五十三日目 八流の戦い3
福留 親政率いる長宗我部軍5000と、安芸 国虎率いる2000の兵がここ、八流にてぶつかろうとしていた。
「まさかこうしてお主と肩を並べて戦う日がこんなに早くに来るとはのう。」
「重俊様。わたしも重俊様とこうして戦うことを夢に見ておりました。此度はそれが叶おうとしている。嬉しい限りでごさいます。」
今回の戦も先鋒は吉田 重俊が務める。俺たち遊撃隊はそれに混じって先陣を切る事にした。
「はっはっはっ!嬉しい事を言ってくれるのう!此度も必ず勝鬨を上げようぞ!」
「はいっ!」
「そう言えば此度は出雲殿が中堅のようじゃな。」
「そうですね。今頃、兵に一喝入れているところでしょうかね!」
そんな俺の思いとは裏腹に本人は戦を前にして意気消沈していた。
「......ああ、長宗我部家に仕えて最初の戦が、菊之助殿と共にではないとは....。某がこの身をもって御守りすると言っていたのに...。はぁぁ....。」
「お、おい。あの大将大丈夫か?さっきからため息ばっかだぞ?」
「しーーっ!そんなに大きな声だと聞こえちゃうって!」
「しかし、俺たちの命を預ける人があれでは....。」
「ばっか!首が飛ぶぞ!」
....聞こえておる、とボソッと出雲。
それぞれがいろいろな思いを抱く中、現代にまで語り継がれるほど、歴史に残る大きな戦いが親政の指示の元、始まろうとしていた。
「親政様、準備が出来たようにございます。」
「よし、皆の者!あやつらは殿のお優しい心意気を踏みにじった!もちろん、死あるのみだ!!これは大義名分のある立派な戦だ!心置き無く狩り尽くせ!!」
「おおおっ!!」
「法螺貝を鳴らせ!」
「はっ!」
ブォォォオォオーー。
「さぁ、行くぞ菊之助!!」
「はっ!!」
「皆の者、かかれぇぇえ!!!」
「「おおっぅ!!」」
バチンッとぶつかる前線の足軽たち。押し勝つ者、吹き飛ばされる者、早々と死に行く者。前線では常に様々な出来事が起こっていた。その中心となろうとしている所が俺のところだった。
「遊撃隊、俺に続いて道を切り開けっ!!」
「「おおっ!!」」
相手も農兵だろうか。軽装な甲冑のため、弥三郎に貰ったこの刀がすんなりと敵を切り裂いていく。
先鋒部隊と遊撃隊を合わせて1500。相手も先鋒だけで1500。同数がために前線は入り乱れていた。
でも、ちょっとごちゃごちゃしすぎでしょ!後ろを確認しても俺の兵たち着いてこれてないし。こういう時はーーー。
「ちょいと肩借りるぜ!」
「お、おい!」
俺は敵兵を踏み台に高く飛び、敵のド真ん中に着地した。
「て、敵が降ってきたぞ!」
「皆で串刺しにするぞ!」
菊岡流ーーー。
俺は刀を横に構え、ぐるりと周りを切りつけ、弾け飛ばした。
「水面の睡蓮っ!!」
「ぐ、ぐぁぁ!」
直径二メートルぐらいだろうか、入り乱れた前線の中にポツリと穴が空いた。
これだけ動ける隙間があれば....!!
敵を一人切っては振り向き、切っては振り向きと、それを繰り返し、動ける範囲を維持しつつ敵陣の方へと切り進んで行った。
「こいつ、どうなってるんだ!槍が当たらねぇ!ぐわぁぁ....!」
「き、貴様ぁ!!ぐぁぁあ!!」
俺に槍の間合いは関係ない。もちろん弥三郎との稽古で攻略済み。俺は次々と敵兵の首を落としていった。




