五十六日目 八流の戦い5
「と、殿っっ!!一大事にございますっ!!」
「なんじゃ、騒がしいの。」
「本来ならば孝頼様に一度お伝えするところ...。」
「よい、申せ。」
「ははっ!たった今、城から報せが参り、本山城にて秦泉寺 泰惟が謀反との事っ!!」
「....は?な、なぜ.....。」
「先方は既に出陣しており、その数およそ9000!」
「な、なに?!そのような数、どこで集めたのだ!」
「そ、それが、報せによりますと、軍勢の中に河野との旗印が...。」
「こ、河野....。」
「河野の治める伊予には、元本山家家臣の吉松 光久を追放しております。おそらく内通しておったのでしょう。」
「許さん!許さんぞ!」
「恐れながら!報せはまだありまして....。」
「一気に申さぬかっ!!」
「も、申し訳ありませぬ!し、報せによりますと、弥三郎様が人質となっているとの事!!」
「な、なにぃ?!」
思考の停止している国親にはもう何が何だか...。
「泰惟の指南を受けに訪れた際に、捉えられたとのこと。」
「あのバカ息子が...。なぜこのような時に!...して、解放の要求はなんだ。」
「は、岡豊城並びに朝倉城を開け渡せと書かれておりまする。」
「ほぼ全てではないか!」
「応じぬ場合は武を持って制すと...。」
「武を持ってだと...。戦いが望みならそれに応えてやるのみよ!孝頼、当たるとすればどこじゃ!」
「はっ。おそらく久礼野になるかと。」
「ならば、これより我が軍は久礼野へ向かう!親政には安芸城を包囲し次第、手の空いたものを回せと伝えろ!」
「はっ!」
「では、急ぎ向かうぞ!!」
「「ははっ!」」
一方その頃、俺たち親政軍は安芸 国虎との野戦に勝利し、敵を城へと追い込んでいた。
「あと一歩で安芸城へと着く!皆の者、踏ん張りどころじゃ!」
「「おおっ!!」」
そんな中ニヤニヤとする出雲の姿があった。
「出雲、何がそんなに嬉しいんだ?」
「えへへ、某、菊之助殿と共に戦えると思うと笑みが止まりませぬ!某は幸せにございます!」
「そ、そうか....それはよかったねぇ...。」
ここまで来るとちょっと怖いんですけど...。
「して、此度も何が良い作をお考えなのですか?」
「策?そんなもの考えてないよ。」
「はへ?」
史実だと確か、敵の家臣たちをどんどん内応させてって内部崩壊をさせたんだっけ。でも内応には事前から準備をしてないといけないから、今回は無理だな。ただ、敵の井戸に毒を入れるのは使えるかも。まぁ城の中まで入れたらだけどね。
「お待ちくだされ、親政殿!!」
「いや、儂は行くぞ!全軍、儂に着いてこい!!」
ん?どうしたんだろう。いつもの事だけど、親政様が怒っていらっしゃる。っていうかいつも以上かもしれない。
「出雲、何かあったの?」
「某にも分かりませぬ。」
俺と出雲は人混みをかき分け、親政の所に行った。
「どうかされたのですか?」
「黙れ!!この農民風情が!貴様など呼んでおらぬわ!!」
こ、これは酷い言われようだ。いや、事実なんだけど。
「親政殿、流石にそれは言い過ぎではありませぬか?菊之助は貴殿の与力ですぞ?」
「ふん、今の儂に話しかけるのが悪い!」
「重俊様、何があったのですか?」
「実は、本山城にて秦泉寺 泰惟が謀反を起こしおってな。今、殿が兵を連れて向かっているのだが...。」
「勝てるわけがなかろう!じゃからこの場におる全員で行くと儂は申しておるのじゃ!!」
「しかし、殿のご命令では包囲をした後、手の空いた者を回せとの事ですぞ!安芸を包囲しなければ、殿のご命令に逆らうこととなります!」
「しかし、その殿が死んでは元も子もないではないか!」
....全く話が読まないのだが。泰惟が謀反?それは分かったでもなぜ、国親様では勝てないのだ?
「なぜ、勝ち目がないのですか?」
「それは...。」
「成り上がり者の貴様に教えてやる!泰惟は河野から軍を借りている!その数9000!殿には2000しかおらぬ!勝てるわけがなかろう!!」
「9000....。」
なるほど、勝てないわけだ。さて、どうしたものかなぁ。
「菊之助殿、何かないのですか?」
「うーん。無いこともないよ。ただ...。」
「ただ?」
「今の親政様が俺の考えを認めてくれるか、どうか。」
「ならば菊之助殿がその策のご説明を。いざとなれば某が考えた事にして下さいませ。さすれば親政様は何も言わぬでしょう。」
「分かった。出雲の名前、借りるね。」
「はい!」




