四十五日目 弥三郎 vs 出雲
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この場をお借りして、御礼申し上げます。
「菊之助様の策は、それはもう素晴らしいもので!...」
「「は、はぁ。」」
何故か急に俺の自慢をし出した出雲。
まだ出会って半刻も経っていないのだが、よくもまぁそんなに喋れるわ、と見守っていた。
しかし、出雲の話に着いていけていない町人の子の3人。吉丸が痺れを切らし、俺に問いかけてくる。
「菊之助、このお方がさっき言ってた、一の家来ってのはどういう意味だ?」
「ああ、実はこの人、国親様ではなくて、俺に仕官して来たんだよ。」
「ま、まさか...金を...?!」
「いや、"おいどん"とか言わないからね。」
と、俺の冗談に爆笑する吉丸。お腹を抱えて、それはもう大爆笑。
「に、に、似あわないよ!」
「分かってるよ!」
こんなに笑われるとこっちが小恥ずかしくなってくる。少し頬に熱が籠るのを感じながら、気がつけば弥三郎の館へと辿り着いていた。
「遅いでは無いか!」
「すまんな、弥三郎!置いてきぼりにしてちゃって。」
「そう思おておるのならさっさと稽古を再開するぞ!」
「「はーい。」」
「や、弥三郎...様?!」
「ん?そやつは誰じゃ?」
「出雲だよ。」
説明が足りぬ、と弥三郎。
「まさか、このような所で国親様のご子息の方をお目にかかれるとは!某は元本山家家臣の神森 出雲と申します!先程、菊之助殿のけ...」
「仲良くなった者だよ!」
「おい、菊之助。この者の話が聞こえなかったでは無いか。」
「まぁまぁ、名前だけ知れれば十分でしょ。後は刀で語れってね!」
と、俺は2人に木刀を渡した。
「稽古を早く始めたい弥三郎の為に、手合わせして上げて欲しいのだが、お願い出来るか出雲?」
「某で宜しいのですか?」
「まぁたまには知らない人とするのもいいんじゃね?」
「弥三郎様と手合わせ出来るなんて光栄でごさいます!」
「じゃ!そーゆー事で2人とも構えて!」
「はぁ、全くお主は急なやつよのう。」
2人が構えきったことを確認し、始め!と声をかけた。お互い、どこから攻めようか、と探り合うように留まる2人の間を風が吹き抜ける。周りの木々がザワザワと揺れる音だけが聞こえる。
ジリジリと詰まる間合いに我慢できなくなった俺はーーー。
「もう始まってるよ?」
「分かっておる!出雲とやら、何処からでもかかってくるが良い!」
「では、参りまする!はっ!!」
カンッと甲高い音が鳴り響いた。出雲の力の強さに押される弥三郎だが、何とか足で踏ん張っていた。
流石、毎日走り込みしてるおかげで足だけは大人にも劣ってないな。
その後も、カンッ、カンッと、2人の木刀は交じりあった。
「流石、弥三郎様!某の攻撃を受け止めるとは!」
「僕とて毎日、意味無く稽古をしておる訳では無い故!菊岡流....」
その言葉に出雲の耳がピクリと反応した。
「赤椿っ!!」
弥三郎は木刀をパッと離し、蹴り上げ出雲に向かって一直線に飛ばした。木刀は反応の遅れた肩に突き刺さり、そこで試合終了。
「やめ!」
「で、できた!!」
「繰り出した本人が1番驚いてどうするのさ。」
「いやー実際に決まるのは気持ちのいいものだなぁ、えへへ。」
なんとも言えないニヤケ顔を俺は目を線にして見つめていた。
「さ、先程の菊岡流とはなんでございますか?!!」
と、いきなり出雲の髭が俺の頬に当たるのを感じた。
「ちょ、近い近い!」
「こ、これは失礼致しました!しかし、先程の剣術は如何に?!」
「俺が考えた菊岡流剣術だよ。」
「なんと...、なんと響きの良い剣術!!是非、某にもお教え下さいませ!」
「でも、既に型の出来上がっている人には難しいかもしれないよ?」
「伝授する為ならば、今の型など直ぐに忘れましょう!」
「いやいや、勿体ないな!今の出雲でも出来そうなやつだけ教えるよ。」
「いえ!全てで!!」
こうして俺たちは出雲を加えた6人で稽古をすることとなった。




