五十ニ日目 八流の戦い2
俺たち、親政軍は進軍を続け、安芸国を目前に迫っていた。
「申し上げます!敵軍は八流にて陣を張った模様!」
「報告ご苦労。....あやつを呼べ。」
「はっ!」
親政に呼ばれた俺は、待たせると機嫌が悪くなってしまうので、一目散に追いついた。
「お呼びですか?」
「やっと来たか。」
やっとって言ってるけど呼ばれてまだ十分も経っていないと思うのだが。
「何か御用でしょうか?」
「ふん、お前に用はない!」
「ええ?!」
「用があるのはお主の隣におる出雲じゃ。」
「某でございますか?」
「ああ、お主に2000の兵を預ける。中堅を務めろ。」
「そ、某だけにございますか...。」
チラリとこちらを見る出雲。
「何故、某がでございますか?親政殿には与力の菊之助殿がいらっしゃいますのに。」
「殿の命だ仕方がなかろう。それにお主は長宗我部の一家臣じゃ。任されたとて何も不思議ではなかろう。」
「し、しかし...。」
「実はもう一つ殿の命令がある。儂の本意では決して無いのだが...。お前に500の兵を預ける。遊撃隊として、戦場を駆けろ。」
「俺が遊撃を...。」
「そうじゃ、お主とて足軽大将なのだろう。ちゃんと働け!あと、活躍せねば儂が罰を与えてやるからな。分かったらととっと行け!」
「「ははっ!!」」
まさか遊撃隊を任されるなんて...。
「流石、国親様ですな!菊之助殿の特性をよく理解しておられる!」
「俺の特性か...。」
「ええ、型にはまらぬその動き。必ずや良い働きが出来ましょうぞ!」
型にはまらない動きか...。
「ふぅぅ...。いっちょやってみますか!」
「ふふっ。」
「なんだ、気持ち悪いな!」
「いえっ、やっと菊之助殿の顔が晴れましたので!」
「そりゃ兵を任されたんだ。嬉しくもなるさ!」
「ふふっ。では某は準備がありますのでこれにて。」
さて、俺が預かる500人とはどこに居るのだろう。
近くにいた足軽に聞き、案内をしてもらった。そこにはどこかしらの村から来た男達が並んでいた。
「こちらにございます。」
「ありがとう。」
案内してくれた足軽は役目を終え、元の場所へと戻って行った。さてーー。
「ねぇ、君たちはどこの村から来たの?」
「オラたちは少し西の方から来ました。」
「西の方って言うと...朝倉ら辺かい?」
「へい。」
「ふむ、そうか。」
てっきりあそこら辺の人達は防衛の方に回ると思っていたが、そうでも無いらしいな。
「ところで、貴方様はいったい?」
「あ、自己紹介が遅れたな。此度の戦でこの遊撃隊を任された菊之助だ!因みに元百姓だ!今は足軽大将として雇ってもらっている!」
「おお!貴方様が菊之助様ですか?!」
「へ?」
「噂はお聞きしていました!」
「貴方様の下で戦えるなんて光栄です!」
「俺たちの力、存分にお使い下さい!!」
噂か...。この二年で広まったあれだな。
「まぁ知っているなら話は早い!元は同じ農兵だ!気軽に接して貰えると有難い!」
「いえいえ、そんな、滅相もない。今は俺たちの大将です!身分は弁えております故。」
身分か...。現代から来た俺にとってはそんなの全く気にならないんだけどな。ま、こんなに目をキラキラさせて俺に期待してるんだ。それにはちゃんと答えないとな!
「よし!じゃあ早速、先鋒の部隊に混じって先陣を切る!お前ら、俺に続け!!」
「「おおっ!!」」
これから長く続く戦いが始まりを告げた。




