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中尾里菜-2

 そういう経緯で、あたしは今ここにいる。


 『星の家』

 ここには貧しい子供から、いじめを受けて学校に行けない子、両親が働き詰めでひとりぼっちの子まで、様々な子供を預かっている。3LDKのマンションがそのまんま『星の家』になっている。子供たちばかりだから、普段から目を光らせていても、建具や壁紙はボロボロだ。

 『星の家』は、あたしにとっては天職だった。いじめられた経験のあるあたしは、恵まれない子供たちの気持ちを分かってあげられる。新聞部で取材していたあたしは、色んな子供たち、それぞれの個性を理解してあげられる。星の家で起こる問題は、大抵あたしが解決していた。中学生の頃、陽子ちゃんや丹羽くんを見ていて、倣ったものだ。


 星の家で働き始めて、数えてみればもう十五年。そろそろあたしも結婚せねば、とも思うが、この仕事に就けているだけでも充分幸せだった。

 子供たちは皆、かわいい。そんなかわいい子供たちの中で、あたしには気になる一人の子供がいた。

 中尾里菜なかおりなちゃん。大人しい三年生だ。


 里菜ちゃんは小学校でいじめにあったことで、ここ星の家に来た。

 幸い、学校でのいじめはすぐなくなったようで学校に元気に通っているが、星の家が好きでほぼ毎日遊びに来る。もちろん、大歓迎だ。


 あたしが中尾里菜ちゃんを気になったのは、ふと、昔のことを思い出したからだ。中学生の時、優芽ちゃんと丹羽くんから「楓ちゃん」という織笠小の子の話を聞いた。三年生からいじめられ、転校していった、と。その加害者は丹羽くんであり、優芽ちゃんだった。その過ちが丹羽くんの言う陽子ちゃんへの重しとなっていた。それを思い出していた時、里菜ちゃんをお母さんが迎えに来た。心の優しさが滲み出た顔で、里菜ちゃんにそっくりのお母さんだ。

 ふと、目に入った入館表を見て、あたしはもう一度ハッとしながらお母さんの目を見た。里菜ちゃんのお母さんは首をかしげていた。

 入館表には、『中尾楓』と書かれていた。こんな偶然があるだろうか。いや、ここは東京だ。偶然に過ぎない。……でも……。

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