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(旧)天下一の向日葵  作者: 茶眼の竜
第二章 成り上がる向日葵
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二十八日目 怪しい影

ある新月の夜ーーー。


「なぜ、なぜあの方は姿を見せぬ?!なぜ、(それがし)の思い道理にならぬのだ!某がどんな気持ちで相手をしていたかわからぬ小僧が!」


とある館で嘆きの声が聞こえる。

その男の心は夜道の如く暗く、闇を積もらせていた。憎しみを深く刻みながらーーー。


▽▽▽▽▽


弥三郎と稽古を始めてからから2週間、毎日2人で刀の稽古を続けていた。


「はぁはぁ、難しすぎる!!」

「なんだよ。最初は簡単そうだって言っていたじゃないか。」

「お主を見ているとそう思うのだが、実際にやってみると...。」


まぁ体力とか筋力の問題だろうな。俺は森の複雑な地形で走り回っていたから自然と付いたから。


弥三郎(やさぶろう)、いい稽古方法がある!」

「おお、なんじゃ?!教えてくれ!」

「毎日ここから町まで走って行って帰ってくるんだ。」


は?と弥三郎は何を言っているのか分かっていなかった。


「そんなもの稽古にならぬではないか。」

「ただ行くだけだとな。1つルールがある!」

「る、るーる?なんだそれは。」

「あ、じょ、条件さ!いいか?行き帰りの時、道を使っちゃダメ。」

「ならば行けぬでは無いか。」

「道無き道を行くのよぉ。」


せっかくの山城だ。利用しない手はない。山の斜面を登り下りすれば森よりも早く鍛えられるだろう。


「ま、当分はそれを早朝と夕刻にすれば剣術を使えるようになるよ!それまで剣術の稽古は出来んなー。」

「では、今日は何をするのじゃ?」

「今日はなー。槍の練習がしたいな!なんせまだ全然慣れていないからな。教えてくれ頼む!」

「良いぞー!剣術を教えれぬが、槍ならば教える事は可能!任せておけ!」


俺たちは槍を持っていないので、また小姓に言いつけるかと思ったがーーー。


「槍は本丸の蔵にあるのじゃ。今日は取りに行くついでに本丸の中で稽古しようぞ。」


という事で今日は場所を変えて、弥三郎の館ではなく、本丸で稽古することとなった。蔵に行くと、そこにも見張りの門番が立っていた。


「これは若様!」

「すまぬが槍が2本ほしくてな。鍵を開けてはくれぬか?」

「ははっ!」

菊之助(きくのすけ)、好きなのを取ってきてくれ。」

「りょーかい。」


俺を待つ弥三郎の背後から妙な気配を感じる。しかし、ここは城の中。敵など居るはずもない。そう思いなが弥三郎が恐る恐る振り返った。そこにはニコニコと笑う秦泉寺(じんせんじ) 泰惟(やすこれ)の姿があった。


「若様、やっと私と稽古をしに来られたのですね?!」

「いや、違う。菊之助と....。」

「ここで立ち話さず。歩きながら聞きます故。ささ、こちらへ!」

「待て、僕は菊之助と稽古をする為に槍を取りに来たのじゃ。」

「し、しかし、半月も某は....。」

「弥三郎、これでいいか?」


俺が蔵から出ると泰惟が楽しそうにはなしている姿があった。ただ、一方通行のようだが。機嫌が悪かったのか、泰惟は俺の事を睨みつけてきた。


「貴様は....。前もそうだったが、なぜ若様を呼び捨てにしておるのだ。ここで切り捨ててくれようか。」

「泰惟!こやつは構わぬのじゃ。我が友に刃を向けることは許さんぞ。」

「し、しかし...。」

「お主には弟たちの指南を言いつけたはずじゃ。僕には菊之助がおるから大丈夫じゃ。」


泰惟は俺のことをまた睨んできた。そんなに睨まれても困るのだが。


「某は殿より命を受けております。いかなる理由でも...。」

「父上には僕から話しておく。きっと父上も菊之助なら大丈夫じゃと仰せになる。其方(そなた)には別の任を受け渡すだろう。それまで待ってるが良い。」


さ、行こうか。と弥三郎は俺を連れて本丸を後にした。


「あやつのこと忘れておった。しばらくは本丸で居らぬ方が良さそうじゃ。」


俺は稽古出来ればどこでもいい、と答えた。それよりも気になるのが、泰惟のことだ。以前会った時と泰惟の印象が全く違った。叱られた時、別人かと思うほどに。前はずっとニコニコしていてとても優しそうな印象だったが、今日は一度も笑顔を見せなかった。弥三郎が相手をしないから相当焦っているのだろう。


「.....許さぬ。あの百姓上がりが。図に乗りおって。」


その声は深く暗い声だった。俺たちには聞こえないように影が歩みを寄せていた。

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