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幻の海に溺れる

 蒸し暑い部屋に寝転がり、手の中の小さな硝子片をしげしげと眺める。

 海を、模してみた。この硝子瓶をくれた、どんなものでも自作する友人はそう、言っていた。確かに、光の加減で緑にも青にも黒にも見えるこの硝子片は、(ゆう)が知っている、瀬戸内の穏やかな海の色にも、南の島の鮮やかな海の色にも似ている。陰鬱な冬の日本海の、空を映したような海の色にも。

 あの海に、戻ることはできるのだろうか? 開け放しの窓の向こうに並ぶ、海を持たない街の単調な屋根の並びに、息を吐く。あの海を捨てたのは自分なのに、何を今更。首を横に振ると同時に、尤は手の中の硝子片を床に落とした。

 床に触れる一歩手前で、硝子片は粉々に砕ける。

 次の瞬間、尤は、薄明るい水底を見上げていた。

 この、光景は。無意識に、首を横に振る。子供の頃、故郷の海で溺れかけた時に見たものと同じ。あの時は近くにいた大人が助けてくれたが、今は。

 ゆっくりと、意識が暗転する。

 再び目覚めた尤を出迎えたのは、荒い波の音と、捨てたはずの故郷の陰鬱な空。

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