三十三日目 和食村
急報を聞いた俺達は弥三郎の館へ一度戻っていた。
「菊之助殿、これはどう思いまする?」
最初に話しかけてきたのは、四助。岩丸と同じく町人の子で、昔から計算が得意で賢い者だった。歳は同じく13でよく弥三郎とここでよく碁を打っている。
「うーん。きっかけも無しに攻めてこんとは思うのだが。」
「オイラが聞いた話だと、安芸との国境付近で何かいざこざがあったとか。」
そう言い出したのは九七。同じく町人の子で、この子の家は茶屋をしている。茶屋には様々な旅のものが訪れ、お互いに情報交換をしているため、いつも聞き耳を立てている九七は色々なことを知っている。
国境付近でいざこざ....。どっかで聞いたことあるような、と思っていると弥三郎が国親の元から戻ってきた。
「どうだった?」
「うむ、和食村というところがあってな。元から長宗我部の領地だったのだが、安芸のものだと言いがかりを付けてきたらしい。」
あそこは重俊様が治めるところでは?と吉丸。同じく町人の子。特に変哲もない質屋の次男。ただ、なぜか刀の扱い方は3人の中で1番上手い。
「そうじゃ。あそこはれっきとした長宗我部の領地じゃ。なぜ急に言い出してきたのやら。」
和食村ねぇ。
その後も3人は何やら話していたが、俺は和食村という言葉に引っかかって内容が頭に入ってこなかった。
その夜、自分の家で1人静かに考えていた。前世の記憶を漁りながら。
「うーん。和食村ねぇ...。」
家から東に行くと何があったっけ....。確か、住宅街。芸西市。芸西って合併したんだよな。その中に...和食村があった!後はどこと合併した?
......。
うーん。思い出せない。もぉこっちに来て8年も経つんだ。前世の記憶も段々と薄くなってる。
あ、っていうか九七に和食村の周りのこと聞けばよかったな。明日にでも聞いてみようか。
俺はそのまま眠りに付き、朝がやってきた。その日の足軽村はとても忙しそうでみんなバタバタとしていた。その中に九七の姿があった。俺は話を聞くため、少し離れたところに呼び出した。
「どうした?オイラは今、戦の準備で忙しいんだ!って言うかお主、暇なら手伝ってくれよ。」
「ああ、すまぬな。少し聞きたいことがあって。ちなみに俺は戦の準備は全くやっておらん。」
おい、と九七。
「で、聞きたいこととはなんだ?」
「実は和食村の周りの事を教えて欲しくてな。近くには何村がある?」
「んー。2つ村があった気がするな。名前は確か......、西分村とーーー」
馬ノ上村
俺の頭の中で気持ちよく歯車が噛み合った。馬ノ上は長宗我部 元親の有名イベントじゃないか!
「九七!よくやったよ!!」
「ほへ?」
「今度ジュースでも奢ってやる!」
「じゅ、じゅーす?」
それじゃ!と言って俺は弥三郎の館へと向かった。
「なんだったのだ。あやつは...。」
俺の背中を見送る九七は何が何だかさっぱり。
そんな事なと知らない俺は道中、新しい歯車を見つけてしまった。
ん?待てよ。これがもし元親の有名イベント、八流の戦いの戦いだとしたら早すぎないか?まだ弥三郎は元服してないぞ。
急いでいた俺の足取りはいつの間にかゆっくりと歩むようになっていた。
唯一合っているのは国虎が攻めてくるということだけ。兵数は1500だし、年は違うし、なんなら言いがかりを付けてきた村さえ違う。ふりだしに逆戻りか...。
うーん、と俺が悩んでいるといつの間にか館に着いていた。
「弥三郎。」
「なんだ?」
「お前、今から元服しないか?」
ぶふっ!と弥三郎は口に入れていた茶を吹き出し、小姓が慌てて手拭いを持ってきた。
「何を言い出すかと思えば、無理に決まっておろう!まだ僕は9つだぞ!」
「うーん。そーだよなー。まだ9つなんだよなぁ。」
「何を悩んでおるか知らぬが、お主、戦の準備はしなくても良いのか?此度は足軽も出陣するらしいぞ。」
「うーん.....。え、まじ?!」
「ま、まじ?何じゃその....。」
「準備ってなにをすればいい?!」
「人の話は最後まで聞かぬか。そうじゃの、まずは槍と刀と甲冑は勿論じゃろ。それに陣笠、水筒、兵糧袋。お主持っておるのか?」
「....持っておりません。なんなら刀しかないです。」
はぁ...と弥三郎はため息をつく。
「お主、それでも足軽か。」
「だって農民だった頃は貸してくれてたもん。」
「せいしゃいんは自分で用意せねばならぬぞ!」
「な、どこでその言葉を?!」
「お主が前に言っておったでは無いか。足軽だ、せいしゃいんだ、これで将来安泰だって。」
あ、言ってた気がする。
「それよりお主は道具を準備する銭も無いのではないか?」
「いや、銭はある。」
は?お主まさか盗みを...と弥三郎。
「そんな事する訳ないだろう!前の戦の俸禄がたくさん残ってるだよ。」
「馬鹿者!それを普通の足軽は自らの軍資金とするのじゃ!お主のことだから無駄遣いして、もう無くなってしもうたかと思おておったわ。」
「欲しいものがなくてな。貯めておいて損はないだろ?」
キッと弥三郎は俺を睨み付け、ならばその刀を返せ!と言ってきた。
「いや、これは弥三郎様からのせっかくの頂き物。返す訳にはございませぬ。」
「こういう時だけ畏まりおって。お主は賢いのか、そうでないのか時々分からなくなるのぅ。」
「あははは...。」
「そんなお主のために甲冑を一緒に選んであげるよ。ついて参れ。」
あらやだ、イケメン、と俺は弥三郎の後を追うのであった。




