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序章05 出会い

除霊士育成機関は、今の時代では不滅士育成機関と双対をなす組織である。

一個人の生存だけなら不滅士だけでも事足りるだろうが、人類という大きな集団で生き残る、もしくは闘うというなら除霊士の存在は必要不可欠だ。

不滅士が闘い、除霊士が守ると言う体制が現在採られている。



現時刻は太陽も真上に上っている

前日の夕食兼反省会の時にクロードから座学については他の人に頼んでいるからと説明を受けて、アリス、ミレイ、カレンの三人はクロードから連絡を受けて除霊士育成機関に来ていた。

除霊士育成機関は四つの校舎に分かれていて、何処が上などは存在しない。

武力を必要とする不滅士と違い、除霊士に求められるのは包容力といえる。

そのため、除霊士の大半は女性で男性は全体の2パーセントだ。


そんな、女の園とも言える場所の西校舎にアリス達は来ていた。

何段もの階段を登り、目的の四階に着くと耳に罵声ともいえるものが聞こえる。


「先生の解らず屋、もういいです」

バタンっと豪快に扉が閉じられる音が響く。

そのまま、以下にも不機嫌ですといっている足音がドンドンとアリス達に近づいてくる。

階段を登り切った所で立ち止まっていたアリス達は目の前を過ぎ去る少女を見た。

歳は自分達と左程変わらないだろう少女は綺麗な栗色の髪を靡かせて歩く。


チラリっと少女の目がアリス達を捉えたが、何を思ったのか顔を赤らめて、ゆっくりとした足取りに戻って過ぎていった。


三人は小首を傾げ、静寂がその場を満たす。

先に沈黙を破ったのはアリスだった。

「何だったんだろ?」

「……恥ずかしくなったんだと思う」

「あ~ぁ、そうかもね。それより、クロちゃんに言われた時間もうすぐだよ」

ミレイは左に着けている少し大きめの腕時計を見て言った。


ミレイの言葉にアリスは先ほど少女が来た方向に曲がり、説明された部屋を探す。


部屋を探すのにそれほど時間は掛らなかった。

曲がり角から三つ目にある扉に、クロードの説明にあったピンク色のネームプレートで掛けられている。そこには『ミリーアヌの部屋』と書かれていた。


アリスが代表して扉を二三度ノックすると「どうぞ」っと可愛らしい声が中から聞こえた。

その声に従い扉を開ける。


部屋を開けると、冷房が効いているのだろう気持ちいいぐらいの涼しい風が肌を撫で、甘いリンゴにも似た香りが鼻腔をくすぐった。

部屋に広がるのはピンク、ピンク、ピンクと目がチカチカしそうなぐらい明るい部屋である。

部屋の奥から何かが擦れる音がした。

「あなた達がクロードさんの生徒ですね」

奥から現れ女性にアリス達は戸惑いが隠せなかった。

窓から差し込み光が彼女の明るいピンク色髪を照らして淡く反射する。その長い髪は腰ぐらいまであるように思われた。思われたという表現をするのは彼女が立っていないからわからないためである。現れた女性、ミリアーヌは車いすに座っていのだ。


いち早く立ち直ったアリスがミリアーヌの質問に答える。

「は、はい。私たちはクロ教官の指示でこちらに来ました。私はアリスです」

「カレンです」

「ミレイです」


「そうですか。私はミリアーヌと申します。立っていないでそちらのソファにどうぞ」

アリス達の紹介に頷くとミリアーヌはアリス達にソファに座るように促す。アリス達は断り入れてからゆっくりと腰かけた。


「そうね。授業はほとんど受けてないと聞いたのだけれど……」

「はい、数回と言った程度です」

「わかったわ。まず、さきに言うけれど、教科書の内容は信じなくていいわ」


「「「えっ!?」」」

ミリアーヌの突拍子もないことに驚きを上げる三人。


「……ど、どういうことですか?」

「どうと言われても……、情報規制って言葉を知っていますか?」

「はい」

「それと何が関係あるんですか~」

ミレイが手を挙げて質問する。

「ふふ、元気ね。教科書は一般の人も購入することが出来るから情報を押さえてあるわ」

「な、なるほど」

「情報規制は私達、除霊士や不滅士もあるのだけれど、ランクに応じて規制が解除される仕組みになっているわ。教官は訓練生にEランクまでなら情報開示の自由が認められているの。だから、私があなた達に教えるのはEランクまでの不滅士に関する知識になるわ」

三人はミリアーヌの説明を聞き、自分たちはまだ不滅士について、まだほとんど何も知らないのだと自覚させらた。

けれど、それと同時に言いようのないやる気が漲るのが自身でわかったのだった。



「霊子は霊力と意味的には同じものだと思って、霊子は個々の個体みたいのものね。でも、個体ではない。霊力はそれの保有量や力と示したりして使っているの」

「……霊子とは何なのですか?」

「そうね。これも教科書の内容とは違うのだけれど、生命エネルギーのことを俗に霊子と言うの。だから、所有者の気分や健康状態に左右されやすいものでもある。霊子を使って脱力感を覚えたことはあると思うけど、休息を取ると元の体調に戻るのはその過程で霊子の増加が行なわれているからなの」

食事、呼吸などの整理減少による霊子増加は生きとし生けるものならば誰でも出来るものだ。

「ちょ、ちょっと待ってください」

「ん?」

「生命エネルギーを使っていると言うことはデメリットは無いのでしょうか?」

「あるわ、ちょっと待ってね」

ミリアーヌはそう言って奥に引っ込むとすぐに戻って来た。その手に握られているのは……。

「リンゴがここにあります」

「はい」

「このリンゴは木から切り離されているから、もう霊子増加はないわ。あるのは減少のみ。このリンゴが不滅士のリンゴ君だと仮定しましょう」

ミリアーヌは自分の言葉に三人が頷く確認してから話を続ける。

「リンゴ君は防衛戦で保有量の三割を失いました」

ミリアーヌがそういうと林檎はどんどん腐食し始める。

その光景に三人は目を見開くがミリアーヌは構わず話を続けた。

「リンゴ君は自宅に帰り、食事と十分の休息を得ました」

今度は生気を取り戻したかのように、元通りのおいしそうな林檎に戻る。

「わかった? このサイクルから外れると生きている物は死んでしまうの。霊子を取り、霊子を消費することでみな生きている」

ミリアーヌは三人に諭すように説明するがこれがすべてと言うわけではない。

Bランク以上が知ることのできる権利。霊子を酷使するものみな早命だと言うこと。

霊子を酷使するとは病気や、怪我も入るのだが、不滅士や除霊士と比べることも出来ないほど霊子を酷使している。


三人が納得とばかりに頷いているところにチャイムが鳴った。

「もうこんな時間ね。あっ! 大事なことを忘れていたわ」

ミリアーヌは時計を見ると何か思い出したように手を叩く。

「大事なことですか?」

「一緒に来てくれるかしら?」




ミリアーヌに連れて来られたのは大きな装置のある部屋だった。

祭壇と言っても差支えのない機器が真ん中にある。

ミリアーヌはそこに近づくと膝に抱えて持ってきたカバンの中身を置く。


「あっ、それは」

ミリアーヌが置いた物は膜に包まれた発光する球体、そう霊魂だ。

「これは、あなた達が手に入れた霊魂よ。今から除霊の儀を行います」


除霊の儀、除霊士の力で霊魂の穢れを浄化し、天に還すための儀式を言う。


ミリアーヌはゆっくりと車いすから立ち上がると両手を広げて言葉を紡ぎ、歌うように祈りを捧げる。

ミリアーヌが来ている純白のワンピースと相まって、その光景はまるで女神のコーラスのように思え、霊魂はミリアーヌに共鳴するかのように淡い光を徐々に強くした。

視界を焦がすような強い光を最後にしてから、霊魂はその場から消え去った。


「45000ジュールね」

ゆっくりと腰を下ろしたミリアーヌはそう呟いた。

「あなた達、ユニットを出してくれるかしら?」


ユニットは、身分証明書や、財布として使われる霊子機器だ。


三人は言われるままユニットをミリアーヌに渡した。

ミリアーヌはユニットを受け取ると祭壇のような機器に接続する。


二分ぐらい経過しただろうか、ミリアーヌからユニットを受け取ると、自分のジュール残高が上がっていることに気づく。

「これって……」

「ゴースト討伐分の報酬よ。浄化費は引いているけれど。クロードさんはいらないそうだから今後も一割が私で残りはあなた達での分割になるわ」

「ありがとうございます」

浄化費が一割と言うのはかなり相場より安い価格なのだが三人はそんなことは一切知らない。それより手に入れた初めて自分で稼いだお金と言うものに興奮を隠せないでいた。




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