四十一日目 岡豊城囮作戦5
1548年 2月
本山軍6500に対し長宗我部軍1900が城を包囲。城を落とすには3倍の兵力を要すると言われているが、それはあくまで攻城戦。包囲するだけならばそこまで必要ではない。しかし、敵が城から打って出てこれば一溜りもない兵力差ではあった。
「皆の者、突撃じゃ!!」
「「おおっ!!」」
本山 茂宗の指揮の元、正門へとほぼ全軍を向かわせていた。それに対しーーー。
「ここを決して通す訳には行かぬ!何人たりとも逃すでないぞ!」
「「おおっ!!」」
岡豊城の入口はここの正門と囮部隊が逃げた裏門の2つだけ。1900も兵がいれば容易に守ることが出来よう。正門には伏兵として隠れていた1500を、裏門には囮隊400をそのまま布陣させてある。
「皆の者、無理に前に出ずとも良いのだ!その場で槍を突け!弓を引け!なんとしてもこの場を死守するのだ!!」
「「おおおっっ!」」
長宗我部軍は数は少ないながらも決死の意地を見せ、1人でも多く敵を殺した。両軍は、少しずつ兵を削り、削られ、3日が過ぎた。
その早朝、裏門にてーーー。
「おいっ!」
「はいっ!」
この呼ばれ方も久々だな、と思いながら俺は親政に返事をする。
「お前、さらっとここにおるが、どのようにして城から出たのじゃ。兵からお前は置いて門を閉めたと聞いたぞ。」
「城からは塀を飛び越えて出ました。」
「飛び越えた?!」
「はい。実はこの城の塀は、城の屋根から飛べば簡単に越えられますよ!」
「全くお前は...。」
「あはは....。」
と、久々のやり取りをしていると城の中からは地獄のような声が聞こえてきた。
「それは俺の兵糧だ!取ってんじゃねぇ!!」
「な、なにを、これは儂が持ってきたもので...。」
「ええい!そのような戯言を申すな!早く返さぬか!」
しばらく言い合いをしているうちに、刀を抜く音と男の悲鳴が聞こえた。
「おい!同士討ちは御法度だぞ!」
「うるさい!お前のそれも!俺のでは無いのか!」
「なにを言っているんだ!これは某が...」
「問答無用!」
ザシュッ
内部崩壊。城の中には兵糧がなく、手持ちのもので今まで凌いできたのだろうが、とうとうそれも無くなってきたのだ。城の中では空腹に負け、味方の兵糧を取ろうと同士討ちが始まった。そして、作戦開始から5日後。正門に本山軍の使者が参った。
「殿、茂宗から書状が届きましてございます。」
うむ、と国親はそれを受け取り、中を見る。
「茂宗はなんと?」
「ふっふっふ。あっはっはっはっ!茂宗のやつ、和睦を持ちかけて来よった!」
「な、なんと!!」
「城を明け渡す故、飯をくれと書いておるぞ!はっはっはっ!これは笑いが止まらぬわ!」
「と、言うことは我らの勝利と言うことですか?!」
「おお!そうじゃ!兵を起こし、集めよ!勝鬨を上げるぞ!」
「ははっ!」
正門から曳、叡王ーと、勝鬨が聞こえ出す一方。
「殿、宜しかったので?」
「ああ、仕方がなかろう。このままでは儂らとて、空腹で死にかねん。」
「こんな秘境にも策士が居ようとはのぅ。」
「久秀殿...。誠に面目ない。」
「いやいや、これ以上兵を失わないと考えれば易い易い。」
「定勝殿も面目ない。」
定勝は何も答えなかった。いきなりここまで足を運び、ただ兵を失い、自分は空腹に襲われる。これを面目ないで済ませるのは腹が立つ以外何も無い。だが、今はそんな怒るほどの気力もない。定勝はそのまま何もせず、事の顛末を見守った。




