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弓使いの私は何者ですか?  作者: XXX
第1章 初めての異世界
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第15話 妹(自称?)

今回は頑張って書いてみました。


「やっと見つけたよ、お姉ちゃんッ!」


 一触即発の静寂が唐突に破られた原因であるエルフの少女はルリカ目がけて全力で走ってくる。突然、自分と瓜二つの顔の少女が目に涙を浮かべながら走ってくる、という状況に遭ったことが無かったルリカは唖然とすることしか出来なかった。


 ルリカの首に両腕を回し力強く抱擁して来る少女は嗚咽を漏らし、泣き始める。


「ちょ、ちょっと待ってッ!あなたは誰ですかッ!?」


 ルリカの問いにまるで答えようとしないエルフ少女は更に泣いてしまう。


「覚えて、いないんですか………お姉ちゃん」


 エルフ少女はルリカと似た顔でルリカだけを真っ直ぐ見つめる。まだ涙を浮かべながらもやっと言葉を交わすことができたことにルリカは安堵し、首を横に振る。


 覚えていない、というよりも初対面の人物に面識があるはずがないのだから。


「あなたの名前は?」

「………リリ、リリ・エインズワース。私はお姉ちゃんの妹だよ?」

「い、妹?」


 ルリカは少し脳内で状況の整理をしなければならないと思った。少し離れたところで姉妹の感動の再会に唖然としているお坊ちゃまを放置して。


「……やっぱり覚えていないんだね、お姉ちゃん」

「ごめんなさい、リリ。あなたとは初対面だと思うけど」

「ううん、いいの。これから思い出してもらえればいいから」


 リリは微笑むとルリカに再び強く抱き付くと、すぐに離れてルリカと敵対していたお坊ちゃまに正対する。


「フンッ、やっと終わったのかい?ならさっさとこの決闘騒ぎを―――――」

「……お前がお姉ちゃんの敵でいいの?」


 お坊ちゃまのセリフを途中で終わらせたリリから尋常ではないほどの殺意が迸る。そして両腰に携えていた剣を躊躇いなく引き抜くと同時に剣に魔力を纏わせた。


 レベルで言えば、今のルリカと同程度の魔力がこの場を支配していく。


「な、何だ貴様はッ!?」


 尋常ではない殺気に当てられたお坊ちゃまは全身を痙攣したかのように震わせる。


 しかしリリはそんなことお構いなしとでも言うようにゆっくりと歩み寄る。ルリカに似て整った可愛らしい顔は憤怒に歪み、ルリカよりも少し背が低いだけなのにその背中はとても頼もしく見えた。


 リリの双剣は一目でも名剣の類であると予測できるほどだった。ややロングソード気味の長剣だったが、リリは軽々とそれらを持っている。


「行くぞ、お前らッ!」

「「「ハッ!」」」


 お坊ちゃまの掛け声で、取り巻き達も剣を抜き放ち、リリに向かって4人は突撃した。剣を思いっきり振り降ろす。


「……敵でいいんだね?」


 リリは双剣でそれら全てを受け止め、逆に弾き返してしまう。年は分からないが、それでも男4人の諸手上段からの斬撃を受け止めるだけでなく、弾き返してしまうなど到底あの年からは想定できない筋力だ。


「クッ!?なんて奴だッ!?」

「……遅い」


 刹那―――――その場にいたルリカ以外の全員がリリの居場所を見失ってしまう。ルリカが鍛え上げられた動体視力でやっと見えるほどの速度だった。


 男たちの背後に回ったリリは双剣の峰で背中を野球のスイングのように叩き付ける。あら不思議、取り巻きの一人が空中へと打ち上げられるではありませんか。


 リリは次いで目にも止まらぬ速さで二人目の取り巻きを天高く打ち上げると、三人目の取り巻きの顎に強烈な足蹴りをお見舞いする。


 あっという間に3人の取り巻きを蹴散らすとリリは何もすることができず恐怖で震えているお坊ちゃまの眉間に右手の剣先を合わせると可愛らしい甘い声ではなく死神のような声音で宣言する。


「お姉ちゃんの敵は誰であろうと叩きのめす……分かったら二度と私のお姉ちゃんに近づくなッ!」


 憤怒の表情で怒鳴るリリはもはや鬼神の類ではないかと思ってしまうほど怖かったが、何故かルリカにはその殺気は来ない。


 そして驚異的な殺気に当てられ続け、さらに圧倒的な力量の差によって心身共に追い込まれたお坊ちゃまは遂にみっともないほどあっさりと意識を手放した。


 たった数秒の攻防ではリリの真の力まで推し量れたわけではないルリカは底知れないこの少女にかつて師匠に出会ったときと同じことを感じていた。


 即ち、畏怖に似た感情だ。


「さ、行こ?お姉ちゃん」


 先程まで剝き出しにしていた殺意の奔流は綺麗サッパリ消えてしまい、リリの表情はとても穏やかなものになる。


 剣の技量、殺気の密度―――――たかが十数年では到底到達することなど出来ないはずの領域に立ったリリはゆっくりとルリカに近づいていく。上目遣いでこちらを見つめる仕草はとても可愛らしいが、どこか計算されたものを感じるのは気のせいだろうか。

 

 

 

   ★ ★ ★

 

 

 

 場所は変わって、“荒くれ者の宿”のルリカの部屋―――


 ルリカは椅子に腰かけて、ベッドの上に座っている自称“妹”殿を見ていた。


 ルリカと瓜二つの整った顔立ちに、透き通るような金髪を肩まで伸ばして菊を模った髪留めをしている。顔立ち、華奢な腕や足、背丈などもほとんど同じなのに、ある部分だけ決定的に違っていた。


 服の上からでもわかるほどの豊かな双丘がこれでもかというほど自己主張している。かと言って、大きすぎるわけでもない。適度に膨らんでいる、と言った表現の方が正しい。


 だが、ルリカは何故か圧倒的な敗北感を味わっていた。


「リリ、だよね?」

「うん、お姉ちゃん!」


 元気に返事をするリリはとてもよくできた女の子だと素直に思う。ルリカは御嫁さんにするならこんな風な子もいいかも、と思った。


「それで、私がお姉ちゃんってことなんだけど………一体どういうこと?」

「そのままの意味だよ、お姉ちゃん」


 リリはニコッと笑い、ルリカと自分の関係をまるで息をするように喋り始めた。


「私とお姉ちゃんは、そのままの意味で実の姉妹。エルフの里、ウェリアで生まれ育った血のつながった姉妹だよ」

「ウェリア?」

「うん、エルフにはそれぞれ部族があって、その中の一つがウェリア。剣と弓、召喚術に特化したエルフの中でも武闘派に属する一族だよ」


 エルフには11の部族が存在し、人間社会から隔絶しているという。


「お姉ちゃんは、ウェリア始まって以来の天才的魔法使いで、精霊を7体も………あれ?何か違う……?精霊が変わっている?やっぱりあの事故で………」


 いきなりリリはよくわからないことを口にし始めた。


 精霊、という言葉に心当たりがなかったルリカは訝しい表情になる。


「ううん、何でもないよ、お姉ちゃん」


 その後、1時間に渡って話を聞かされたルリカはぐったりしつつも浴室に向かうことにした。

 


次回はもうちょっと頑張ってみようと思います。

感想等、宜しくお願い致します。

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