二十一日目 岡豊の戦い2
先鋒部隊の敵大将、本山 茂辰を瞬殺してしまった俺は、味方部隊とともに敵の雑兵と戦っていた。ひたすら突いて、突いて、突いて・・・。
一方その頃、敵本陣ではーーー。
「急報、急報!茂辰様が討死との報せが!!」
「なっ、なに?!!」
真っ先に立ち上がったのは敵大将の本山 茂宗。実の息子が死んだのだ、無理もない。
「今すぐ先鋒部隊を下げよ!中堅部隊を早く向かわせるのだ!!」
顔を真っ赤にして、指示を出す。
「出雲!!」
「はっ、ここに。」
「光久に代わり、指揮を執れ!茂辰の仇だ。手加減するでないぞ!」
「ははっ!」
命を受けたのは、神森 出雲。すらっとしているがちゃんと筋肉はついてそうな体付き。この人は本山家の参謀で、兵法に長けている。どちらかと言えば文官だ。しかし、一度槍を持てば本山家一の実力だろう。そもそも本山家には他に良い武将がいないのだ。今まで残って来れたのも神森 出雲あってこそだろう。
「皆の者、我に続け!!」
「「おおおおお!!」」
槍を突いてばかりいた俺たちの前に出雲率いる中堅部隊が攻撃してきた。とても恐い顔をしている。まるで、鹿を追って居たらその鹿を狙っていた狼と対峙してしまったように。
「前線を下げる訳にはいかぬ。全軍持ちこたえよ!!」
重俊の声が戦場に響く。こちらの方が士気は高い、と兵たちは声を上げ、敵の中堅部隊と槍を交える。
「光久殿、1つ頼みが。」
敵陣にて、出雲が頭頂まで続くおでこが特徴的な吉松 光久に話しかけた。
「光久殿にはここから少し離れてもらい、散らばった先鋒部隊たちを再度集めてほしい。そして左右から挟み込んでくれぬか。」
流石は参謀殿、と光久は騎乗し、戦場の左右を駆け出した。大将を得た敵先鋒部隊たちは再び士気を取り戻した。出雲と光久の指示の元、左右に散らばったことを生かし長宗我部軍を挟さみ込んで来る。
三方向から挟撃された俺たちはどこから相手すれば良いのか分からなくなった。混乱した俺たちを敵は躊躇なく刺してくる。優勢だった長宗我部軍は1人の存在で劣勢へと変えられた。グチャグチャになった陣形では、対処することが出来ない。
「ひけっ、ひけー!」
重俊の指示の元、俺たちは後退を余儀なくされた。




