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第二章01 退学

クロードが教官になってから四日目の昼エルステイン城内部では大規模なパーティーが開催されていた。

パーティーに呼ばれているのは主に不滅士育成機関の教官や技術者などを含めた者たちで年に二度行われる親睦会のようなものだ。

皆、綺麗なドレスコードをして、武器デバイスを着けているような不躾な者はいない。


クロードは、そんなパーティー会場の端のテーブルでデューイと談笑していた。

「年に二回だったかこのパーティー?」

「そうですよ」

「贅沢なことだな」

「はは、先輩パーティーとか嫌いですもんね。現に今もここから動いてないですし」

「堅苦しいのが嫌なんだ。それにこんなことする資源がある他に回せ」

どこの国も資源を多く保有しているわけではない。

エルステイン国も例外ではない。

ユニットが使われるようになったのも、従来の金や銀、銅と言った鉱物資源を貨幣に使うよりユニットと言う便利機器にして使う方が資源コストが低いからと言う理由が存在する。


「あ、そういえば先輩、今度調査班が出るらしいですよ」

デューイが思い出したように手を叩くと言い出した。

「調査班?」

「はい、連絡班と兼用ですけど」

「ふぅーん、で?」

「この頃、ゴーストの動きが変だと思いませんか?」

クロードは思案する。

確かに言われてみれば変な気がする。

戦闘区域、しかも、あの時間帯であれほどの長話が出来るとも思えない。

それに夏固有のゴーストも見かけていない。

「確かに妙だな」

「それでレゾロフ班とテレン班の合同で調査をした後、南のガレウス国との情報交換をするそうです」

名前に挙がったレゾロフ・メタトリックはAランクで実力は下位と言ったところにいる。班平均はBランク上位だろう。

続いてテレン・クィーナーはBランク上位で、班平均はBランク中位にいる。

序列入りまたはAランク上位を入れてないことから上層部はそこまで危険視していないのだろう。


「取り敢えず用心してた方がいいな」



その後もクロードはデューイと談笑を続けた。

他愛もない話だ。昔のことや最近のことなど。

クロードがデューイと話しているとコツコツと足音が近づいてきた。

振り返り音のする方を見るクロード。


そこには、吸い込まれそうな綺麗な黒のドレスを着たリリーがいた。

リリーは、首に真珠のネックレスを、耳にルビーのイヤリングをしている。

その姿は、着けるべきに人に着けられたとでも言うような、相乗効果を出して何時も以上な気品を感じさせた。


リリーは無言でクロードに近づくと、右手に持つグラスを差し出す。

クロードは反射的にそれを受け取る。

リリーは自身が左手で持つグラスをクロードのグラスに優しくぶつける。合わさった二つのグラス特有の綺麗な音色を奏でる。


リリーは満足したように笑うとグラスに入っている豊潤な甘いマスカットの香りをさせるシャンパンを一口で飲み干した。


「なに? わらひの、は、のめはいっていうの」

クロードがその行動を唖然としたように見ているとリリーは不機嫌そうに言った。

酔っているのだろう。何を言っているのか全く分からない。

「お前、酔ってるだろ」

「よってない」

「いや、酔ってる」

「よってないては」

リリーは頑なに認めようとしないが顔はほんのりと赤みを帯びている。


クロードはさっさと飲んだ方がいいだろうと思い、渡されたシャンパンを飲み干す。

クロードが飲んだのを見て頬えむリリー。


「で、何か用か?」

「ようはないと、きちゃだめなの」

「そういうわけではねぇけど」

「ならいいでしょ」

そういうとリリーはクロードの腕に抱きつく。

「なっ、離れろ」

「いーや」


リリーは酔うと抱きつき癖があったと思い出すクロード。

「おい、デューイ助けろ」

「いいじゃないですか、抱きつくぐらい」

「いいわけないだろ」


クロードは意識しないように頑張っているがドレス越しに来る柔らかい感触がお酒と合わさって理性が飛びそうになる。


「いい加減にしろ」

クロードは無理やりリリーを引き剥がすとさっさと帰ってしまった。



早足で帰るクロードの背中を見てデューイは言う。

「帰っちゃったよ。いいのかいリリー?」

「いいわけないでちょ」

「いつも思うんだけど、お酒の力を借りるのは良いけど。呂律が回らなくなるまで飲むのはどうかと思うよ」

「し、しかたはいでしょ。クロといるといつものじゅぶんでいられなくなるの……、だからかまってほしくていろいろするのに、いつもしっはいするし、どうすればいいの。たひかにあのひととくらへるとみりょくがはいのかもしれはいけど…………ぐすん……ねぇ、きてふのデューイ」

もはや何を言っているのかもわからない言葉で目に涙を浮かべているリリーの言葉に頷いているとデューイ。

「素直になった方がいいんじゃないか」

「そんなのわかってるはよ。けれほうもくいかはいのよ」

その後も何か言い続けるリリーのに相槌を打っているデューイがぽつりと漏らした。

「……素直になれないのは僕も同じか……」

「なんかいっは?」

「いいや、なんでも」



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