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私のオロチさま! ~スサノオとヤマタノオロチが同級生!?~  作者: 南野 雪花
第2章 人と神がラブラブなんて、アメージングだね!
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人と神がラブラブなんて、アメージングだよね! 7


 現実を見れば、タバコのポイ捨てをやめさせることはできない。

 法律や罰則を厳しくとか、そういうので解決するならとっくに解決してるよ。


 はっきりいって、日本人にマナーを求めるのが無理というもんなのだ。

 同じ日本人として情けないかぎりだけどさ。


「基本的に、この島にはバカとサルしか暮らしていないからな」

「そこまでいってないから!」


 危険すぎる発言をする伊吹を必殺の裏拳ツッコミで黙らせておく。


 マナーを守ってる人がほとんどなんだって。

 おかしいのは一部も一部。

 こういうのをゼロにはできないって話なんだよ。


「材木を乾燥させる場所を道路から離す。これしか方法はないだろうな」


 腕を組んだ七樹が身体を前後に揺すりながら提案する。

 どことなく悔しそうなのは、被害者側が対策を講じないといけないというのに理不尽さを感じているからだろう。


 私だってそう思うもん。

 けど、それをいっても仕方ない。


 マナーの悪いヤツをゼロにはできないし、タバコの販売をやめることだってできない。

 それに、べつにたまちゃんは、これ以上の被害を防いでくれといってるわけじゃないのだ。


 狐火(・・)の正体を、人間たちに判るように明らかにして欲しいってこと。

 具体的には、ポイ捨てした車を一台くらいとっつかまえて、犯人を軽くボコって警察に突き出してくれ、くらいかな。


「ですね。あとはわたくしがツ○ッターやフェ○スブ○クなどで拡散します」

「SNSに堪能な大妖怪。新機軸よね」


「人も妖怪も変わっていくのですよ。姫さま」

「ああたまちゃん。ときがみえるわ」


 よく判らないやりとりをして笑いあう。


「しかし、ポイ捨てがいつ起きるかなんて判らないんじゃないか?」


 七樹が首をかしげた。

 ずっと見張っているというのは、さすがに無理だ。

 私たちだって、明日には東京に戻るんだし。


「そこで相談なのですが。さきほど絡んでいた者たちについて」


 にやぁ、と、たまちゃんの唇が半月を描いた。

 怖いよ。

 この妖狐!





 十五名の男たちは、五台の車に分乗して帰路についた。

 年齢的に免許を持っているかどうか微妙なところだけど、まあそのへんを心配してあげるのは、いくらなんでも偽善が過ぎるってもんだろう。


 ぶっちゃけ、親の車とかを無免許で乗り回してるとかの方が、話としては面白い。

 彼らには、もう一踊りしてもらうのだから。


「わざわざ那須高原まで俺たちを追いかけて叩きのめされ、放火事件の犯人に仕立てられた上に、さらにボコられて警察に突き出される。あげくその様子を撮影されて拡散される」

「いやー 踏んだり蹴ったりだよねー」


 七樹の言葉に私がうむうむと頷いた。

 こんだけ重なってたら、無免許だろうとそうでなかろうと、たいした問題じゃないって。


「いっそ殺してやった方が、慈悲というものかもしれないな」


 伊吹が苦笑する。

 いやいや。あんたは情けをかけたらダメでしょ。

 自殺にまで追い込まれてんだからさ。


「荒神さまとも思えない寛容なお言葉ですね。死という救済を与えてやるなど」


 やや驚いた顔をたまちゃんがした。

 いやあ。

 伊吹の場合は、たんにめんどくさいだけだと思うよ。

 あと、警察と関わり合いになりたくないとか。


「じつは俺も面倒だと思ってる。とっとと片付けてしまおう」

「だな」


 頷きあい、たんっと踏み切るヤマタノオロチとスサノオ。

 ものすごい跳躍力だ。

 一挙動で車の前に出ちゃう。


「では、作戦スタートです」


 デジタルカメラを構えたたまちゃんが言った。



 車からタバコの吸い殻が捨てられる。

 それは理想的な曲線を描いて、路肩の材木に落ちて引火した。


 じつはこれもたまちゃんの演出だ。

 失意の男たちは、無性に煙草が吸いたかったし、吸ったらゴミを外に捨てたくなった。


 ようするに出来レースである。

 たまちゃんはべつに、真実の追究がしたかったわけじゃない。


 社会的に殺して問題なさそうな駒を伊吹と七樹が持っていたから、それを使わせてもらえないかと申し出ただけだ。

 人間とは思えないあくどさだけど、たまちゃん人間じゃないし。


 はっきりいって、私だって「彼らを破滅させないで! きっと更生して真人間になるよ!!」なーんて主張するほど善人じゃない。


 一人の人間を自殺に追い込むような人間だもの。

 そして自分たちが追いつめられたら、復讐に動くようなメンタリティの持ち主だもの。

 伊吹じゃないけど、殺してやった方がすっきりと世のため人のためなんじゃないかってくらいだよ。

 さすがに殺さないけどね。


 燃え広がっていく火事に驚いたのか、男たちの乗っている車が加速しようとする。

 逃げる気まんまんでですねー。

 消火しなきゃって発想はないらしい。

 さすがです。


 でも、逃げられなかった。

 風のように駆け抜けたスサノオとヤマタノオロチが、それぞれの得物でタイヤを切り裂いたから。

 天羽々斬剣と草薙剣だ。


 神剣だもん。タイヤどころか、車体だってすっぱすぱ斬れちゃう。

 パニックを起こして転がり出てきた男たちを、やっぱり七樹と伊吹がのしていく。

 一応は、殺さないように気を使いながら。


 三分もかからなかったよ。


「では姫さま。カメラをお願いします」

「はいはい。でも、この演出って絶対やりすぎだと思うんだけどなぁ」


 カメラになにかの影が映りこむ。

 速すぎて、捉えきれない。


 が、なんとなく狐のようなものに見える。

 それが材木の上を駈けると、燃えさかっていた火が静まってゆく。


 奇跡のように。

 魔術のように。


 理解不能な光景だ。

 警察の赤色灯が近づいてくる。


 音のなかった映像にサイレンの音が入った。

 それに、コーン、と、まるで狐の鳴き声のようなものが。






「美咲。なんかSNSがすごいことになってる」


 夕食の片づけをしていると、携帯端末を片手に持った雪那が駆け寄ってきた。

 おおう。

 さすがネット社会。情報の拡散が速いですなぁ。


「どしたの?」


 しれっと訊ねたりして。


「九尾の狐か、だって」

「へぇー」


 なんでも、タバコのポイ捨てで火事を起こしかけた若者たちが、逃げようとしたところを警察に捕縛されたらしい。

 その際、延焼を防いだのがなにやら狐のような生き物だったという。


 誰が撮ったか判らない不鮮明な動画のなかに、高速で疾走する謎の生き物が映りこんでいる。

 よく見ると、狐に見えないこともない。

 しかも尻尾が、一本二本じゃないような気がする。


「んんー よく判らないね」


 目をこらして確認しようとする私に、雪那が微笑してみせた。


「こういうのははっきり判らないからロマンなんだと思うよ」

「そういうもんかもね」

「ネッシーにしてもクッシーにしても」

「クッシーって?」


 さすがにネッシーくらいは私も知ってる。

 イギリスはスコットランドのネス湖に棲んでるっていう怪獣だ。UMAってやつだけど、たしか否定されたんじゃなかったかな。


屈斜路湖(くっしゃろこ)にいるやつよ。ネッシーの北海道版ね」

「やばいな。北海道。そんなのまでいるのか」


 七樹や安藤氏から、北海道はやばいって聞いてたけど、UMAまでいるとは。

 あなどりがたし!


「最後に狐の声が入ってるっていうけど、それもインチキくさいしね」


 動画の話である。

 警察が近づいてきたあたりから、なぜか音声が入るしね。

 都合が良すぎるってもんだよね。


「ま、九尾の狐、玉藻の前が山火事を防いだって解釈でいいのよ。こういうのは」

「人気が出そうだねー」

「そだね。もともと人気の高い妖怪だけど。これでさらに知名度があがるかも」

「つーか雪那くわしいね。みょーに」

「好きだからね」


 ちょっと照れくさそうにする姐御。

 たしかに意外ではある。

 超常現象なんぞに興味ありませんってタイプだと思ってた。


「世の中、不思議に満ちてた方が面白いじゃん」

「なるほど。ついていきます。姐御」

「意味がわからん」


 いつか、ほんとにいつか。

 私たちの正体も、言える日がきたら良いな。



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