十四日目 いざ岡豊城へ!
俺と弥三郎は家を出て、長宗我部 国親の居城、岡豊城へ向かった。
「菊吉の母上は恐ろしい人よ。あんな風に言われてしまっては何も言えぬでは無いか。」
「ははは、俺はいつもあの母に怒られているので慣れております。」
弥三郎は俺の前に立ち、ムッとしている。
「お主、先程も堅苦しい言葉を遣ったであろう。僕は怒っているのだよ!」
「あれは母さんの前だから大目に見てくれよ。領主様の息子にタメ口なんて後からどれほど怒られることか、想像しただけでも嫌になる。さっきのは無意識だ。許してくれ。」
弥三郎は仕方ないのぉという顔で隣に戻り再び歩き続けた。
「菊吉は何かやりたい事とかないのか?」
「やりたいことか〜。今は戦に出て活躍することかな。」
「そうか。実は僕には野望がある。」
「野望?」
「そうじゃ。この土佐を始め四国全てを統一すること。それが僕の野望だ。」
「四国だけでいいのか?日ノ本全てとは思わないのか?」
「日ノ本全てか...。父上はいつも四国を統一することばかり考えている。だから僕はその役に立ちたいのだ。」
この時代は父の意志を受け継ぐ息子が多い。それがその国にとっての最善策だから。だが意思が合わない場合がある。その時は謀反という形で表れる。謀反を起こさずとも家督を継げば思うがままだが、意思を継いでくれない子に家督は譲らないだろう。
『弥三郎が父と同意見なら御家騒動に巻き込まれる心配はないだろう。』
「ところで菊吉、お主は流派を心得ておらぬと言ったな。」
「ああ、特に剣術を習ったことは無いよ。」
「うむ。ならば其方の流派を作ってみてはどうだ?そうすれば今後誰かに教えることが出来るであろう。お主の技を思いつきのまま留めておくのは勿体ない。」
『自分の流派か...。考えたこともなかったな。まだ後3年時間はある。技を磨くのもありだな。』
「分かった。試してみるよ。」
「うむうむ。流派ができたら僕に教えてくれ。」
「ん?それが目的で、この話をしたのか?」
「そうだ!」
俺は弥三郎の策に嵌められたと思いながら、疑問を抱いた。
「俺が教えなくても、城に指南役とかいないの?」
「おるにはおるが、お主ほどではないよ。彼奴は槍の扱い方しか教えてくれん。」
「ちなみにその人の名は?」
「秦泉寺 泰惟じゃ。」
秦泉寺 泰惟は元々本山家の家臣だったが、さきの戦で泰惟の父が降伏し、長宗我部家の傘下に入ったという。
『聞いた事あるようなないような...。』
「僕は菊吉の剣術で武功をあげる!共に四国の覇者となろうぞ!」
「そうだな。一緒に頑張ろ!」
「うむうむ。そろそろ着く頃じゃ。城に着いたら父上に頼んで褒美を用意するぞ!」
どんな褒美をくれるのかワクワクしながら俺は岡豊城に入城した。




