表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮題  作者: SAM
序幕
1/2

プロローグ

≪プロローグ≫


オレンジに淡く(とも)る天井の大きな照明を見つめながら


「これで最後にしよう」


そう佐伯素子(さえき もとこ)は呟いた。


隣で寝息をたてる男。

今の言葉は彼に向けて投げかけた言葉ではなく、素子自身へ決意を告げるために呟いたものだった。


しかし彼女には痛いほど分かっていた。

この決意が自分自身によって無下に破られ、またこの淡く灯るオレンジ色の照明を見つめながら同じ台詞を吐くことになるということを。



素子がこの男と知り合い、こうして二人きりで夜を越えるのはもう何度目だろうか。


私たち二人の重ねる時間に価値はない。


素子は頭では十分に理解していながらも、何故かこの男との淡く儚い関係に(あらが)えない自分に苛立ちを感じていた。


これが人間として、いや、女としての本能なんだと割り切れるのであれば どれだけ救われただろうか。


そんな素子の葛藤を嘲笑うような陽気なメロディが部屋に鳴り響き、ベッドのサイドテーブルに置かれた男の携帯がチカチカと輝きだす。



「ねぇ、携帯。携帯鳴ってるよ?」


「んん…」


男は素子の呼びかけに薄く目を開ける。


一瞬自分がどこにいるのか 。あぁ 。そうかこの女と一緒だったな。


そんな目の動きをしたように素子は感じた。


「いつの間にか寝てしまってたよ。」

男はそう言いながら携帯のディスプレイに目をやる。



たとえこの男との関係がホテル一室内に限られた薄っぺらいものだとしても、電話の相手が彼の本命の彼女だと、そのくらい素子にも分かるのだった。



「私のことはいいから早く出てあげたら?」



彼は素子に対し軽く片手をあげ、謝る素振りを見せると電話と共にバスルームへと消えていった。


そんな彼の背中に目をやりながら


「これで最後にしよう。」


守られることのない決意を、素子は力なく呟くのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ