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エピローグ-1

 その高台には戸建て住宅が建ち並んでいる。緩やかな環状に配された住宅の真ん中に芝生眩しい公園が佇んでいる。

 公園には木製のベンチがある。虹のように大きく歪曲した背もたれがあるそのベンチに、優芽たちは座っていた。ベンチに座りきれない悠子や晶紀が、各々芝生やブランコを囲む柵に腰かけている。あたしたちの空にはオリオン座が浮かんでいた。


「ここで同窓会するとはね」


 京香が缶ビールのプルタブを引くと、その音が空に響いた。


「なんか、青春って感じでええやん」


 ひとり独身の晶紀は、緩いパーマの髪をいじりなから言う。


「あたしら、もうアラフォーやで」


 悠子はパンパンに太った。もう、諦めたとのことだ。


「……あたし、ここ、よう来てたんよ」


 凉子がぽつりと言った。


「あたし、六丁目やから、給水塔が犬の散歩コースやってんよ。今でも覚えてる。散歩してたら、月島さんと陽子ちゃんが走ってきた。あたし、そっと見守ってたん。二人で星見てて、すごい良かったん。何でこの二人を離そうとしてんねやろって……」


「そうやったんや……凉子」


 あたしもプルタブに指をかけた。

 皆で缶ビールをぐびりと喉に運ぶ。


「いやー、あの頃のあたし、ほんま最低やわ」


 優芽がそう言うと、全員が大きく頷いた。皆、笑った。それだけ、年を重ねたということだ。


「あ、来たんちゃう?」


 坂をゆっくり昇ってくる二つの影が見えた。




「……久しぶり」


 楓ちゃんはペコッと頭を下げた。


「そんな、堅苦しいの、なし!」


 悠子が大きな手で楓ちゃんの肩を抱いた。


「いやいや、誰? って顔してるやん。悠子、悠子! 太っても悠子!」


 楓ちゃんが口元を押さえて笑う。

 今日は雲ひとつない。オリオン座は、真上からあたしたちを見下ろしている。


 楓ちゃんを中心に輪ができた。色んな話をした。みんなで、ふざけながら優芽のいじめのひどさを茶化していく。

「もういい。もう、ほんとごめん。もー、許して」

 楓ちゃんも笑っていた。時は無常に過ぎ去るけれど、あたしたちの失敗や後悔を置いていってもくれるのだ。

 ふと、楓ちゃんは何枚かのレターセットを取り出した。もう随分と目にしていない懐かしいキャラクターが描かれた封筒だ。もうインクは滲んでいるが、差出人の名前はかろうじて読むことができた。


「それ……あたしたちのやん……」


 京香が呟いた。あの頃、京香、凉子、晶紀、悠子も苦しんでいた。京香たちはそっと、見つからないように楓ちゃんの机に入れていたらしい。「ごめんね、もうちょっとしたら、またみんなで遊ぼうね」そんな言葉が小さなレターセットに躍っていた。


「あたしの宝物。ほんとに嬉しかった」


 優芽はそのレターセットを眺めて、みんなをぐるりと見渡した。


「言っていい?」


「ん?」


「もう、ぶっちゃけて言っちゃっていい?」


 優芽がどうしようもないひきつった笑顔を浮かべている。


「言っていいよ」


 少し笑みを殺しながら、京香が言う。


「あの頃のあたし、ほんっと最低中の最低やな。こんな手紙出されたらもう、公開処刑やん、これ」


 みんな声を上げて笑った。もう、時は充分に過ぎた。楓ちゃんも、あたしたちも、もう笑える。

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