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私のオロチさま! ~スサノオとヤマタノオロチが同級生!?~  作者: 南野 雪花
第2章 人と神がラブラブなんて、アメージングだね!
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人と神がラブラブなんて、アメージングだよね! 6


「美咲、たまちゃん。どこいってるのよ」


 みんなのところに戻った私たちに、ぷんすかと雪那が腰に手を当てる。

 うわぁ。

 すでに知り合いモードですよ。

 狐の幻術(?)おそるべし。


「女同士の内緒話ですわ。雪那姐御」

「たまちゃんまでおかしな呼び方しないでよ」


 コンロの近くに誘う雪那。

 もう無二の親友みたいな雰囲気っすよ。


「さすがに九尾の狐といったところだな」

「七樹も気付いてたんだ。正体」


 私の左側に立った七樹が、やれやれといった風情で話しかけてきた。


「けっこう大物だからな。さすがに気付くさ。もちろん俺の方が格上だけどな」

「それ付け足す必要あった?」


 竜と狐、どっちか上だとか、どうでもよくね?


「いやいや。お前は自分の彼氏が狐以下だったら、悲しくないか?」

「そもそもそれと比較する理由が、わしには判らぬよ」


 なんで自分の彼氏と狐を比べる必要があるのか。

 ねー みてみてー 私の彼氏って狐より可愛いのー きゃぴるん♪

 とか、やっている女子高生を、私は見たことがないぞ。


「いや。霊格や神格ってのは、あんがい大事なのさ。美咲」

「そういうもんなの? 伊吹」


 大胆に炙り焼きしたベーコンを持って、伊吹が近づいてきた。

 私と七樹に手渡す。

 軽く礼を言って受け取り、視線で先を促した。


存在理由(アイデンティティ)にも関わってくるからな。俺たち神話の存在が、いくら有名とはいえ妖怪変化より格下なんてことは認められないのさ」


 判ったような判らないような理屈である。

 格付けって、そんなに大事なんだべか?

 かなしい格差社会である。


「しかし、なんであの狐はわざわざ近づいてきたんた?」


 首をかしげる七樹。

 九尾の狐は大妖怪だが神格には及ばない。


 普通なら接点を持とうとはしないし、なにか用があるなら倉稲魂命(うかのみたまのみこと)を通す。

 あ、このウカノミタマってのは、いわゆる稲荷(いなり)神のことだ。

 人にしても妖怪にしても、直接神に奏上ってのは色々まずいだってさ。


「もちろん、ウカには頼みづらいってのはあるだろうけどな」


 ぽりぽりと伊吹が頬を掻く。


「そうなん?」

「そりゃあウカは、俺とオイチの娘だからな」


 あー。

 そうか。

 神大市比売(かむおおいちひめ)か。


 私っていうかクシナダの死後、スサノオの奥さんになった神だ。

 ウカノミタマにしてみれば、私には会いづらいだろう。


「それ以前に、伊吹が美咲や俺に会いづらいはずなんだがな」


 横から七樹が口を挟む。

 そりゃね!

 騙し討ちで殺した相手と、むりやり連れ去ってひどいことをした相手だもの!


「どの面さげて会いに来たって感じよねー」

「ねー」


 私と七樹が頷きあう。


「おまえらなぁ……」


 頭を抱える伊吹だった。

 まあ過去(前世)のことだし、もうそんなに気にしてないけどね。


「挨拶にきたって言ってたけどね」


 ともあれ、私は話題を戻した。


「それは口実と考えるべきだろうな」

「ああ」


 男どもが頷く。

 挨拶にくるなら、私たちがキャンプ場に到着した時点で現れるだろう、というのが彼らの考えだ。

 チンピラをのしたタイミングで登場したということは、スサノオとヤマタノオロチの戦闘力を確認した上で、なにか頼みたいことがあるのでではないか、と。


「ご明察です。いと尊き神よ」


 にこにことした表情のまま、たまちゃんが近づいてきた。


 視線を動かすと、雪那も連斗も船を漕いでる。

 母親と執事さんはお酒が入っていたことも手伝って、高いびきだ。


 なんか仕掛けたね。たまちゃんや。






「山火事がおきるのです」


 たまちゃんがため息を吐く。

 憂鬱そうに。

 まあ、にこにこ笑いながら語るような話題でもないよね。


「よくある、というほど多くもないが、珍しいことでもないと思うけどな」


 七樹が腕を組んだ。

 いやいや。山火事は珍しいて。

 ほとんど聞いたこともないよ。私は。


「大昔は、野焼きがそのまま燃え広がって、というのもけっこうあったけどな」


 伊吹が言う。

 大正とか昭和時代の話だそうだ。

 もちろん私は生まれていない。


「いずれもすぐに消し止められたので、大事にいたってはおりません。報道もされていませんし」


 苦い顔のたまちゃんだ。

 被害はほとんどないが、原因不明の不審火である。


 近隣住民は、狐火の仕業だと騒ぎはじめた。

 さすがは九尾の狐、玉藻前の終焉の地だけあって、狐ものはすぐに噂になる。


「正直、困るんですよね。せっかく最近は薄幸の美女キャラとして定着しつつあるのに」


 憤慨している。

 九尾の狐の評判が悪くなってしまう、と。


 うん。

 そういう理由で怒ってるのかい。


 ちゃうやん。そうじゃないやん。自然を大切にしない人間への怒りとか、そういうやつやん。普通は。

 地球に対し、自然に対し、贖罪しないといけないときがきてるんだよ。どうしてそれがわからん。

 とか、そういうやつじゃないの?


「え? なんでですか?」

「なんでて……」


「美咲。神にしても妖怪にしても、べつに地球の代弁者じゃない。人間がいくら自然を壊そうと興味を示すことはないさ」


 七樹が説明してくれた。

 そういうもん?


「テレビアニメなんかでは、傍若無人な人間に対する怒りの化身みたいに描かれることはあるけどな。それこそあれは人間が勝手にそう思っているだけだ」


 伊吹も口を挟む。

 人間がその愚劣さによって地球を汚し続け、結果として地球に人が住めなくなったとしても、神々は困らない。

 地球も、ぜんぜん困らない。


 人類が滅びた後、ゆっくりと再生すれば良いだけだから。

 天体の生涯からみたら、ほとんど一瞬と変わらない。

 タイムスケールが違いすぎるのだ。


 私や七樹、伊吹も今は人間って器に入ってるけど、死ねば高天原に戻るだけ。

 地上のことなんて、正直なところ余興でしかないらしい。


「むーん」

「納得できないって顔だな。けど神々のスタンスはそんなもんなんだ。妖怪もたいしてかわらん」

「いえいえ。大蛇の君。さすがにわたくしどもは、人間がいなくなっては困ってしまいますよ」


 人の精気がエサだから、と、笑うたまちゃん。

 生々しすぎる!


「山火事の原因は狐火ではありません。これです」


 和装の美女がタバコを吸うジェスチャーをする。

 すげー蓮っ葉っぽい感じだ。

 まったく似合ってない。


「タバコのポイ捨てか」


 苦々しい顔で七樹が言った。

 たまちゃんが頷く。


 栃木県というのは林業が盛んだ。

 林道の左右に乾燥中の材木が積まれている場所もけっこうある。

 そこに自動車の窓から捨てられたタバコの吸い殻が落ちたらどうなるか。


 うん。

 子供でも判る話だね。

 吸い殻って、あれようするに種火だからね。

 可燃物が近くにあったら、燃え上がるに決まってるじゃん。


「五歳児でもわかりそうなことなのに」

「つまり、この国の喫煙ドライバーは五歳未満なんだろうよ」


 皮肉げな口調で言って、七樹が唇を歪めた。

 ちなみに法律的には十八歳以上じゃないと車の免許は取れないし、二十歳以上じゃないとタバコは吸えません。


「そうやって一部のマナーの悪い奴らのせいで、スモーカー全体が悪く言われるようになるのさ」


 伊吹が肩をすくめた。

 だよねー。


 どんなもんだって、おかしいのは一部だけなんだ。

 その一部のせいでみんな迷惑する。


 私はスモーカーに嫌悪感を持っていないけど、マナーを守って欲しいとは思う。

 むしろ喫煙者自身のためにね。

 どんどん肩身が狭くなるから。


 あれはさすがに可哀想だと思う。わざわざ喫煙可の店に入って、タバコ臭いと文句を付ける人までいるんだよ。

 ひっどいよね。


「しかし解せないな。原因がわかっているなら、犯人を警察に突き出すとか、そういう方法で良いんじゃないか?」


 七樹が首をかしげる。

 警察、というところで伊吹が嫌そうな顔になった。

 彼はご厄介になってるからね。


「捕まえられればそうしますけど……」


 しょんぼりたまちゃんだ。

 いくら大妖怪でも、走ってる車を止めることはできないらしい。

 無理に止めようとしたら事故になっちゃうんだってさ。

 あー。

 だいたい見えてきたかも。


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