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序章
雨が降っていた。深夜の森の中をカッパを着て進んでいく事は少し不快に感じるが、俺にとってはこんな日の方が望ましい。
ぬかるんだ道を履き慣れない靴で進んでいく。時折転びそうになりながらも何とか目的のものを見つける事ができた。
木の側に揺れるシルエットを懐中電灯の光が照らす。
四肢にもはや力はなく、枝とロープに身体を支えられるだけのそれは恐らく自殺した首吊り死体だろう。
もう何度目の遭遇かは分からないが、俺は口の端を吊り上げながら死体のポケットへと手を伸ばした。
「死体をあさって金品強奪」なんてことは、長く続けられるなんて思ってはいない。
いつかはやめなければならないと、毎日考えていた。だけど、ああ、何てことだ。
懐中電灯とは違う光が俺の顔を照らし、全ては終わってしまったのだった。