プロローグⅡ
しばらく涼助と歩いている時、人気のない所で後ろの方からチッとはっきりした男の舌打ちが聞こえた。
ゾッとしたけど、そんな私を安心させるように頭を軽くポンポンと撫でてくれた。
「やっと諦めてくれたみたい、俺がいて本当によかったね。」
その無邪気のそうな笑顔にそっと胸をおろした。
このまま気付かずに1人で歩いていたらと考えるだけでゾッとする。
「じゃ俺は、ここまでね、約束してるからさ。」
さっと腰から手を離し少し名残り惜しいと思いながらも軽くお辞儀をした。
「ありがとうございました。」
「今度からは、気をつけてね、じゃね。」
そう言ってちょっとだけ早足で私の前から消えていった。
また会えたらいいななんて少し期待してる自分がいる。
慣れた道を1人で歩くのも毎日の日常のこと。
さっきまで起きた事がまるで夢か何か見ていたようなそんな感覚に襲われる。
「はぁ・・・。」
不意に自分の年齢も考えながらも少し相手にときめいてしまった自分もいた事に少しため息をついた。
恋愛なんて柄にもない、夏鈴は、昔恋愛事失敗をしてしまっているせいかその恐怖に勝てることは、なかった。
今までも異性に対して不信感を持つようになり、一線をひくような付き合い方しかしてこなかった。
「あーバカバカしいー。」
ちょっと悩んでる自分に少し腹を立て少し大きめな声をだし、一呼吸おいてから自分の家までの道のりを歩いた。
次第に見慣れたマンションが見えてくる、慣れた用に入口に入るとオートロックの鍵を開け、自分の家の皆までのエレベーターに乗った。
チンッと聞きなれたエレベーターの音が静かな空間に響き渡る。
ツカツカと少し高い音がするヒールの靴音と一緒に廊下を歩き、自分の慣れた家へと入った。
「ただいまーなーんて誰もいないけど。」
玄関の電気を付け、片手でヒールを脱ぎ捨てた。
「はぁー、今日も疲れたー。」
そのままふらふらと歩き、ベッドにダイブするように倒れ込んだ。
「着替えるのも面倒臭いなぁ。」
そう言いながらも重たい腰をあげて、シャツのボタンを外し、ホーム着に着替える。
冷蔵庫から昨日コンビニで買った残りがあり、それと一緒に缶ビールを出した。
テーブルの上に置くなり、ビールのプルタブを開け、一気に1口飲み込んだ。
「ぶはーっ!やっぱ仕事帰りは、これにかぎるわ!」
そう言ってコンビニで買ってきたビニールに包まれているつまみを開けた。
箸でつつきながらどうでもいいテレビを見て時を過ごす。
これが私の日常。
気になる人もいないからオナラやゲップもやる。
「あははは、やばっ!この番組!」
とあるバライティ番組を見て1人で爆笑する私。
結局むなしいだけなんだけど。
これが普通、そして、私は、このまま寝落ちするのがいつものパターン。
いつもテーブルに涎の跡や顔に押し付けた跡が残って朝目を覚ました時にそれを消すのに必死。
1番最初の頃は、わからなくてそのまま出勤したら、皆に笑われた。
そこから気にするようになり、毎朝格闘が始まる。
女子力高い人は、まずテーブルのところで寝ないだろうし、涎のあととかもつかないだろう。
運良く朝早く目が冷めればそこからシャワー浴びて出勤するのがこの私だ。
いわゆる
ダメ女だ。
女子力も低い。料理なんてここ数年していないし、お弁当もお弁当屋さんで買ってくるような感じ。
ネイルとか化粧も最低ラインだし。
決して可愛い、綺麗の分野では、ない。
毎日ビールに溺れお腹の肉は、たぷたぷ。
ダイエットもしない。
そんな私に今日は、素敵な転機だったなぁとつくづく夢の中で思った。
マッチ貰っといてよかった。
なんてね。。