一章 ミヅキ 二
約束の三十分前に、アタシは休憩所に到着した。
木製の柱四本と黄色の屋根、青いベンチが二つ。そして有名飲料メーカーのロゴが書かれた赤い自動販売機があるだけの簡素な場所だ。
周りは薄暗いのに、ここだけ日差しが強くて暑い。夕方とはいえ日没まで時間があるからだろうか。汗で張り付く半袖のワイシャツが気持ち悪い。
学校が終わってからここに来たが、予定通り人がいなくて良かった。
遊具もない場所には子供達は集まらないし、机がないから学生が勉強に来ることもない。警察も定期的に見回りに来るので、不良の溜まり場にもならない場所だ。
その辺のファミレスで待ち合わせるよりいいと思ったのだ。
と、そんな事より本当に暑くなってきた。自動販売機でオレンジジュースを買い、ベンチに座った。
冷たいジュースで喉を潤しながらカバンからノートを取り出し、津村が来るまでの「予習」をすることにした。
びっしりと文字や図が書かれたノートは、私が授業中に書き込んだものだ。
内容は自分なりに考えた殺し方、証拠の隠滅方法、犯行場所などのメモだ。
これは以前から考えていたことを書いたという表現が正しく、これですぐに実行に移せるというものではない。
仮に、これをアタシが実行したらほぼ確実にバレてしまうだろう。
だが、赤の他人である津村が実行すれば、どれかは成功するかもしれない。
あるいは、思わぬ形で画期的な殺人計画を思い付くかもしれないのだ。
だから彼を利用させてもらう。
さて、そろそろ待ち合わせの時間だ。
アタシは空き缶を捨てて、津村の到着を待つことにした。