オリオン-1
里菜ちゃんが再び『星の家』に来てくれたのは、あれから二週間が過ぎた頃だった。ホッとした。里菜ちゃんを抱き締めるように迎えた。
里菜ちゃんのお母さんはぺこりと頭を下げ、迎えに来てくれた。あたしは陽子ちゃんの名前を出したことを反省していた。何も無かったかのように、笑顔で里菜ちゃんが今日どんな様子だったかを報告した。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
里菜ちゃんが首から下げたスタンプカードにキャラクターの判子を押す。ふと、小さな声でお母さんはあたしに訊ねた。
「あの……。折茂さんは元気ですか?」
あたしの顔は嬉しくて、紅く膨れていたと思う。
「ええ、元気です! 東京にいるんですよ!」
「そうですか。……良かった。よろしく、お伝えください」
お母さんは深々と頭を下げて、里菜ちゃんの手を取った。
「はいっ!」
後ろで会長が微笑んでいるのが見えた。あたしは会長に泣きそうな笑顔で応えた。
里菜ちゃんはそれから、また以前のようにほぼ毎日顔を見せるようになった。
里菜ちゃんのお母さん、いや、楓ちゃんと呼ぼうか。楓ちゃんは迎えに来る時間が徐々に早くなっていった。あたしと話し込んでしまうためだ。
「あたし、織笠南小だったんです」
「そうなんですね」
「給水塔とか、昇ったりしました?」
「しました、しました! 星が綺麗であたしはほぼ毎日」
里菜ちゃんが呆れるくらい、あたしたちは話し込んだ。あの頃、給水塔に見えていた人影は楓ちゃんだったのかもしれない。だが、楓ちゃんはいじめのことは一切口にしなかった。あたしも一切触れることはしなかった。楓ちゃんが織笠の町のことを話してくれるだけで、あたしは充分だと思った。
おそらく、里菜ちゃんが姿を見せなかった二週間、楓ちゃんは戦ったのだろうと思う。過去の苦しみを自分で咀嚼し、またこの『星の家』に来てくれたのだと思う。
あたしは、中学で優芽ちゃんから楓ちゃんの話を聞いたとき、なんて強い人なんだと感じた。その楓ちゃんはそれだけのことをされて、誰も傷つけようとせず、周りの幸せを選んだのだ。
目の前にいる楓ちゃんは、やはり強い人だ。さすが陽子ちゃんのパートナーだったことはある。あたしは思わず微笑んだ。
「ん、何かおかしいですか?」
「うふふ、いいえ」




