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辺境を巡る本屋
「こんな辺境に『本屋』が来るなんて」
宇宙港に着陸するとほぼ同時に船に乗り込んできた、辺境惑星の長を示す肩章を身に着けた大男の言葉に、小さく微笑む。ハルがこの、小さな本屋を併設した宇宙貨物船で辺境を旅する理由は、祖母の形見の本の裏表紙に書かれた名前の人物を探すため。この本は、遠くの学校へと向かう宇宙船の中で読む用にと、家族で選んだ本。そう、宇宙へと飛び出したきり帰ってこない祖母は話していたらしい。
「祖父さんの話で聞いただけだが、本当に紙の本が並んでるんだな」
祖父さんも、優秀な姉が別惑星の学校へと向かう際に途中まで付いていった中継港で、家族と一緒に店に入っただけらしいが。辺境長の言葉に、ハルの細い背がピンと伸びる。まさか、この場所が、宇宙を飛び回っていた祖母の出身地なのか?
「……見てほしいものがあります」
唇を引き結び、目を瞬かせた辺境長を戸棚の奥へ案内する。
ハルが見せた、破れかけた裏表紙に刻まれた文字に、辺境長が声を失う。
やっと、辿り着けた。温かい安堵に、ハルは小さく息を吐いた。




