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大学ノートが俺の武器  作者: 鵺這珊瑚
第一章 西日本製フランス人形、降臨
3/11

第一巻

 ある日曜。色づき綺麗だった葉は落ち始め、風は冷たさを増してきている。

 俺の名前は(かなえ) 隼人(はやと)。今は中学三年生で、受験を控えている。好きな事は読書で、色んなジャンルを読破してきた。最近は、ライトノベル、通称ラノベに手を出している。不思議な物で、これを読むと女子と仲良くしてみたいという願望が生まれる。が、俺の周りには友達がいない。いつも一人だ。そんな俺に、女子が近寄るだろうか? 筋力は無いし、勉強も出来ないという、インキャラ男に、そんな可能性はない。

 そんな俺は図書館で、それを見つけた。


『絶交日記 下』


 薄汚れた、薄い大学ノート。文字は恐らく、市販のマジックで書かれている。墨で書かれていたわけでも、派手なデコレーションが施されていたわけでも無い。しかし、その文字は、他に無い、目に直接飛び込んでくるかのような存在感を放っていた。

 俺は、それに惹きつけられた。まるで、吸い込まれるかのような魅力を感じたのだ。

俺は待ち切れず、その場でノートを開いた。


『――誰かと絶交したいあなたに贈る――』


これが、ページの真ん中に書かれていた。字体は丸みを帯び、漢字の止めや払いに癖がある。見た所、女性の文字だ。音を立て、さらにページをめくる。


『あなたはこのノートを開けた瞬間から、≪本持ち≫となった』


 また同じ様に書かれた文字を俺は見つめ、ため息をついた。

 ホンモチ? ……なんだ、つまらない。小学生の遊びか。

俺は常備しているボールペンを取り出し、窓際の席まで移動すると、座り、ささっと手を動かした。


『図書館の物に悪戯をするな。』


 俺は満足げにペン先をしまい、鼻で笑った。だが、ノートをパタンと閉じた時、俺は自分の過ちに気付いた。古書ではあるといえ、図書館の物を傷つけてしまったのは重大だ。普通なら、これぐらい構わないと思う所だが、長い間この図書館を利用してきた俺にとって、これは許されざることだった。

 静寂の中、自分の心臓だけが音を立てる。俺は、誰にも見られていない事を願い、ゆっくりと後ろを振り返った。だが、その願いは届かず、俺は目を見開いていた。

 小学校低学年ぐらいの、金髪の外国人が、俺に悪戯っぽく笑いかけていたのだ。俺は、この少女に見られていたと確信した。少女は腕を大きく振りながら、つかつかと俺に近付いてくる。その目は、はっきりとノートを捉えていた。

 俺は逃げ時を逃し、少女と対峙していた。

 「お、お前誰だよ。」

 「私は一等諜報員クレア=エメット。あなたを連行しに来た。」

 は? そうか、こいつ、俺をチクる気だ。そう思った俺は、その少女を跳ねのけ、一直線に出口へ向かった。きゃっ、という声が聞こえたが、どうでもいい。俺はノートを隠すように抱え、図書館を飛び出した。

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