ラグの正体!
シャドウは右手を滝川達に向けると衝撃波を放つ。
その威力は凄まじく容易に壁や扉を粉砕し、三人も大広間へと落下していく。シャドウのいる参謀室から大広間まで三十五メートルもあり、まともに地面に叩き付けられたら彼らの命はないだろう。
だが、ここでラグが動いた。背中からジェットエンジンを搭載した飛行機の翼を出して、ジェットの力で舞い上がると滝川とメープルの身体を掴んでゆっくりと下降し、無事に着地したのだ。
「ラグ君、ありがとう」
「どういたしまして」
「ところでその羽はどうしたの? 魔法で出したのかな」
翼を指差し訊ねる滝川に彼はフルフルと首を振り。
「違います。滝川様とメープル様には教えていませんでしたが、僕はアンドロイドなのです」
「アンドロイド!?」
「はい。今まで黙っていて申し訳ございませんでした」
驚きのあまり声がハモった二人にラグは深々と頭を下げて謝罪する。
そんな彼に彼女達は。
「気にしなくてもいいよ。誰にでも隠したい秘密の一つや二つはあるからね。でも、これでラグ君に触れた時にどうして体温を感じられないのかわかって少しスッキリしたよ」
「安心してください。たとえラグ君の正体がアンドロイドでも、私達のお友達であることに変わりはありませんから」
「ありがとうございます! ボクはお二人に会えて本当によかったです」
ラグの緑の瞳には涙が溢れていた。アンドロイドであったとしても自分を一人の友達として接してくれる。スターはあくまでも主従関係であり、スター道場のメンバーとはそこまで親しい仲ではなかったラグにとって彼女らの言葉は心の底から嬉しさを感じられるものだった。
「友情ごっこは終わりかね」
上から声が聞こえたかと思うと、白いマントを翻しシャドウが降りてきた。ふわりと華麗に着地したシャドウの背後には騒ぎを駆けつけ多数の兵士達が最高司令官の指示を待っていた。兵士達はそれぞれ槍や剣などを得物にしており、シャドウの合図があればすぐにでも飛び出し、三人を始末する気満々であった。しかしシャドウは右腕で兵士達を制止し、口を開く。
「お前達は邪魔をするな。こいつらは俺一人で片づける」
血沸き肉躍る戦いを何よりも好むシャドウは鞘から愛剣を引き抜くと、三人に告げる。
「一人が代表で闘うか、それとも三人が同時に俺に挑むのか、どちらか選ぶがいい」
「フッ……そう結論を急がせないでおくれ。折角の勝負を面白いものにしたいのならね」
「口だけは大したものだな小娘よ。よかろう、三人で話し合いじっくり決めるが良い。
俺はいつまでも待ってやる」
シャドウは剣を床に刺し、腕組をして三人の作戦会議を待つことにした。
三人は円陣を組むような体制で作戦会議を始める。
メープルは戦闘力が無いので辞退、三人のリーダー的存在である滝川には体力を温存してもらうということにして、今回はラグがシャドウと闘うことになった。ラグは一歩前に出て、シャドウと対峙する。
シャドウは床から剣を引き抜き、フェンシングの構えをとる。
「代表はお前になったか」
「この勝負、勝たせていただきます」
「残念だがお前は俺に決して勝つことはできない」
「やって見なければわかりません」
「いや。俺にはわかる」
丁々発止のやりとりを繰り広げていた二人だったが、どちらともなく間合いを一気に詰めて戦闘が開始された。サーベルで猛攻を加えるシャドウに対しラグは剣を紙一重で全て交わしていく。
シャドウの速度を計算し無駄のない動きで避けることができるのは、ロボットであるラグならではだ。
「ハッ!」
ラグの正拳突きがシャドウの顔面を捉え、彼に命中。
クリーンヒットを受けたシャドウは宙を舞うが、素早く身を翻して着地。
「フフフフフフ、中々やるではないかロボット執事君。
並みの人間であれば最初の一撃で心臓を貫かれ死んでいたところだ」
シャドウは賛辞を贈るがラグはそれを無視して両肩のハッチを開く。
そこから現れたのは小型ミサイルを搭載したミサイルポットだった。
「ヤバイ! 逃げろーッ!」
巻き添えを食らっては敵わないとシャドウの背後にいた行動隊長が指示を出し、皆を一斉にできる限り遠くへ避難させる。
「FIRE!」
小型ミサイルは軌道を変えることなく真っ直ぐシャドウへと向かってくる。だが彼は微動だにせず正面からラグのミサイルを受けるつもりだ。
十数発のミサイルの雨がシャドウに降り注ぎ、轟音と共に壁や柱を吹き飛ばしていく。発生した爆風と爆煙のせいで滝川達は目も開けていられない。
「やったか……!?」
もうもうとあがる白い煙の中、滝川は勝利を確信した。
だが煙が晴れるとそこには服にさえ一切のダメージを負っていないシャドウが仁王立ちしていた。
「馬鹿な! あれだけのミサイルを食らってどうして生きていられるんだ!!」
滝川の問いにシャドウが金色の目を鋭く光らせ、キューッと口元を上げ答えた。
「念のために言っておいてやろう。俺は不死身だ」




