノコ来れたもんだ。」
俺の心は怒りが爆発して、どうしようも出来ない状況だった。
ーーーーこの怒りを全て刀にのせる。サンドバッグが自らやってくるなんて、都合よすぎ。
「菊之助殿!逃げますぞ!」
「離せ。」
バッ!
俺は出雲の手を振り払い、すっと刀を抜く。
「へへ、あいつヤる気だぜ!ひゃっはーー!!」
ザシュッ!
ああ、なんて脆い生き物だろう。人間なんて首が切れればそれで終わり。
「き、貴様ーー!!!」
ザシュッ
また一つ、また一つと命の灯火が消えていく。




