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(旧)天下一の向日葵  作者: 茶眼の竜
第一章 転生天下人
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三日目 情報収集


「待って!もぉまた逃げようとしてるでしょ!はい、お手伝い!」


菊吉(きくよし)の母親が桶を差し出しながら言った。この子は毎朝お水を汲みに行っているらしい。俺は情報収集をしたい気持ちを抑えながら桶を受け取った。


「はーあ、なんだよ水汲みって知らないよそんなこと。ってか井戸の場所が分からん!」


周りを見渡してみたが井戸は見つからない。あるのはボロい小屋が数軒と田畑のみ。


「あら、菊吉おはよう!」


母親と同じぐらいの女性が声を掛けてきた。


「おはようございます。」

「毎日偉いねぇ。うちの子なんていくら起こしたって起きやしないんだから!それより、どうしてこっちに?井戸はあっちだよ?」

「あ、ごめんなさい!少し寝ぼけてたみたいwありがとうございます!」

「あらあら、気をつけてねー!」


助かったと思い、教えてもらった方向に行くと、井戸を見つけた。滑車(かっしゃ)から垂れている縄に桶を括り、井戸の中へ投げた。ポチャンという音がしたので引き上げるが水は入っていないかった。


「あれ...。」


井戸を使ったことがないものだからどうしていいか分からない。辺りを見渡すと石が4、5個ほど落ちている。


『重石かな?要するに桶が水に沈んで行けばいいんだろ。』


日向は桶に石を入れ、また井戸へ投げた。ボチャンとさっきより大きな音がしたので、引き上げようとしたが、重すぎてビクともしない。


『菊吉のやついつもどんな風にやってんだよ!』


何度も試して見たが無理そうだ。諦めようとしかけた時ーー。


「おはよう菊吉。今日は早いじゃない!それに桶まで落としてくれて。」


そう言って女の人は余裕そうな顔で縄を引っ張り始めた。すぐさま桶の姿が見えてきて、それを渡してくれた。


「よいしょっと。はい。」

「あ、ありがとうございます。」

『それにしても男の人の姿が見えないな。』

「あの、男の人は居ないんですか?」

「今はいないよ。みんな戦に駆り出されてるんだから。あんたのお父さんも行っているでしょ?」

「そう言えば母さんが言ってた気がします。」


そんな事は聞いていない。ただ今は振りをするのが手っ取り早い。


『戦ってことは...。戦国時代か?!』

「無事帰ってくるといいけどねぇ...。」

「今は何年ですか?!」

「んーと年号が変わってなかったら...。確か天文8年かしら。」

『天文8年って事は...1539年!!俺が大好きな戦国時代じゃないか!出たい!!戦に出て戦ってみたい!』


嬉しい気持ちが抑えられない。しかし、すぐさま収まることとなる。


「戦には誰でも行けるのですか?!」

「ああ、男はみんな大きくなると行かなくちゃならない。ただ13歳以上の男じゃないといけないんだけどね。」

『え、13歳...?』

「ちなみに俺はいくつですか?』

「え?なんだい自分の歳を忘れちまったのかいwえーと、うちの子がもうすぐ4歳になるから...。あんたは5歳だね!」

「5歳...児...。」


自分の幼さに落胆した。ガックリと肩を落とし、桶を持ち家へ帰っていった。


『あと8年もあるのか...。』


歳というどうしようもない壁にぶち当たってしまった俺は為す術もない。そんな顔をしながら家に入るとーー。


「おかえり、どうしたんだい?」

「母さん。なんでもないよ...。」

「そーかい。次はこれを手伝っておくれ。」

『まだあるのかよ。』


妊婦の母さんに代わって一通りの家事を手伝った。一人で全て出来た訳では無いが出来ることはやった。


「さぁ、もういいよ。遊びに行ってきな!」

「うん。いってきます。」


歳のことは一旦置いといて。今は情報収集をすることにした。


まず、この菊吉のことだ。姓は桃岡(ももおか)。父親は菊次郎(きくじろう)、母親は(すず)と言うそうだ。他には2歳下に妹の(らん)がいて、今、母親のお腹の中に1人いる。

次に、隣の家に住んでいる、朝に井戸の場所を教えてくれた人は(ゆき)さんと言うらしい。雪さんの子供は男4人兄弟で俺と同い年の子が1人いる。

そして朝に水汲みを手伝ってくれた人は(さち)さん。やはり毎朝、力のない俺の事を手伝ってくれているらしい。


「ここはどこの領地なんですか?」

「ん?ここは長宗我部(ちょうそかべ) 国親(くにちか)様の領地だよ。」

『長宗我部かー。って事は高知県!俺の地元じゃねーか。』


この村は土佐坂本(とかさかもと)という場所にあり、名は中村(なかむら)という。村は森に囲まれ、農業を営んでいた。

現在、長宗我部家は高知県の東に位置する安芸家と戦をしていた。安芸(あき)家が3000の兵で攻めてきたところ、すぐ兵が集められずたったの1000で相手をすることとなった。しかし、地の利がある長宗我部家は見事撃退に成功し、後から集まってきた、第二陣と共に追撃を行っているそうだ。このまま何事もなく行けば、城を一つの取れるとも言っていた。主の領地が増えることは良いことだ。


『これで全員かな?日も暮れてきたし、そろそろ帰らないといけないな。』


そう思い俺は帰路につく。村に今いる全ての人から話を聞くことができ、名前と顔を知る事ができた。しかしーー。


『それより歳だよな。戦に出たくても条件がクリア出来てないと出られない。今は待つしかないのか。それまでどうしよう。...とりあえず、この体で頑張って行こうか。』


俺は菊吉として生きていくことを決意しながら家へ入る。


「ただいま!」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

少しでも面白いと思ってくださった方は評価、ブックマーク追加の方よろしくお願いいたします。また、些細なことでも構いませんので、感想がありましたらそちらもよろしくお願いいたします。

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