出征前夜
「明日、僕は神風に乗る事になりました」
勇ましく見える彼の後姿を、見つめていた
「お国の為に見事お役目を果たしてきたいと思います」
力強く言い放った彼のか細い腕が小さく震えてるのが分かった
「もう会う事も無いだろうから、この際お伝えしときます」
荒っぽく振り上げた右手で涙を拭った
「僕は、ずっとあなたを好いてました」
産まれて初めての告白を受けた私の心臓が高なった
目にも止まらない速さで向き変えった彼は、私を強く抱きしめた
「この温もり、香り決して忘れません」
まだ15にも満たない彼なりの精一杯の行為だったのだろう、彼の緊張が分かった
「どうか、お元気で」
大人じみた振る舞いを見せ、彼は歩き去って行った
戦争の無い時代に産まれてきて欲しかった
生きる希望の持てる時代に産まれきて欲しかった
時代を憎んでも始まらない。散ってゆく彼の後ろ姿から目が離せなかった
あなたなら大丈夫。きっと生まれ変われるわ。神様が見られてるもの
救いの御手を差し伸べてくださるもの
その時にまた逢いましょう
その時にめおとになりましょう
私は、待ってます。その瞬間を
戦争を経験してない自分が書くのも無理がありますが、こんな出来事もあったんじゃないか・・ていう想像の元、書いてみました。終戦記念日にアップした方が良かったかな・・・・