少女、谷底より帰還する
「うん?ここはどこだっけ」
落ちたところの近くには水場なんて無かったはずだ。念のために水に顔を写そうと体を立ち上げようとして違和感に気がつく。
「体が成長してる?」
(フィアー目が覚めたー)
精霊たちの声がする。どうやらさっき体に取り込んだ精霊達が喋っているようだ。
「何で私は成長してるの?」
(フィアねー体のいろいろなとこ使えなくなるくらい壊れてたから私達がその代わりになってるー)
「えーとつまり腕やら臓器やらが動かないようになったから動けなくなった部分に精霊を取り込んで生き延びたのかな?」
正直言って説明になってない言葉でも精霊言語というのは、その言葉より言葉にこめられた想いを魔力によって直接伝える、という特性上言葉足らずでもちゃんと通じる。
(そうだよー、フィアは今人間だけど精霊に限りなく近い存在になってるー)
「なるほどね、とりあえずここから脱出しましょうか、お腹すいたし」
脱出するにしても困った。私では空を飛ぶことはできないということは既に実証済み、危うく命を落としかけた。
「どうやってここから這い上がろうか、いい方法はないかな?」
(飛べるよー)
「ん?どういうこと。」
(フィアは体の8割近くが精霊でできてるから飛べるよー、ほらこんな風に)
「え、うわっ。」
浮かんだ、おそらく精霊達が勝手にやったのだろうそれと同時に自分がどうやって飛んでいるのかを理解する。
「こう・・・か」
この浮かぶことに関しては風でもなんでもなく精霊化によって行使できるようになった。精霊としての力なのだろう、なら風の操作を併用したらもっとうまく飛べるんじゃないだろうか。
「こんな感じでいけるかな?」
風を起こしてスピードを出そうとすると思ったより早くて木に衝突しそうになったので、風を起こして体制を変え回避しそのまま上へ向かって一気に飛翔する。
「あははははっ」
そうして谷底を抜けおそらく地上から20メートル近くで停止する。
「そういえば他の人は・・・考えても無駄かな間違いなく死んでるだろうし」
魔法の中には飛翔と言う魔法があるが、これはあの一瞬で発動できる魔術ではないし、魔法自体は珍しいものではないが飛翔を使える人間はあの中にはいなかったはずだ。
「にしても風の操作の正確性と出力があがってる?ついでに魔力もかなり。」
これも半精霊化の影響だろう、なんかいろいろと人間やめてるような気がするが気にしない方向で行くことにする。
さすがに普通に速度出すとまずいかもしれないので、全身を魔力で覆うこれは 一般的には闘気とよばれる魔力の使い方で、身体能力と耐久力の上昇が望める
「魔力も上がってるからこのまま隣町まで一気に飛んでいこうか。」