記憶喪失少女
ある日のこと突然、親友であるカズヤが山登りをやろうと言われた俺は、仕方がなくついて行ったが遭難したことだった。
「うわ…青い空美しいほどのザ・緑感!そして美味しい空気!ほんでもって此所何処だよ!」
手持ちには、電源が切れたスマホ、ポテチ(うすしお味)、お茶、知らないおばあさんから貰った飴が1個にチョコ。うわぁ!お腹空いたからって早弁した反動が大きすぎるぜ!
「カズヤ!」
からの綺麗なやまびこが聞こえるから寂しくないと言うと痛い。
とりあえず焦らず少しだけ考えようか。そもそも登山経験がゼロである俺が、こうして此所に居ることが可笑しな出来事だ。我が親友であるカズヤは、何故そんな俺を誘ってそして置いて行く?殺す気か?いやいやあの単細胞でバカの領域を超えた脳みそで、そんなわけがない。心から友達だと思っている筈だ。良き友である奴が裏切ると言うかその理由なんて、無い筈だ。いや、ちょっと待てよ。3日前にあいつのお菓子を食べた。
「お菓子の恨みか?恨みなのか?」
そんなわけ無いな。うん。鶏の脳みそだからそんなこと忘れている。ん?鶏の脳みそ?もしかして、いやそんなわけ無い。いやいや、まさか俺の存在を忘れていたと言う凄腕な脳みそではない筈だ。
「ねぇ」
おっとついに俺の耳は、可笑しくなったのかな?女の子が聞こえるぜ。
「ねぇってば!」
おっとついに俺の目は、可笑しくなったのかな?女の子と花畑が見えるぜ。
女の子?花畑?もしかして此所は、天国?おっと気づかずに俺は、死んだのかな?いやいや、そんなわけ無い。
「ねぇ!此所は、何処なの?君は誰?ワタシは、誰?」
「え?」
「へぇ?」
天使が記憶喪失?いや、こいつは、天使じゃあなくて普通の女の子だ。女の子って言っても俺ぐらいな年齢(?)の可愛い系のたれ目な女性だけども何故そんな人がこんな所に?そして、この子は、ふざけているのか本気で記憶喪失なのか、今のところ解らない。しかしそんなことを問い詰めるような俺は、そんな男ではない。心優しい俺だからここは、優しく紳士的に教えてあげよう。
「えーっと…俺は、はやて…ここは、○○○山で、俺たちは、遭難しているって事」
「ワタシの名前知っている?」
「初対面です」
第一声が“名前知っている?”これは、本気で記憶喪失?いや、ちょっと待てよ。あの子明らかに手ぶらだよね?どうみても手ぶらだよね?と言うことは、二人で、俺の手持ちを分け合うとなるってことだよね?
「と、とりあえず下山しないとな」
「うん!そうだね」
此所でこの子を置いて逃げると言うことは、男として、最低最悪な行動だ。出来れば、逃げたい。このお菓子と言う食料は、俺のものだと言いきりたい。しかし、最低最悪のKY男子だなんてなりたくないと言う思いが強すぎて、そんな行動が出来るわけない。
とりあえず焦らず辺りを見て、空を見て考えようか。
「車の音が聞こえるよ?」
「車の音?そんなわけないだろ?」
確かに聞こえる。しかし、さっきまで永遠と続いた森だったのに?いやそもそもこの花畑があることすら疑問だった。この山にこんなに一面と広がった花畑があったら観光名所になって有名なはずだ。それよりもそんなこと考えるより早く帰りたい。そして、早くカズヤを殴りたい。
そんなこと思いながら車の音が聞こえる方へ向かうと山の近くにあった駐車場のトイレの裏にたどり着いた。やれやれこれで帰れる。そんなこと思いながら辺りを見ると報道陣が居る。空には、ヘリコプターも飛んでいる。
何かあったのだろうか?そう思いながら俺は、近くに行ってみた。
「少年が遭難して今日で、2週間がたちました。救助隊が全力もって捜索を続けて居ました。しかし未だ少年の姿は、見つからず遺族たちも不安な声が聞こえてきます」
俺たちを探しているのだろうか?だけどこんなに近くに居るのにどうして気づかないのだろうか?
「俺が置いて行かなかったら良かったんだ。俺のせいだ俺の…」
後ろを振り向くとカズヤがいる。俺に気がついていない?
「カズヤ!」
「ごめん…はやて…生きといてくれ」
俺に気がついていないじゃあない。俺が見えていない。
「ドウシテ、ワタシガミエルノ?」
女の子の声が何故か不気味感じた俺は、カズヤの後ろにいるあの女の子を見つめていた。すると女の子は、にっこりと不気味な笑みを浮かべ、左手をゆっくりと上げた。
左手に持っているのは、血まみれな人の手。見覚えがある人の手。息をのみ、目を細めてよく見ると
「ワタシハ、ダレ?アナタハダレ?」
俺の手だ。血まみれな体とその手は、間違いなく俺。そう俺は、死んでいるって事なのか?
そうだと解った瞬間カズヤの唇が動き微笑んだような気がした。