表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のオロチさま! ~スサノオとヤマタノオロチが同級生!?~  作者: 南野 雪花
第2章 人と神がラブラブなんて、アメージングだね!
18/33

人と神がラブラブなんて、アメージングだよね! 8


 満天の星。

 東京じゃちょっと見れないよね。これは。

 下草が鳴り、誰かが近づいてくる。


「なんとも盛りだくさんな一日だったな」


 誰かっていうか、彼氏どのの声でした。

 振り返る。


 七樹の手には蚊取り線香の赤い光があった。

 うん。

 風情ゼロ。


「那須高原にきて、絡まれて、たまちゃんに出会って、変な動画の撮影に協力して、恋人と星空を見上げて、次はキスシーンかな」

「なんでそういうこというの!」


「や。定番かなーと」

「言ったらできなくなるじゃん! 察しろよ!」


 地団駄ダンスを踊るドラゴンさん。

 めんどくさい男である。


「ふーん。キスしてくれる気持ちはあったんだ」

「ぐ……」


 暗いから見えないけど、真っ赤になってるんだろろうなぁ。

 純情邪竜だから。


「ん」


 両手を広げる。

 でも自分からは近づかない。

 ちゃんと抱き寄せてね。


「美咲には振り回されっぱなしだな」


 ちょっとだけ呆れたような声が聞こえ、柔らかく腰を抱かれた。

 重なり合う唇。


 今日はバーベキュー味だね。

 もっとこう、わしらのキスは食欲から解放されるべきだと思うのじゃよ。


 はじめてのキスはカレー味。キャンプ場でのキスはバーベキュー味。夏休みの海水浴でのキスはイカ焼きの味、みたいな流れじゃん。これ。

 ゆっくりと身体を離す。


「ん。美味しかった。ごちそうさま」

「キスの後の会話としておかしすぎると思わないか? 美咲」

「照れてんのよ。察しなさいよ」

「そいつは失礼」


 もう一度抱き寄せられ、唇を奪われる。

 貪欲ドラゴンめ。


 七樹の手が腰からお尻へと移動していく。

 おいおい。


 初めては屋外ってのは、ちょっとあれでないかい?

 とはいえ私の方も気持ち的にはOKだ。

 蚊取り線香もあるし、虫さされとかは気にしなくて良いだろう。

 ばっちこいだぜ。七樹。


 と、そのとき、携帯端末がぴろりんと鳴った。

 くそう。


 仕方なくポケットから取り出して画面を見る。

 二人同時に。

 なかなか間抜けな構図っすね。

 ムードが吹き飛んじゃった。


「安藤さんからだ。げ。なんか怒ってる」

「あちゃあ……さっきのやつだね……」


 メッセンジャーソフトには見知った名前と、先ほどの一件についての厳重な抗議が表示されていた。

 七樹と伊吹は映ってなかったと思うんだけどなぁ。

 見るひとが見たら判っちゃうらしい。


 スサノオとヤマタノオロチが共闘してるだけでも頭おかしいのに、九尾の狐とも仲良しっぽい。

 これは、そうとうにめんどくさい状況なんだってさ。


「話があるから戻ったら顔を出してくれ、て、話っていうか説教だよな。あきらかに」


 やれやれと七樹が肩をすくめた。

 良い雰囲気だったんだけど、帰ったらお説教が待っているのだと思えば、そんな気分にもなれない。


「……みんなのとこにもどりますかね。七樹さんや」

「……そうですな。美咲さんや」


 何ともいえない笑いを浮かべ、私たちは振り返った。

 そして固まった。


 雪那と伊吹の顔が、トーテムポールみたいに重なってこっちを見ていたのだ。

 じーっと。


 身長差的に、たしかにそういう遊びはできるだろうけどね!


「あ。おかまいなく。ウチらはここから見物してるんで」


 にへら、と、雪那が笑う。

 かまうわ!





「すまねえ兄ちゃん。何とか止めようとしたんだけど、俺じゃ無理だった」


 テント前に戻った私たちに蓮斗が詫びる。

 いやまあ、君では雪那と伊吹は止められまいよ。


「きにすんな。短い時間でも美咲とふたりきりになれた。充分だ」


 言って、ぼんぽんと蓮斗の頭を叩く七樹。

 良いお兄ちゃんしてるなあ。


「ならいいけどさ」


 照れ笑いの弟くんである。


「あんなのと付き合ってくれる貴重な人材だからさ。俺でできることはなんでも協力するよ」


 OK。

 そのセリフは、照れ隠しとして越えてはいけない一線を越えたぞ。


「明日から、蓮斗の晩ご飯は白飯のみだぜ」

「卑怯だぞ姉ちゃん! メシを人質に取るなんて!」

「ふはははは。ひれ伏すが良い愚弟よ。姉の力を思い知ったか」


「に、兄ちゃん。姉ちゃんがいじめるよう」

「すまん蓮斗。俺は常に美咲の味方だ」

「ひでぇ!」


 お馬鹿な会話を繰り広げる。

 まあ、将来の義兄弟が仲が良いのはけっこうなことじゃて。

 ほっほっほっ。


「で、なんだったのよ? さっきの着信。いきなりふたりとも顔色変わったけど」


 寸劇に参加することなく雪那が訊ねてきた。

 付き合いの悪い姐御である。


「知り合いからね。たまちゃんのことでちょっと」


 曖昧に応えた。

 SNSに流れた動画の件だとはさすがに言えない。ましてあれに私たちが関わってるなんて、言えるわけもない。


「たまちゃん? だれ?」


 きょとんとする。

 ぐっは!?

 もう術とけてんのかよ!


「あー えーっと、知り合いっていうか」

「え? さっききてた人だろ? なにいってんだ? 雪那さん」


 蓮斗が首をかしげた。

 のぉぉぉっ!?

 こっちは術とけてないしっ!


 効果は個人差があります。

 とかじゃないんだから。

 勘弁して。いやまじで。


「こいつは……まいったな」


 ぽりぽりと七樹が頭を掻いた。

 伊吹も苦笑している。


「三石。ちょっといいか。美咲も」


 野郎ふたりが手招きする。なにさ?

 私と雪那が首をかしげながら近寄ると、七樹が声を潜めて説明をはじめた。


「こういうケースは珍しいけど、ないわけじゃないんだ」

「どういうこと? 山田」

「お前、たまちゃんのこと憶えてないだろ?」

「だから誰よそれ。蓮斗クンまで変なこといってるし」

「さっきまで一緒にメシを食ってたんだけどな」

「……あ」


 はっとしたように目を見張る雪那。

 それからゆっくりと私たちを見まわす。


「あいつ誰? なんでウチ、なんにも不思議に思わなかったんだろ。初めてあったやつが食事に混じってたのに」

「ちゃんと説明するよ」


 やや疲れたように、伊吹が言った。

 それは、踏み込むということ。

 雪那をこっちの事情に巻き込んでしまうということだ。


「ちょっと伊吹……」

「いや、美咲。もう仕方がない」


 抗議しようとした私を、七樹がおしとどめた。


「狐の幻術を打ち破るくらいの精神力だ。遅かれ速かれボロは出てしまう」


 七樹の言葉に頷き、伊吹が説明をはじめる。


「さっきの女は人間じゃないんだよ。三石」

「……ほほう? 妖怪変化だともいうつもりかね? 幻術とか聞こえたし」


 両手を腰に当て、挑むような口調で雪那が質問した。

 さすがの胆力です。姐御。


「まあ、そう言うつもりなんだ。予想通りで恐縮だけど」


 伊吹としてはそう答えるしかないよね。

 事実を伝える方が信じられないってのは、けっこう悲しい事態ではある。


「ツッコミは最後に入れるから、まずは全部しゃべっちゃいなさい」


 おごそかに命令してるし。

 なんていうか、伊吹は被告席に立ってる囚人みたいですよ。

 神様なんすけどね。


「あれは玉藻。九尾の狐だ。俺と七樹、美咲がいることを知って接触してきた。挨拶という名目でな」


 過不足なく説明してゆく。

 放火事件で狐火という噂が立ちはじめ、評判が悪くなることを警戒して、きちんとした犯人を用意するために動画を撮った事をふくめて。


「……なるほどね。だいたい判ったわ」

「疑わないのか?」

「ツッコミは最後にするって言ったでしょ。続けて」


 じっと雪那が見つめる。

 諦めたように、伊吹が息を吐いた。


「俺は人間じゃないんだ。あ、いや、この身体は人間だけど」


 事実だけと、事実なんだけど、かえって痛々しい。

 身体は人間だけど魂は人間じゃないとか。

 中二病もびっくりだ。


 そしてそれは、私も七樹も同じなのである。

 せつなすぎる。


「人間じゃないとしたらなんなのよ? 宇宙人? 未来人? 異世界人? 超能力者?」


 おいばかやめろ姐御。

 それは危なすぎる。


「全部ハズレだ。俺は素戔嗚尊。七樹は八岐大蛇。美咲は奇稲田姫だな」

「…………」


 伊吹の言葉に呆然としていた雪那だったが、やがて腹を抱えて笑いはじめた。

 気持ちは良く判るぜ。

 痛い子すぎるよな。


「だから美咲を取り合ってたのか! だからライバルだったのか!!」


 大爆笑である。


 いやいや。

 そこに受けてんのかよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ