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(旧)天下一の向日葵  作者: 茶眼の竜
第二章 成り上がる向日葵
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三十四日目 香宗の戦い1

弥三郎(やさぶろう)と共に戦道具を買いに行った3日後。国親(くにちか)の命により、各村から人が集まり総勢1500人集まった。前の戦から時が経っていないため、あまり人は集められなかった。足軽は城に400程残し、500人が出陣する。

安芸軍1500に対しこちらは合計2000の兵を率いて出陣した。前回と同じく大将は長宗我部(ちょうそかべ) 国親(くにちか)。先鋒は吉田(よしだ) 重俊(しげとし)。中堅は福留(ふくどめ) 親政(ちかまさ)の布陣。


「敵は真っ直ぐこちらに向かっている!それに対し我らは一度香宗城(こうそじょう)に入り、そこで1戦まじえる!皆の者、心して進め!」

「「おおっ!!」」


今回、俺たち足軽隊は福留 親政率いる中堅部隊に配属されている。香宗城までは1日と少しかかるらしい。その道中で、楽しみですなぁ、と九七が言い出した。


「オイラ初陣なんだー。」

「そうなのか?」

「ああ、俺と四助は前に出たことがあるが、九七は最近来たばかりだからな。」

「前の戦ではお留守番だったから今回こそ頑張るのだ!」


菊之助殿も初陣なのでは?と四助。


「いや、俺は前の戦に出ている。そこて武功を上げ、足軽に雇ってもらったのだ。」

「「なんと?!」」

「で、では菊之助殿は百姓だったの...ですか?」

「そうだぞ。農民と仲良くするのはいやか?」


3人はお互いに目を合わせ、九七が口を開いた。


「んにゃ。菊之助の実力は本物!強き者を友に持ててオイラたちは嬉しいぞ!」

「そう言ってくれるとありがたい。」


ヒョンなことから絆を深めた4人はその後も談笑し、あっという間に1日が過ぎ、香宗城が目前に迫っていた。しかし、長宗我部軍の歩みは止まっていた。どうしたのだろうか、と思っていると早馬がやってきた。

早馬が言うに、敵も城の目前まで来ており、町の前に陣を張っているとのこと。


「よってこれより一戦交える!!」


そう言って大将隊の方へ駆けて行った。

しばらくした後、法螺貝(ほらがい)が吹かれ前方からは地を揺らす程の雄叫びが上げられていた。


「戦が始まったのか。」

「ああ。」

「オ、オイラたちは何をするんだ?」

「前回は先鋒が危なくなっていた時に左右から前線を上げてくれていた。」

「ならば今回も...。」

「いや、どうだろうな。前回と同じ手が通用するとは限らないし。」


それに前回は先鋒の大将が死んでいたからな。また同じになるとは思えん。

そう思っていると、後ろから親政の声が聞こえてきた。


「此度!中堅部隊は先鋒部隊と混じり前線を一気に上げていく!数ではこちらが勝っている!皆の者、儂に続け!!」


親政は俺たちの前に、更には先鋒部隊の前に行かんばかりの勢いで駆けて行った。


「菊之助殿、どうするのです?」

「あの人について行こう。そうすれば前線で活躍出来るかも。」

「わ、わかった!オイラもついて行く!」


前線では弓が飛び交い両軍停滞していた。そこへ親政が来て、重俊と共に歩兵を引き連れ前線を上げていく。熊のような見た目で片手に斧を振り回す大男を見た敵兵達は、福留 親政だ!と言い、後ずさりをして行くため、勢いよく前線を上げていた。そんな親政を止める者がいた。


「き、貴様...!」

「我が名は安芸(あき) 国虎(くにとら)である!福留 親政殿とお見受けした。いざ尋常に手合わせ願う!」

「敵大将がおのおのやってくるとは。良いだろう。その首討ち取ってくれるわ!」


前線の中にポツリと空いた穴、その中に獰猛な熊とまだ幼い虎がほおりこまれた。この2人の一騎討ちがこの戦の勝敗を決めると思った兵達は皆手を止め行方を見守っていた。

安芸 国虎。歳は17だが、3年前に父、元泰(もとやす)が死去したため、家督を継いだ男。兄の泰親(やすちか)は早くに病死しているため、次男でありながら当主となった。文武共に才を持ち、土佐七雄(とさななゆう)の一角に数えられる程の実力者。

親政との一騎討ちも引けに劣らぬ戦いを見せていた。


「お主、なかなかやりおるのぉ!」

「親政殿にそう言ってもらえるとは、嬉しゅうございます。」

「我が斧でも断ち切れぬ刀があろうとはな!」

「この刀は我が家に伝わる名刀。易々と切られては困りまする。」


斧と刀が火花を散らしている頃。俺たち中堅部隊はようやく親政に追いつき、前線に辿り着いた。しかし周りは雑兵のみで活躍の兆しは見えない。

さて、どうしたものか。

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