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ラシック王国の調査

人知れずラシック王国に潜入することに成功した滝川・メープル・ラグの三人は早速調査を開始する。

ラシック王国は王国の中央におとぎ話に出てくるような石作りの西洋風の城がそびえ立っており、そこを中心として円を描くように街などが作られていた。

ラシック城は滝川が世界史の授業で習った時に写真で見た古いヨーロッパの古城の十倍ほど大きさはあり、城の周囲は高い外壁に囲まれており、簡単には新入できないようになっていた。

城の前にも甲冑を着た門番が二人立っており、城を訪れる者を監視している。

三人は一旦借りている宿の部屋へ戻り、どのようにして城の内部を調べるか作戦を立てることにした。

部屋に戻った三人は扉の鍵をしっかりとかけ、自分達の会話の内容が外に漏れて怪しまれないようにとラグは部屋全体に防音魔法をかけた。


「これで例え窓を開けて会話をしても僕達の話の内容が外に漏れることはありません」

「ボクの美しい声が聞こえないなんて外の人はなんて残念なのだろう。

でも話の内容が漏れるとボクらが困る訳だから漏れない方がいいのかもしれないね」

「滝川さんって本当に自分自身が好きなんですね」

「メープル! それってボクがナルシストってこと!?」

「私から見た印象ですと滝川さんは紛れもないナルシストに見えますが、違うのですか?」


ニコッと笑ってさり気なく滝川を傷つけるメープルであるが、もちろん彼女にその自覚はない。彼女ははベッドの上に腰を下ろしたかと思うと、口を抑えて欠伸をひとつすると、そのままの姿で布団を被って深い眠りに落ちてしまった。時刻は午後十時。いつも夜は九時に寝る生活習慣を心がけているメープルにとっては眠たくなるのも納得の時間であった。


「眠り姫は深い眠りに落ちてしまったね。次に目が覚めるのは何百年後だろうか」

「僕の計算ではメープル様は午前七時には起床すると思いますよ」

「君には今のボクの冗談が理解できなかったようだね。受けると思ったのに……」

「冗談? なんのことでしょう?」

「分からないなら気にしなくてもいいよ。それより、どうやって城の中の情報を集めるか作戦を立てよう!」

「はいッ!」


元気よく返事をするラグに対し、滝川は何とも言えない微妙な顔をするしかなかった。






ラグの防音魔法は無線機の会話内容や電波も悟られないような効果があったので、滝川は安心して無線機を使ってスター道場に連絡を取り、今日調査した情報を道場にいる川村やミルフィーユに報告する。


「君達が教えた情報って街中歩けば誰でも気づくものじゃない?」

「確かに国に住む人なら誰でも知っている情報かもしれない。でも君達はラシック王国について知らない訳だから貴重な情報になると思う」

「成程ね。君達のことだからてっきりサボって遊びまわっているものだとばかり考えていたけど違うみたいだね。明日の情報も期待しているよ」

「ミルフィーユ、情報収集のプロであるボクに任せれば安泰だよ」

「君には特に期待してないよ。ラグとメープルは有能だから二人に迷惑をかけないようにしてね、無能なナルシストさん」


滝川が言い返すよりも早く無線は切れ、その後何度が応答を頼んだものの答える気配はなかった。

仕方がないので滝川は気を取り直してラグと一緒に作戦を考える。


「町人の恰好では城内に潜入できないかな」

「余程の事情がない限りは無理でしょうし、調べられるところにも限りが出てくるでしょう」

「私も……ラグ君と同じ意見ですぅ……」

「!?」


突然メープルが会話に入ってきたので、二人は肩を飛び上がらせた。

振り返ると、メープルは先ほどと同じようにすやすやと寝息を立てている。


「寝言か。流石のボクも少し驚いたよ。

それで、ラグ君にはどういう考えがあるの?」

「魔法を使った方がいいかと思います。僕の透視魔法で城の内部を透視して、城がどのような作りになっているのか調べます。それを基にして紙でスケッチを描いて地図を作るんです」

「成程。地図があれば城を奪還しやすくなるね」

「その通りです。そして城の裏門で警備をしている兵士に催眠術をかけて、城にいる兵士や武器の数などを把握します。

僕は三分間だけ時間を停止させる魔法ができるので、それを最大限使うんです。周りの時間は停止しても僕達は動くことができますので、何の問題もありません」

「いい考えだね。この作戦ならきっと全てうまくいくよ!

ボクなんかよりラグ君はずっと有能だね……」


先ほどのミルフィーユの言葉が心に響いていたのか、滝川はラグから目を伏せてしまった。その声は心なしかいつもより小さくなっている。

そんな彼女にラグは明るく声をかけた。


「滝川様、ミルフィーユ様のお言葉を気にしてはいけません!

今にきっと滝川様にしかできないことが出てきますから!」

「うん、そうだね。ラグ君、ありがとう」


少年執事に慰められ、彼女は左目から一筋の涙を流すと、自分の手をラグの右手に重ね合わせた。

と、その時。

冷たい――

ラグの手に触れた瞬間、彼の手の甲に強烈な冷たさを感じて咄嗟に手を放してしまう。彼の手からは人間の体温というものが全くと言っていいほど感じられず、その感触は手で雪に触っているのに等しいと滝川は思った。

彼には血が通っていないのか?

自分の横で穏やかな笑みを浮かべている少年執事。

出会ってまだ間もないが、彼には自分達に言えない何か重要な秘密を隠しているのではないか。そんな疑念が滝川の頭を掠めた。

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