第7話 AAランクへの昇格
投稿遅くなってしまい本当に申し訳ございません。
学校の行事と進研模試が立て続けに起こってしまい執筆できませんした。
冒険者ギルド3階特別会議室―――
ルリカは地下訓練場での謎の襲撃と巨漢とフルプレートとの一件の後、そこに半ば強制的に連行された。連行されたのだが、ギルド関係者の対応はむしろ腰が引けていて妙に丁寧だった。
「すまないな、あんなことの後にこんな埃臭いところに来てもらって」
ギルド幹部のおっさんがルリカに着席を促して、話し合い、というか試験結果の発表が始まった。
「初めましてだな、ルリカ君。私はここのギルドマスターを務めている者だ。率直に言おう。君をAAランク冒険者に任命する」
「……えっと、何故ですか?理由を聞いてもよろしいでしょうか」
率直な感想としては、何故、という言葉しか出て来なかった。碌に魔法も使っていないし、唯一の特技と言ってもいい弓の技量も何一つ見せていないのだから。
そこまで考えたルリカの思考を遮るようにギルドマスターが理由を話し始めた。
「第一に、君は“はぐれエルフ”としては明らかに異常すぎる。先ほど下にいた時に見たと思うが、“漆黒の騎士”と呼ばれていた男はかつてエルフと戦ったことがあるそうだが、その時の相手と比べて明らかにおかしいと述べていたよ」
“はぐれエルフ”という言葉が出てきてルリカの頭の上にはハテナマークが大量に浮かんだが、すぐにどうでもよいこととして脳内で処理された。
しかし過大評価もいいところだと思っていた。ルリカにとって今冒険者ギルドで身分証明書を作ってもらうことが最優先事項であってAAランクなどという高位ランクになるつもりなど毛頭なかったのだ。
ルリカは昨夜魔法の練習をしながら今すべきことを考えていた。“天命祭”の個人課題と共通課題をクリアするためには何をすればいいのか。淡い期待ではあるが、もし両方クリアすることができれば地球に帰れるかもしれないとさえ思った。ならばそのためにはこの世界の謎を解き、魔王を討ち、この世界を救わなければならない。
ならばするべきことは決まったも同然だった。
―――――旅に出る―――――それだけだった。ルリカはいつまでもその場で立ち止まっているほどの我慢強さを持ち合わせていない。考えるよりも行動すべし、という地球での師の教えを思い出してこの結論に至ったのだ。
「第二に、君にけしかけた彼らはこのギルド内でも貴重なBランク冒険者たちなのだが、彼らほどの強者相手に全力を出すどころか明らかに手加減していた。以上の結果を踏まえて、我々は君をAAランクに決定したのだ。初登録をする際はギルド幹部の決議によってランクを決定する決まりなのだからな」
ルリカはギルドマスターの説明を聞いても未だ何かを考えているように腕を組んでずっとテーブルだけを見つめていた。
そして観念したのか首を縦に振ったことでルリカのAAランクは可決された。
★ ★ ★
冒険者ギルドに隣接する宿“荒くれ者の宿”―――
ルリカは6畳ほどの部屋に設置されたベッドの上でうつ伏せになっていた。
既に夕暮れ時になりつつある中、ルリカは身動き一つもしない。その理由は昨夜から一睡もせず盗賊と戦ったり、Bランク冒険者と戦ったり、挙句の果てにAAランクとなったことでルリカを勧誘する者たちが後を絶たずに、それを断り続けたことによって蓄積された疲労によって自然と熟睡してしまっているからだ。
規則的に小さな呼吸音が部屋の中に響くが、ルリカの周りには赤、青、緑、茶、黄、黒、そして透明な小さな球体が漂っている。それらは絶え間なくルリカの周りに結界を張り続けていた。
ルリカはまだ知らないが、エルフという種には一人ひとり“精霊”が必ず付く。ルリカは火、水、風、土、光、闇、時空の全ての魔法を使うことができ、“精霊”は7体も所有している。
エルフは魔法適性が非常に高い上に、魔力の総量も多い。普通のエルフであれば多くても“精霊”は4体までしか持つことができないが、ルリカの場合は“天命祭”に参加する時に起こった事故によりエルフに転生、且つ神々により与えられた異能によりこの世界における基準値を大きく逸脱してしまっている。
ユニークスキル、“召喚契約”。
ルリカが神々に与えられた異能にして途方もないほどの力を秘めている。エルフに転生した事故の時に、自動的に発動していてかなり高位の“精霊”を7体も宿す結果となった。
しかし、ルリカや“天命祭”を運営する神々でさえ知らない呪いを同時に宿すことになるとは今は誰も知らない。
★ ★ ★
その夜中、ルリカは目を覚まし宿のある場所から自室に向かって歩いていた。
昨夜、というよりこの世界に転生した際に既に発生していた大問題中の大問題―――――トイレだ。
自分自身の体というのにトイレに行く際、非常に複雑な気持ちになる。しかも神様の嫌がらせか分からないが、穿いていたパンツはピンクのショーツだった。
恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしながらもなんとかトイレを済ませて来たのである。
そのまま大浴場に向かったルリカはこの世界の風呂に初めて入ることになったのだが、生憎と時間も時間で人は誰一人としていなかった。おまけに何故か日本の銭湯のような風呂だったので驚いた。
服を全て脱いで“異空間倉庫”に放り込んで改めて女となった自分の体を認識することになった。
エルフ特有の金色の長髪は腰にまで到達し、鍛え上げられ至る所に古傷があったはずの肉体は消え失せ、なるべく見ないようにタオルを巻いているのだがその上からでもわかる少しばかり膨らんだ胸と見事にくびれた身体になってしまっていた。
マメと度重なる稽古で硬くなった皮膚は柔らかいものに変わって、腕はこれでもかというほどか細かった。しかもエルフになってから再生能力も測り知れないほど強化されているのかラリアットやアッパーをして少しだけ傷ついた手の甲なども綺麗なままだった。
そして何よりも自分自身の姿を見て驚いたのが、あまりにも端正な顔立ちだったことだ。エルフの特徴の一つである美男美女が影響しているのか分からないが、可愛らしい顔立ちだった。
蒼色の瞳はまるで大空のように清らかなものだが、瞳の奥には不安と焦りが秘められているのだと自覚した。
「………あ?何で涙が出るんだよ……チクショウ」
変わり果ててしまった自分への憤りと一人見知らぬ土地に飛ばされ先の見えない今、ルリカの孤独を埋めてくれる存在はそこにはいなかった。
人知れず涙を流すルリカは風呂に浸かっても不安は拭い切れず、一度寝てしまっているというのに泥のように眠りについた。
次からは遅れそうな場合、後書きに一言書きます。
感想等宜しくお願い致します。