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(旧)天下一の向日葵  作者: 茶眼の竜
第二章 成り上がる向日葵
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四十六日目 戦う理由(前編)

俺の剣術指南に参加することになった出雲(いずも)。ニヤニヤが止まらない御様子。


「嬉しそうだな!」

「はい!なんたって、あの菊之助(きくのすけ)殿が考えた剣術となっては顔のニヤケが止まりませぬ!」


あの菊之助ってのは、どの俺なのか分からないが、まぁいいか。


「じゃあ、まずは今から町の外れまで走ってきてくれ。」

「へ?」

「ん?どうした、ニヤケが止まってるぞ?」

「今、なんと申しました?」

「手始めに町外れまで走ってきてって。」

「町外れまででごさいますか...。お使いか何かですか?」

「いや、まずは基礎の体力作りからだよ!」

「しかし...ここから町外れまでですか...。」

「そうだよ。嫌なのかな?」

「いえ!嫌ではございませぬ!」

「そうか!まぁ四半刻もあれば帰ってこられるだろう。」

「な....?!!」

「ま、つべこべ言わずにとっとと行く!」

「は、はいっ!!」


出雲は最初から全力疾走で駆けていった。


「最初からあんなに飛ばして大丈夫かな?」

「お主のう。普通の者では四半刻では帰って来れぬぞ。」

「え、弥三郎(やさぶろう)はどれくらいかかるの?」

「僕は半刻ぐらいかかるよ。」


四半刻って30分でしょ?ここの町はそこまで広くないし行けると思うけど。半刻あれば...町一周はして帰って来れるかな、などと考えていると、城の中から出てくる泰惟(やすこれ)の姿があった。しかも大層機嫌が宜しい様で、とってもルンルンだ。


「なんじゃ。あれは。」

「お前の元指南役じゃないのか?」

「それは見れば分かる。僕が言っているのはそうではなく、どうしてあんなに機嫌が良いのかって事だ。」


うーん、と考えていると俺は、ふと先程の国親(くにちか)の言葉を思い出していた。


「そう言えば、さっき国親様が泰惟様を本山城主(もとやまじょうしゅ)にするとか言ってたな。」

「それであの始末か。」

「多分そうだと思う。」

「あやつで大丈夫かの。あやつは時折、何を考えおるか全くわからん。」


まぁたしかに、と2人で泰惟を見つめていると、運悪く目が合ってしまった。こちらに気づいたらしく、満面の笑みを浮かべて近付いてくる。


「弥三郎様!お久しゅうございます!先日は館を留守にしておりまして、大変申し訳ございませんでした。次の戦では是非、我が城へお越しください!お待ちしております故。では!」


そう言って二の丸から出ていった。

なんとも風のような人ですな、と九七(くしち)


「そんな良さそうな奴じゃないぞ。」


そこから一刻が過ぎた頃、ようやく出雲が帰ってきた。俺は息の上がる出雲に竹筒を手渡した。


「かたじけのう、ごさいます。」

「じゃあ、早速始めるか?」


出雲は鬼を見るような顔をしていた。


「も、申し訳ございませんが、少しばかり、休みとう、ございます...。」

「そうか。....なら少しばかり、話をしようか。出雲は何か夢はある?」

「夢、でございますか。」


竹筒の中を空っぽにして、息を整えた出雲が問い返して来た。


「そうでございますな。夢、と言うか野望と言いますか、そんな大したものでは無いのですが...。某は天下を制する人に仕えておきとうごさいまする。」

「自分から天下を制しようとは思わないのか?」

「一度は考えましたが、今から始めても間に合わないと思い、諦めてしまいました。その代わりに某が主を導いて差し上げよう!と思おたのです。」

「その主が俺か?」

「如何にも!しかし、菊之助殿の場合は某が導くのではなく、導かれそうな気がしますな。」

「そんな事はないと思うけど。ま、これからよろしく頼むよ。」

「ははっ!某の全身全霊を込めて支えていきまする!」

「仲の良い者としてな!」

「今はまだ、でございますな!」


ま、そういう事にしておこう。


「さ、それじゃあ始めようか!」

「はい!」

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