紅騎士・サラマンデス
ロディが苦悶していると、上空から何者かが落下してきた。
砂地に土煙を巻き上げながら着地する謎の人影。
「なんだ!? 何が起きた?」
突然の出来事にロディは面食らうものの、とにかくクレーターが出来た場所へと馬で行ってみることにした。幸いなことに滝川はぐっすりと寝ており、起きてくる気配はない。
「ちょっと出かけてくるぜ。そのまま夢の中でおねんねしてな、お嬢さん」
彼が問題の場所へ向かうと、そこには一人の男が腕を組んで立っていた。
緑の瞳に青白い肌。背中に生えた一対の蝙蝠の如き翼。
龍を模した赤い甲冑姿は騎士を彷彿とさせる。
彼は緑の瞳でロディを見据え、口を開いた。
「我の戦闘員を倒すとは少しはできるようだな」
「昼間俺達を襲ったオーク共はテメェの差し金か」
「その通りだ」
「なぜ俺達を狙う?」
「この世界に侵入した異世界人を排除するのが我が役目……」
「するとテメェは――」
「察しの通り、我は魔王様の家臣の一人、紅騎士サラマンデス。
世界を混乱に陥れる異世界人の少女を守護する保安官よ、お前達二名の命は我が頂く」
「できるもんならやってみやがれ」
するとサラマンデスは大きく手を広げ、口元には嘲笑を浮かべた。
「用意ができているのなら、さっさと我に攻撃をかけてみるがよい」
「後悔しても知らねぇぞ」
「それは我の台詞になるかもしれぬな」
「言うじゃねぇか。じゃあ遠慮なくこっちからいかせてもらうぜ!」
拳銃を引き抜き、両手の銃弾から全ての弾を撃ち出す。
だが銃弾はサラマンデスの赤い鎧に命中すると、傷一つ付けることなく地面に落ちた。
「もう弾が切れたのか。呆気ないものだ」
ロディは先のオークとの戦闘で銃弾を消費していた為、残りは六発だった。
貴重な銃弾を全て使用したにも関わらず、サラマンデスは無傷である。
「へッ……鎧が堅いだけだろ。残念だが、俺の武器は普通の弾だけじゃないんだ」
服の内ポケットに隠し持っていた銃から鋼鉄製のワイヤーを発射し、巧みなワイヤー捌きでサラマンデスの四肢の自由を奪う。
「挽肉になりな」
渾身の力でワイヤーを引っ張ると強固なロープがサラマンデスの身体に食い込んでいく。
けれど、彼の表情は変わらない。
「効かぬ」
サラマンデスが僅かに力を込めると、頑強なはずのワイヤーが千切れ飛ぶ。
「それなら――こいつはどうだ!」
閃光弾を放り投げサラマンデスの視界を奪うと、隙を逃さず急接近し彼を砂に押し倒すと、その足を取り足4の字に固めていく。
「早く降参しないと足の骨が折れちまうぜ」
「その程度の技など、蚊に刺されたほどにも感じぬ」
サラマンデスは4の字に極められたまま、腕の力だけで倒立。
更に腕力だけで自分とロディを空中へと舞い上がらせる。
そのまま上空で体勢を入れ替え、パイルドライバーの如き状態で落下していく。
砂地であるとはいえ、高角度から全体重をかけられ頭部をぶつけたのだ。
技を解除し離れると、ロディは口から吐血し大の字に倒れた。
「我とお前の実力差は今の通りだ。これ以上闘えば命を落とすことになるが、どうする?」
「闘うに決まっているだろう。俺がここで逃がしたら、お前は滝川を殺しに行く」
「惜しい男よの。大人しく尻尾を巻いて逃げればよいものを」
「生憎俺には尻尾がなくてね。逃げる選択肢は最初ッからないんだよ」
「愚かな。命を捨ててでも我を止める気か」
「当たり前だ。それが隊長との約束だからな」
「あくまで忠義に生きるか。まあ、それもよかろう」
鎧に装着されている赤い鱗を一枚引き抜き、それを魔力で赤い鞘の長剣へと変化させる。
「先代の魔王様を倒した英雄の一人、ロディよ。お前はかつては英雄だったのかもしれぬが今は違う。
現在のお前はただの化石だ」
「時の流れというものは残酷だ。俺の強さを見誤るとは」
「何を言い出すかと思えば笑止千万。
お前は現に我の身体にかすり傷さえ付けられぬ身ではないか。
現実を受け入れるがよい、時代は変わったのだ。
過去の英雄は今宵、我が剣の前に散る」
「俺が魔王と闘った時にはお前のような奴はいなかった。
今の魔王が部下として引き入れたか」
「そうだ。昔の魔王がどのような奴だったかは知らぬ。興味もない。
現・魔王様は国民を第一に考え尽くしてくださる偉大な支配者だ」
「異世界人の犠牲の上にか?」
「黙れ。魔王様の偉大さもわからぬ保安官風情が」
「お前の慕っている魔王など、俺から言わせればゴミ同然だ」
「減らず愚痴を叩くとは恐れを知らないようだな」
「俺は生まれてから一度として恐れたことはない」
「ならば笑ってあの世へ逝くがいい」
「お前がな」
「我はお前のような輩が好かぬ。早急にお前を倒し、次は異世界人の番だ」
サラマンデスの瞳に緑の炎が宿り、ロディとの間合いを一気に詰めると、剣を振り下ろす。
だが、振り下ろした先にロディの姿はない。
「どこへ消えた!」
「ここだよ」
「!?」
ロディはいつの間にか彼の背後へ回り込み、左腕で相手の身体をガッチリと押さえつける。
その右手には手榴弾が握られていた。
「貴様、何をするつもりだ」
「なァに、大したことじゃねぇさ。
ちょっと付き合ってもらうんだよ……地獄までな」
「離せ!」
「うるせぇ口だ。これでも食って黙っていろよ」
彼は強引にサラマンデスの口の中に手榴弾を押し込む。
「隊長、これが俺の足りねぇ頭で出した答えだ。あとのことは他の仲間に任せたぜ……滝川、短い時間だったけど、お前と過ごせて楽しかったぜ。じゃあな!」
ロディが手榴弾のピンを抜いた刹那、砂漠に巨大な爆音が響いた。
「一人だけ犬死するとは、救いようがない奴だ」
砂煙が晴れると、血塗れになったロディを蔑むサラマンデスの姿があった。
「保安官が自滅してくれたおかげで、楽に異世界人を始末できるな。
だが何故だ?
何故こやつは一異世界人である少女を守ろうと必死に――わからぬ
理由がわからぬだけに、どこか不気味だ」
ロディの遺体を蹴飛ばし、滝川の元へ向おうと蝙蝠のような翼を広げる。。
「待っているがいい滝川とやら。我がもうすぐお前の息の根を止めてやる!」
「ウフフ、くすぐったいよ」
何者かに舐められる感覚を覚え滝川が目を覚ます。
彼女を舐めていたのはロディの愛馬であった。
「おはよう、いい朝だね」
青い空に眩しい太陽。猛暑ではあるが天気は快晴そのもので、滝川の目覚めはよかった。
大きく伸びをして、新鮮な空気を吸い込む。
と、ここで彼女は異変に気付いた。
「エリザベス、ロディはどこ?」
エリザベスとはロディの愛馬(雌馬)の名前である。
彼女とロディは常に一心同体で片時も離れたところを見たことはない。
また、ロディが彼女だけを置いてどこかへ行くことも考えられなかった。
そうなると導き出される答えはひとつ。
「まさかロディの身に何かあったの!?」
ロディの愛馬は頷き、蹄で砂を蹴り上げた。自分に乗れと言っているのだ。
滝川は既に何度かエリザベスの背に乗せてもらっているだけあり、容易に背に跨ることができた。
「ボクをロディのいる所へ連れていっておくれ!」
エリザベスは高らかに鳴き、全速力で駆けだした。
「これは!?」
目の前に広がる光景に滝川は目を疑った。
ロディが仰向けに倒れているのだ。
髪や服は血塗れとなり、何者かに襲われたことを意味する。
急いで駆け寄り、脈を測り、心臓に耳を当てる。
だが彼の脈も心臓も既に機能を停止していた。
「嘘だ。あり得ない」
オークを瞬殺できるほどの実力者であるロディ。
その彼が死んでいるのだ。
一体誰に!?
いや、それよりも彼は本当に死んでしまったのか。
滝川は僅かな可能性を信じ何度も心音を確かめるが、反応はない。
「嘘だ。嘘だ!」
彼女の両の瞳から大粒の涙が流れ、ロディの顔を濡らしていく。
滝川にとってロディは異世界で初めてできた友人だった。
一緒に過ごしていくうちに、彼女にとってロディはなくてはならない存在となっていた。その彼と、こんなにも早く別れることになろうとは。
こみ上げてくる悔しさと己の無力さをどこへぶつけていいのかわからず、滝川は握った拳を幾度も砂へと叩き付ける。
「無様だな」
上空から聞こえてきた声に、滝川は顔を上げて相手を睨む。
彼女の目に飛び込んできたのは、赤い鎧を着た異形の怪人の姿だった。
「誰だ!」
「我はサラマンデス、魔王様が家臣の一人。魔王様の命を受け、貴様の命を奪いにきた」
サラマンデスはゆっくりと降下し、砂地に降り立つ。
そして一歩一歩、滝川に歩み寄っていく。
「異世界人はこの世界にいてはいけぬ存在。お前を守る為に我と闘い命を散らしたその男は愚か者だ」
彼の口から放たれた衝撃的な言葉に、滝川の青い瞳が大きく見開いた。
「まさか――君がロディを殺したのか!?」
「そうだ。我の邪魔をする者は何人たりとも容赦せぬ」
「許せない」
「何か言ったか?」
「よくもロディを! 君は絶対に許せないッ!」
滝川は怒りに震え涙を流し、拳を堅く握る。眉はつり上がり、瞳は鋭く相手を睨みつけ、強く歯を食いしばった。
「ボクの友人を……ロディを返せぇーッ!」
「武器も持たず我に挑むとは。無謀という他ない」
滝川が放った左ストレートを難なく受け止め、片腕の力だけで彼女を宙に浮かばせると、軽々と背後に投げ捨てた。
「オオオオオオオッ!」
勇ましく叫び、己の怒りをぶつける滝川。
けれどいくら殴ろうと、蹴ろうとサラマンデスの身体は全く揺るがない。
「何と貧弱な攻撃、これではカも殺せまい。攻撃と言うのは、このようにしなくては」
パァン!
乾いた音と共に滝川は思いきり頬を張られた。
「がはあっ!」
衝撃で遥か後方まで吹き飛ばされるが、それでも戦意を喪失せずに滝川は立ち上がる。
「まだ立ち上がるか。諦めの悪い娘だ。
ならば少しだけ力を出してやるとしよう」
サラマンデスが両手を開いてあげると、彼の周囲の砂が集まり腕を生成した。
腕の長さは五メートルを超えている。
「押しつぶされて死ぬがいい」
サラマンデスの動きに合わせて砂は拳骨を作り、蛇のように伸びて滝川に襲い掛かる。
砂とは言え、あれほど巨大で固まった拳を食らったら一発であの世行きだろう。
「うわッ!」
身を翻して間一髪で巨大拳骨を回避するものの、砂の拳は滝川を嘲笑うかのように次々と放たれていく。
命中した地点には底が確認できないほどの深い穴ができており、その破壊力を物語っている。
「ハァ……ハァ……」
「どうした。息が上がっているぞ」
「まだだッ!」
炎天下の中、滝川は必死になって避け続けるが、水も食事も摂らないでの激しい動きをしているうちに、今の状態では限界が近づいていくのを悟った。
このままでは時間の問題で、拳骨を食らってしまう。
意を決して自らの上着に手をかけ。
「何をする気だ」
「身体を軽くするのさ!」
滝川は勢いよくコートを脱ぎ捨てた。
強い拘りを持っているコートであるが背に腹は代えられない。
滝川の身軽になった姿を見て、サラマンデスは口元に薄ら笑いを浮かべる。
「その軽くなった体でどれほどの動きができるのか、見せてもらうとしよう」
彼は鎧の鱗を一枚抜いて、ロディと闘った時と同じく剣を生み出し、疾風の如き速さで滝川に斬りかかる。
「我が剣の前に敗北するがいいッ!」
重く厚いコートを脱いだ滝川は、スピードでサラマンデスに勝っていた。
彼が繰り出す斬撃を冷静に躱し続け、少しずつ疲労を蓄積させていく。
彼女の真の目的は勝利ではなく逃走である。
まずは恐るべき力を誇る紅騎士から逃げ切り、今後を考えなくてはならない。
そのために敵の体力を削ぐことが最優先。
結論を導き出した彼女は自分の命を守る為に、この危機を脱する為に、全力で敵の刃を回避する。
幾度となく剣で斬りかかろうと斬撃が命中しないので、サラマンデスは眉間に皺を寄せ、こめかみに血管を浮かび上がらせ苛立ち始めた。
「敵の攻撃を真っ向から受け止め反撃する。それが戦士としての美学!
それなのにお前は我の攻撃を逃げてばかりいる。自らの行いを恥ずかしいとは思わぬのか!」
「そんな台詞は自分の防御力に自信を持つ君だから言えるのさ。
ボクは君と違って普通の人間で、剣で斬られたら死んでしまうからね。
逃げるしかないのさ」
「小娘の癖に減らず口を叩きおって!」
怒りの影響で無意識のうちに剣を振る動作が大振りになり、滝川がより避けやすい状態になっていることに彼は気づいていなかった。
加えて攻撃の空振りというのは命中した時と比べて何倍も疲れるのである。
昨夜はロディ、そして今朝は滝川と連戦である上に、既に一〇時間以上も闘い続けている彼は自分でも知らぬうちに身体に深刻な疲労を抱えていた。
実はロディの死因は自爆が原因ではなかった。
彼は戦闘の途中で自分の力ではサラマンデスに勝てないことを悟り、時間稼ぎをする戦法に切り替えた。
敵は強固な鎧に覆われており生半可な攻撃では通用しない。ならば自らも命を落とす可能性のあるギリギリの攻撃を連発して、致命的なダメージは与えられずとも足止めだけはしておこう。
万が一サラマンデスが滝川と相対した時でも少しでもダメージや疲労が蓄積されていれば、もしかすると滝川に逃げる隙を与えられるかもしれないのだから。
ロディは気力だけを武器に何度倒れても立ち上がり、10時間という常軌を逸する時間を闘い続け、息絶えたのである。
そして彼の玉砕覚悟の最後のがんばりは決して無駄ではなかった。
「おのれ。なぜ当たらぬ!」
怒り、焦り、疲労と負の三拍子が揃ったサラマンデスは、怒りで冷静さを見失い、隙の多い攻撃をして避けられ、結果的にますます疲労が溜まっていく……という負のスパイラルに陥ってしまったのだ。
「ぬがぁ!」
ついにストレスが限界を超えたサラマンデスは剣を放りなげ、瞳に緑色の炎を宿す。そして鎧から黄金色の刺を無数に生やして、真上に跳躍。
そのままボールのように体を丸め、体当たりを敢行する。
「棘弾ニードルボール!」
滝川は足を踏み込み、手で相手の体当たりの威力を抑えようとするが、敵の回転は増していき、摩擦で手袋から火花が散り、両掌は弾かれ、彼の体当たりを正面からまともに食らってしまう。
「ぐあああああああああッ!」
上着が裂かれ白い肌が露わとなるが、先ほど威力を軽減しておいたおかげで肉体の損傷は避けられた。
けれど棘弾を受け止めるのに全体力を使い果たし、彼女は倒れ伏す。
立ち上がろうと指を動かそうとするも、全身が痺れてどれほど力を込めようとも起き上がることさえできない。空中で停止したサラマンデスは棘弾状態で言葉を告げる。
「我の必殺・棘弾を受け止めるとは褒めてやる。だが、一度目はできても、二度目はうまくいくであろうか?」
「くっ……」
「死ね」
二文字の言葉が恐ろしい響きを持って滝川に重くのしかかる。
ロディは死に、エリザベスのいる場所までは遠く、自分の身体は動かない。
八方塞りの最悪の状況下で先ほどの刺弾を食らったら本当に死んでしまう。
友人の敵討ちもできず、逃走も叶わず、無様に倒れ伏している今の自分の無力さ、情けなさに、滝川の瞳からは透明な雫が流れ出る。
「ロディ。ごめん」
微かに口を動かし、今にも消えそうな声で彼女は友に詫びた。
君の言う通り自分の力を過信して怒りで自分を見失い、
勝ち目のない敵に挑んで返り討ちに遭うボクは醜い。
昨日君がボクを守ろうと命をかけて闘ってくれていたのに、ボクはそれに気づかず寝てしまっていた。
「君を死なせてしまって、本当にすまない」
その様子を見ていたサラマンデスは冷笑する。
「何を一人でブツブツと言っているのか。恐怖のあまり気でも触れたらしい。
ともかくこれで我の使命は達成される。異世界人の小娘の死によって!」
歓喜と狂気を含んだ弾丸は、滝川を死に至らしめるべく凄まじい回転力で迫ってくる。滝川がそれに気づいた時には、既に棘弾は目と鼻の先まで接近していた。
あと二秒ほどで自分に着弾し肉を抉って殺すのだろう。
彼女は自分の最後を覚悟し、ぎゅっと強く目を閉じた。
だが一向に激痛がくる気配がない。まさかサラマンデスが情けをかけたのか。
いや、それはあり得ない。だとすると一体――
恐る恐る目を開けてみると、自分とサラマンデスの間に割って入った人物の後姿が見えた。
時代劇などで侍が着る黒い袴姿に、腰部分から生えた白い猫の尻尾。
長く艶やかな髪をポニーテールで束ねている。
謎の人物は、右手にもった日本刀一本で真っ向からサラマンデスの棘弾を受け止めている。
「お主――動けぬ女子を攻撃するとは卑怯でござるよ」
「お前は何者だ!」
「拙者は川村猫衛門かわむらねこえもん。悪の心を浄化する、正義のサムライでござる!」
川村猫衛門と名乗る侍は、刺弾を弾き、滝川の方に向き直る。
目尻がつり上がり、猫のように大きくパッチリとした瞳が特徴の美少女の如き可憐な顔立ちをしており、袴の袖が長過ぎるのか手の甲まで覆われていた。
「お主、大丈夫でござるか」
「ありがとう。君のおかげで助かったよ」
「あの者に関わると危険でござる。拙者と一緒に逃げるでござるよ」
川村は滝川が説明するよりも素早くロディの元へ駆け寄り、小柄な体躯のどこにそれほどの力があるのかと思うほどの怪力でロディを担ぎ上げて、エリザベスへ乗せ、急いで滝川の方へ戻ると彼女の手を握る。
「逃がしはせぬっ」
憤怒の形相で飛びかかってきたサラマンデスに、川村は懐から煙玉を取り出し地面へと投げつける。
すると辺りは煙に包まれ滝川達が見えなくなる。
「下らぬ小手先の術など我には通じぬ!」
翼を羽ばたかせ突風を巻き起こして煙を蹴散らすが、既に滝川達はいない。
周囲を見渡すが、彼らの姿はどこにも確認できない。
「あの短時間で何処へ消えたと言うのだ……
それにしてもあの川村とか言う奴、我の棘弾を防ぎきるとは只者ではない。
残念だが、魔王様に奴の存在を報告せねば!」




