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炎天下~日傘に入るが吉なのか。熱中症に気を付けて、今日も俺は走ります~
完結………
完結……?
完結!!!???
拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳
拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳
拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳
拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳
拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳拳
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拳拳 拳拳 拳拳 拳拳
「終わらせないよ」
愛が、動き出す。
異星からの訪問者たちは、千を超える宇宙船群で、地球の上空に滞空していた。彼らは、地球人の作成した恒星吸収システム「炎帝」に、惑星が滅ぼされて以来、あらたな移住先を探すため、そして母星を壊滅させた相手に復讐するため、宇宙を旅してきた。
宇宙船群の先頭集団は、軍部となっており、地球に巣くう人類たちへ、破壊光線を放つボタンを連打しながら、祝杯をあげていた。
群の後方集団は、一般市民で構成されており、各宇宙船には国単位で人々が収納されていた。ある宇宙船では、国王が台に立ち、演説をしていた。住民たちは歓喜の声をあげた。
悲願を達成した喜びは、すべての宇宙船に伝染しており、このとき船群は同じ感情を持つひとつの共同体となっていた。
勝ったぞ!
安住の地だ!
復讐は成功した!
宇宙は我らを選んだのだ!
孤独の旅を終えた彼らは、愉悦に浸っていた……。
時は遡る。
地球。ドーム都市「東京」の地下研究所にて、「サンジェル」の名を持つ幼女は、ひとり茶を飲んでいた。テーブルにはふたつの椅子が置かれていたが、ひとつは空席である。しかし、サンジェルは、茶の入ったティーカップをその誰も座っていない席に用意していた。
「さて、あなたとあたしの愛、どっちが勝つのかしらね」
このとき上空には、他の惑星からの訪問者が虎視眈々と攻撃の機会をうかがっていた。
地上の頭脳たちは一堂に会し、この危機を逃れるすべを考えていたが、結論は出そうになかった。
焦燥感に襲われる者たちのなか、この幼女だけは、悠々とティータイムを過ごしていた。
彼女には、わかっていたのだ。
愛の力がなにをもたらすのか。
宇宙船群を率いる総統は、地球の惨状を目にしながら、冷静な気持ちを保っていた。
母星が滅ぶ瞬間、彼は俊敏な判断により、星を脱出し、宇宙へ多くの命を逃がすことに成功した。
死んでいく惑星を見るのは、これで二度目である。
責任を持つ者にとっては、その光景はたとえそれが希望であっても、喪失感が強かった。
この異星人たちは、感情をテレパシーによって他者に伝える器官をもっていた。送受信システムは、脳内で発生した電気信号を、電波として放出するというものであった。
総統となる者は、この感覚器官が他者より優れているものが選ばれるのが文化であった。民主政治を果たすための役割といわれている。
船内の歓喜の感情は、一斉に、総統に流れ込み、彼自身の感情は覆い隠されていく。
彼の心は満たされていき、笑顔で破壊を指導し始めた。
時はさらに遡る。
ドーム都市「三重」にて、ひとりの少女が咆哮した。
長い歴史を持つこの地球で、もっとも強力な拳を打ち出しながら。
少女の原動力は、愛。
人類が生存、繁殖のために用いるひとつのツールである。
ただ、それだけ役割しか持たなかった感情が、このとき昇華した。
彼女の拳は、世界に変革をもたらした。
その肉体の喪失と引き換えに。
彼女が抱える「愛」は、もはやひとの身に宿すには巨大すぎるエネルギーとなって肉体を崩壊させた。新人類の利用してきた技術、変換は、呪術型の専売特許ではない。武術型を極め、新人類を極めたこの少女はこのとき、ヒトすらも超えたのだ。
炎の拳を放った彼女の肉体は、直進するエネルギーに耐え切れず、カタチを崩壊させた。しかし、なんの奇跡か、少女を構成していたすべての分子が、「愛」を構成する電気信号を発生させる電子の並びとなって空間に留まった。
少女は、「愛」となってこの世界に新しく誕生したのだった。
エネルギーの再構成により、世界を創造するちからを持つ炎帝は、ドーム都市内のカメラ観測できるものにしか干渉できない。ゆえに、この少女の死を目撃してしまった以上、炎帝はそれを、失われたものとして認識してしまった。
愛にかたちを変えた少女は誰からも干渉されることなく、この世界に留まることとなった。
宇宙船の望遠スコープで、ドーム都市内に残る僅かな生命をみつけた、運航センター管理局の補佐は、テレパシーで、光線発射ボタンを押す決定権を持つ軍部へ、位置情報を送信した。
地球の地名では、ドーム都市三重。野原のど真ん中に呑気に眠るふたつのヒト種。このふたりが、この地球に存命する最後の個体であった。
座標を設定した軍部の砲兵は、司令官に許可を求める。承諾が降りる。
ボタンが押し込まれ、発射口が狙いを定める。
発射。
光が降りかかる。
愛は、地下に潜り込んだ。地中深くに進み、マントルに到達する。
地中は、炎帝の監視の手が届かない。ゆえに誰の支配にもよらない場所であった。
そこへ侵入した愛は、堂々と領有権を主張する。
周囲の電子を従え、愛を増大させると、中心から地球のコントロール権を獲得した。
そして、愛は眠った。
サンジェルは、炎帝・新人類が開発される以前の旧世界での、一度目の人生を未婚のまま終えた。
研究者として、そして旧人類の使者としての役目を課せられた彼女には、伴侶など重荷になるだけだったのだ。
ただし、彼女にもただひとり愛するものがいた。
その男は、永遠の命を実現する科学力をもつ旧人類のなかにおいて、奇特な死生観を持っていた。
『無駄にだらだら生きてもしょうがない。一度きりだから本気になれるんだよ。俺が死んでも生き返らせるなんて馬鹿な真似はしないでくれよ』
サンジェルには、その感性が理解できなかった。しかし、自由に、そして大胆に生きる男の姿に、彼女は惹きつけられた。
ふたりは愛を育んだ。生産性のない、プラトニックな愛を大事に大事に……。
だが、有限を選択したものと、無限を選択したものの袂を分かつときがくる。
寿命により死を迎えた彼を看取り、女は悟った。
愛など、所詮儚いもの。
なんの力もないのだ、と。
サンジェルは、しかし愛に縛られた。もう決して子どもを産まないと心に決め、生殖能力のない幼女の姿でしか転生しないことにした。
愛にはたしかに力があったのだ。
コウノトリプラントで、炎帝が生成する新人類の遺伝情報は、膨大な過去世界のデータのなかからランダムに選びだされたものが採用される。そこに技術型に応じた器官を埋め込むことで、新人類は誕生する。
このシステムの都合上、数十年前、あるいは数百年前に存在した人間のデータが再び採用されてしまうことや、はたまた一度も使われずに次の炎帝へと引き継がれるデータもある。
そして、繰り返される時代のすえ、ついに過去一度も選択されたことのない遺伝情報が、採用された。
サンジェルは、このデータのなかに、あの男の遺伝情報は入っていないと思い込んでいた。しかし、他の研究員の不手際か、あるいは自分が無意識に組み込んでいたのか定かではないが、男のデータは存在していた。
そうして、男の意向を無視して誕生してしまったのが、彼の生き写しの少年である。
サンジェルは、少年のことを気にかけた。
中身は違っても、その見た目はかつて自分が愛した男のすがたそのものだったからである。
少年は不器用で不器用で、思うままに生きることができないようであった。男とは、正反対の性質である。このままでは、彼は幸せにはなれない。そう考えたサンジェルは、少年に試練を、そして救済を与えることにした。
それが、少年、獅子頭奈保が、倒達者に、そして炎帝に選ばれた理由である。
忘れかけていた愛情は、孫に向けるものとして形を変えて胸に現れたのだった。
愛は形を変えて受け継がれる。
現在。
永遠を手に入れたはずの人類は、絶滅の危機に瀕している。
結局、この世界の理において、永遠など幻であったのだ。
ただひとつの例外は愛である。
愛は決して滅びない。
宇宙船群の中腹に位置するのは、階級上位のものたちである。そのなかで、将来が約束された子どもがいた。彼は、感覚器官が他者より圧倒的に優れており、このまま成長すれば、まず間違いなく次の総統に就任するといわれていた。
その子どもが、うずくまったとき、周囲のものたちは未来の宝の損失が万が一にもあってはならないと、心配して集まった。
この船内で、希望が絶望に変化したのに最初に気が付いたのは、彼であった。
愛は、目を覚ました。そして、第一声に愛する者の名を呼んだ。
望遠スコープを覗いていたものが、悲鳴を上げた。
何事かと振り向く室内の一同。
愛が動き出した。
総統は事態を飲み込む。恐怖に染まった彼は、その感情を船群全体に伝達させてしまう。
一瞬のうちに、群体が絶望を抱えた共同体に様変わりする。
敗北だ……
逃げろ!
まずい!
助けて!
三角形の群体の頂点がつぶれ、台形となる。宇宙ゴミが量産され、大小問わず生命が散っていく。やがて台形も一本の線になると、両端を残し、すべてが破壊された。
愛は、地球を動かしたのだ。
現在、太陽のない地球は、代わりにおいてある巨大な金属の球体と万有引力を成立させて、位置を固定させている。ここで、愛は地球に動力を与えて、公転のスピードを変え、その固定を外したのである。
そうしてつながりを失った地球はただの隕石に成り下がり、宇宙を飛来した。
飛来の方向は、来訪者たちの三角形。
結果は見ての通りである。
愛は、一息つくと、久しぶりに地上に上がった。
そして、野原に横たわる少女の肉体に入り、傍らに眠る少年の唇にキスをする。熱い熱い、口づけである。
果てしなく広がる宇宙へ、愛の惑星はたったふたつの命を乗せて、新婚旅行に出かけるのだった。
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終 宇宙へランデブー
炎天下~日傘に入るは吉なのか。熱中症に気を付けて、今日も俺は走ります~
完結
おしまい。
ここまで読んでくれた方に幸あれ!




