児玉華-7
「丹羽くん、これ、最後の新聞」
もうすぐ卒業式。ある日の放課後、あたしはA4一枚の紙を手渡した。
「ん? 号外?」
その新聞の見出しを見た丹羽くんはあたしに首を傾げた。
「取材した記事。読んで欲しいんよ。この記事、やっぱ渡さんといかんと思って。ほんで、いつかこの話を丹羽くんがする時、この記事を使ってもらえたら。……丹羽くんは口下手やから。ほんじゃ、またね」
「あ、ちょっ! 児玉!」
背中に丹羽くんの声を残して、あたしは校門をくぐった。
どうか、これで丹羽くんへの誤解が解けますように。あたしはずっと丹羽くんを好きだった。でも、丹羽くんが好きな陽子ちゃんはお世辞抜きに素敵な同級生だ。あたしの恋をその新聞に乗せて、どうか二人の恋が報われますように。そのお役に立てれば、あたしは幸せだ。
校門をくぐると、柔らかい風が流れた。三年前、この校門をくぐる時、小学校と同じようにいじめられたらどうしようと怖がっていたっけ。もうすぐ卒業式。あたしは楽しい素敵な中学生活を送れた。
丹羽くん、ありがとう。お幸せに。幻の記事になんて、できないよ。
仰げば尊しを歌っていると、啜り泣く声が聞こえてきた。
「華……」
卒業証書を抱えて、みんなで写真を撮っていると、高いところから呼ばれた。陽子ちゃんだった。こうして見上げると、あたしはちっとも背が伸びなかった三年間だったなと思う。
「陽子ちゃんも写真撮ろう。お母さん! こっちも!」
二人で写真に収まる。お母さんですら、陽子ちゃんの美貌に惚れ惚れしているようだ。
「結局、優芽も雄吾も何も言ってけえへんかったわ」
「うん、二人が言いたい時にで、良いと思う」
「うん、せやね。華、またいつか会おう。華がいて、良かったわ」
「うん、陽子ちゃん。あのさ」
「ん?」
「楓ちゃんって友達は元気でやってるよ。元気でやれるところに行ったんやわ。そう思う。あたしも小学校では辛かったけど、三年間楽しかった。楓ちゃんはあたしに似とる。やから、きっと……」
「うん」
陽子ちゃんはあたしのおでこに頬をあてた。あたしにはそんな挨拶はできない。とても、敵わない。
あたしたちは大人になる。あたしは、この織笠中でかっこいい三人に出会えたと思う。あたしも、かっこいい大人になっていこうではないか。そう誓いながら、最後は梨花と泣きじゃくって写真に収まった。




