ラグの頭脳戦
ラグは無傷で立っているシャドウを鋭く見て語る。
「この世に不死身の存在などいるはずがありません。
あなたが無傷なのは何かしらの力が働いているはずです。
違いますか」
「滝川なら騙せそうだと踏んだのだがお前はそうはいかないようだな」
滝川に目をやり口を開く彼に対し、彼女はむっとして。
「ボクなら騙されそうだとは失礼な言い方だな」
「はっきり言って俺からすればお前は相当な愚か者に見える」
「今の発言を撤回してもらえないかな」
「残念だが却下する」
彼はラグに視線を戻すと、自らの右腕を煙状に変化させた。
「俺は自らの身体を自由自在に煙に変えることができる。
したがっていかなる攻撃も通用しない」
「先ほどあなたが無傷でいられたのも、ミサイルが着弾する直前に煙になったからなのですね」
「察しがいいな。その通りだ」
「ですが一度はうまくいっても二度目はできるかどうか、あなたの力を試させていただきます」
「ほほう。俺を試すとは大きく出たな。だが、ミサイルはもう弾切れであろう。次は何で攻撃をするつもりかな?」
シャドウの言う通りラグの両肩のミサイルは弾切れを起こしていた。
しかしながら全身が武器と表現しても過言ではないラグにとっては大した問題ではない。次は両膝のハッチを開き、先ほどよりも大きいミサイルを放出する。
「芸のない奴だ。同じ技が俺に通用すると思うか?」
向かってくる四発のミサイルに突進していき、斬撃を浴びせて一発ずつ一刀両断にしていく。真っ二つに切り裂かれたミサイルはシャドウを掠めて彼の背後にある階段に当たり爆発した。
「このような技など、能力を使うまでもない」
鼻で笑う彼にラグは両目を光らせ、赤い破壊光線を見舞った。ミサイルよりも遥かに速いスピードで放たれたビームをまともに食らったシャドウの腹には大穴が空いている。
ラグは彼の穴を凝視し笑顔を見せた。
「いつまで演技を続けているつもりですか」
「演技!?」
彼の発言に驚いた滝川が訊ねると、ラグは首を縦に振った。
見るとシャドウの腹に空いた大穴が塞がっていく。
「能力を使いましたね」
「ご名答。この能力がある限り、俺は無敵だ」
「ではその無敵の力を破ってご覧にいれましょう」
「できるものならやってみろ」
「行きます!」
両目を光らせたまま右腕を機関銃に変換し、レーザービームと機関銃の二段構えでシャドウに猛攻を加えていく。
身体に無数の穴が開き蜂の巣状態となるシャドウだが、その穴は瞬時に閉じられていく。全身を煙に変化してすぐに実体に戻ることを繰り返しているシャドウにラグの攻撃は全く通用していない。
そのうちビームに使うエネルギーも機関銃の弾の残量も尽きた。
「大層な口を利いておきながら、結局は無駄骨に終わってしまったようだな」
「いいえ。勝負はこれからですよ」
背中から翼を出して低空飛行し、シャドウにタックルを発動。
「策もなくただ突っ込んでくるとは愚かの極み。
お前はもう少し賢いと踏んでいたが、どうやら俺の見込み違いらしい」
「その言葉、花束をつけてお返しして差し上げますよ!」
魔王軍最高司令官は煙になりラグのタックルを無効化しようとかかる。
だが、身体が煙になることができない。
自らの身体に起きた異変に彼は目を大きく見開き慌てふためく。
「何故だ。なぜ煙になれぬ!?」
「僕はこれを待っていたのです!」
「貴様、謀ったな!」
ラグは敢えて何度もシャドウを攻撃することにより能力を乱用させ、体力切れを狙ったのだ。
能力を使用するというのは普通の攻撃よりも体力の消耗が激しい。
いかに魔王軍最高司令官であろうとも休みなしで連続して能力を繰り出すと、能力が使えなくなるのだ。
ラグのタックルからのエルボーの連続攻撃がヒットし、シャドウは壁に背中から激突。その威力で壁はひび割れてしまう。壁に追い詰めた敵を一気に畳みかけるのは闘いの定石である。
しかし彼はそうしようとはせずに後退し滝川の前まで来ると振り返って彼女にニコニコと笑顔で手を差し出した。それが意味するものは――
「滝川様、タッチですよ」
「ボクに花を持たせてくれるとはありがたいね」
「彼の能力は封じましたから、今なら滝川様でもいい勝負ができると思いますよ」
滝川はいつものように微笑し、ラグの手にタッチすると言葉を返した。
「それは違うよラグ君、ボクは彼に圧倒的な実力差で勝利する。
だってボクは天才だから」
シャドウは壁から抜け出すと金色の瞳を殺気立たせる。
「随分と舐められたものだな。
ならば俺もお前の自信を完膚なきまでにヘシ折る為に、恰好の舞台で闘わせてもらおう」
「ボクは君がどんな場所で闘おうとも必ず勝ってみせるよ」
「言ったな。では俺が勝ったらお前達を牢獄に入れる。
俺が敗北した場合は、この城の兵士の数、配置を全て教えた上で自由の身にしてやる。どうだ?」
「いいよ、この条件で乗るよ」
「決まったな。それでは付いてくるがいい」
マントを翻して歩みを進めるシャドウ。
その後を追う滝川達。
彼が行く先には何が待ち受けているのか、三人はまだそれを知らない。




