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漫才の台本

漫才「誘拐」

作者: 沢山書世
掲載日:2019/07/20

漫才四作目です。どうぞよろしくお願いいたします。

 誘拐犯が身代金要求の電話をかける。横には被害者がいる。

「はい、もしもし」

「へっへっへっ、お宅の娘さんを預かっている者なんだけどさ」

「あのう、私がこの家の娘なんですけど」

「え? あんたが娘?」

 被害者に顔を近付けてよく見る。

「ほんとだ。若づくりなんで間違えちまったよ」

「ふっふっふっ、お宅の若づくりの母親を預かっている」

「母は私のすぐそばにいますけど」

 振り返って、

「あんた、本当は誰なんだ? そうか、父親なんだな」

「おい、あんたんところのおやじには、女装の趣味があるのか?」

「今、どんな服装してます?」

「黄色とピンクの水玉ワンピースだ」

「たしかに父です」

「あんたはどうしてそんな服装なんだ? 趣味なのか? なに? 自分の服を買ってもらえない? すべて奥さんと娘のお下がり・・・それでか」

「へっへっへっ、今度は間違いないようだ、お宅の父親を預かっている」

「父は買い物に行ったはずですが」

「そう。その出先で誘拐をしてやったのさ」

「それは買い物の前なの後なの?」

「レジ袋を持っているから、買い物の後のようだな」

「品物は無事なの?」

「大丈夫だ。品物に興味はないさ」

「それ、私達の晩御飯なんです。父に持たせて帰してください」

「簡単には返せないねえ」

「まさか晩御飯ごと誘拐するなんて、なんて卑劣な輩なのかしら」

「食べ物の心配かよ。嘆かわしい、なんて家族なんだ」

「母がウイスキーは忘れずに買ったのか確認したいって言ってます」

「おい、ウイスキーは買ったのかって聞いてるぞ?」

「忘れたって言っている」

「母が、ちょっと電話を変われと、文句を言わせろと言ってます」

「今はそれどころじゃないだろう」

「じゃあ、今から言うことを代わりに伝えてくれと」

「○○○! ○○○! ○○○!」

「そんなひどいこと、俺の口から伝えられるかよ・・・」

 振り返って、

「ようするにだ、ずいぶんなことを言っていたよ・・・あのさあ、本当に電話の向こうにいるのはあんたの身内なのか? そうか、間違いないんだな」

「法律上は身内になっているようだな。今すぐ身代金を用意しろ」

「母が嫌だと申しています」

「無い、というならわかるけど、嫌だ、というのは家族としてはぜったい言っちゃまずいだろう」

「自分の貯金で払えと母は言ってます」

「あんた、貯金あるのか?」

「無いってさ。さっきのお釣りしか持ってないって言っているぞ」

「身代金は出しません。父はあなたに差し上げるそうです」

「そんな白状な回答でいいわけないだろ」

「代わりの男はたくさんいる。この間は元カレに言い寄られた、と母が言ってます」

「そんな可哀そうなこと、よく言えるな」

「おい、あんたの家族には人の血が流れているのかよ。なんかあんたのことがかわいそうになってきた」

「なに? あんな家族でも大事な身内だと言うのか?」

 二人して泣く。

「おやじは帰すことにしたよ」

「レジ袋は?」

「大丈夫。持たせるよ」

 ガチャ、受話器を置く。

「あのな、あんたのためを思っての忠告だ・・・家に帰ったら、すぐに家出したほうがいい」


読んでくださり、どうもありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「今、どんな服装してます?」 「黄色とピンクの水玉ワンピースだ」 「たしかに父です」 ここのやり取りが好きです。 楽しませて頂きました。ありがとうございます。
2019/07/22 10:01 退会済み
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