調査2
翌日、朝食を摂ったラグは早速昨日立てた作戦を実行に移すことにした。
まずは街のシンボルになっている高い電波塔に観光客を偽って昇る。
昇ると言っても直に昇ったのではなくエレベーターを使っている。
そこなら国の景色が一望でき、ラシック城の全体も把握しやすいからだ。
人が少ない時間帯を選んで行ったこともあってか観光客はまばらで活動しやすかった。
ラグは早速、双眼鏡と透視魔法をフル活用して頭の中に城の内部の構造を叩き込んだ。
そしてすぐに宿へ帰り大きめのスケッチブックに美麗な城の地図を次々と描き込む。人間とは思えないほどのスピードで地図を描き終えた少年執事は、完成したものをメープルに見せた。
「どうでしょう? 城の作りはこの地図と合っていますか?」
「はい! 全て同じ作りです。ただ一か所だけ気になる点が……」
「気になる点? どこでしょう」
メープルが指差した箇所を覗き込む滝川とラグ。
そこは城の一階にある通路の壁であった。
メープルによるとその通路は城の使用人でも滅多にしようしないとのことだ。理由は血の如き赤い絵の具で何やら解読不可能な文字が壁に書かれているせいで、不気味がって皆その道を通りたがらないと言うのだ。
そしてラグの描いた地図には壁に矢印を書いてその上に読みやすいように大きな字で文字を書き記していた。
「これは何と読むのでしょう。僕にも解読できません……」
「私のお父様もこの文字の解読に苦心していましたが、遂に解読できないまま殺されてしまいました」
ラグとメープルでも読解不可能。と言うことはこれは昨日ミルフィーユに言われた「無能発言」を撤回させるチャンスではないだろうか。
そう思って文字を見た滝川は驚愕した。
「これは日本語じゃないか!」
「日本語?」
「ボクがいた世界の言葉だよ」
スケッチブックに書かれていたのは紛れもない日本語だった。
滝川は得意気になって翻訳する。
「こう書いてあるね『隠し通路出口。入り口は街外れの古井戸』……隠し通路? なんで隠し通路がこんなところに!」
「ここの壁の文字の意味は隠し通路の出口だったのですね。
これでお父様の苦労が報われました。滝川さん、ありがとうございます!」
よほど嬉しかったのだろうか、メープルはハンカチで溢れ出る涙を拭いている。
「滝川様、やはりあなたは凄い方です!
ここは隠し通路と言うことは入り口を探せばそこから侵入することができますね」
「ラグ君の言う通りだ。これでラシック王国奪還へ一歩近づいた」
街の外れには地図に記されているように確かに古井戸があった。
しかし昼間にここへ侵入しては誰かに見つかり怪しまれる可能性もある。そこで三人はまず描いた地図のスペアを携帯の写真メール機能で送った。暫くして地図が届いたとの報告がきたのでほっと一安心した三人は夜中までたっぷりと睡眠をとることにした。そうすれば夜中に眠たくなることもないだろうから。
滝川は初めてラグやメープルに貢献でき、大いに褒められたこともあってか舞い上がっていた。
きっと城に侵入したら今以上の働きをしてみせると心に決めて、彼女はあっという間に夢の世界へと旅立った。




