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ねねこさんと僕の一日 

作者: 泥田坊

 ふと気づくと、何かが僕のおなかの上に乗っていた。

どうやらねねこさんのようだ。体を起こして彼女の頭を撫でてやる。ねねこさんのきれいな毛並みの感触が手に伝わってくる。そのままお腹、背中と一度撫でだすと、なかなかやめられない。彼女も気持ちよさそうなのでなおさらだ。


 ねねこさんを抱きかかえつつ、リビングへと向かう。時間を見ると七時半前だ。遅刻するかどうかのギリギリの時間だ。これ以上ねねこさんと戯れていると、ちょっぴりまずい。何とかこのままなでていたい誘惑に打ち勝って、彼女を定位置の籠の中に入れる。


「にゃーう……」


 やめるんだ、ねねこさん。そんなに切なげな声を出さないで。誘惑に負けそうになるじゃないか。


朝食の準備をする。もちろんねねこさんの分も忘れない。食べながら、遅刻しない用どう登校しようか考える。歩くと少し間に合わなそうだ。通学路にある一時預かりの自転車置き場まで乗っていくか。それとも走るか。少し考えた後、自転車で行くことにした、そのほうが楽だ。


 ねねこさんの昼食を置いていく。彼女は賢いから、しっかり昼までとっておくのだ。野良猫だったのを拾ったはずなのに、どこでそんなことを知ったのか。もとは飼い猫だったとか?


「そこんとこどうなの?ねねこさん。」

「なー」


 返事が返ってくるわけもない。もしかえって来たら、僕は彼女が猫又なのではないかと疑うべきだろう。それはそうと、そろそろ八時になるところだ。そろそろ出発しなければいけない時間だ、急いで着替えて学校に向かわねば。


「じゃあ、行ってきます。」

「うにゃー」


ねねこさんのいってらっしゃいを聞きつつ、僕は学校へと向かうのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 学校で猫を愛する同志と語らい、授業を真面目に受けた後、僕は帰路に就いていた。ちなみに僕は帰宅部である。ねねこさんを放っておいて彼女がさみしい思いをするのかと思うと、あまり部活に入る気にはなれなかったのだ。あまり魅力的に思う部活がなかったという理由もあるが。


 帰り道、僕とねねこさんのあった公園が、何となく目についた。はじめは僕にとって彼女は汚い猫でしかなかった。ちょっとかわいそうになって、餌をやったりした。はじめは引っかかれたりもした。気づけば一緒にいる事が多くなっていた。野良猫の駆除が始まるというから思わず連れて帰ってそのまま買うことにしたんだっけ。


・・・病院に行ってワクチン打つの、すごい嫌がってたっけなあ。今では懐かしい記憶だよ、ほんと。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 家に帰ってきて扉を開けると


「にゃーう」


 というお出迎え。とてもかわいらしい。そんなねねこさんを抱えて、リビングで着替え、のんびりとおやつを食べる。


「にゃー」

「こら。プリンは食べちゃダメだ!」

「にゃう……」


 そんな目で見つめられるとこっちが悪者に思えてきてしまう。しかしこんなものをあげてはねねこさんの栄養バランスがまずい。さらに、プリンの味に慣れたらしばらくの間、キャットフードなんかを食べなくなってしまう。可愛そうだがここは心を鬼にしなければ、彼女の体が危ないのだ。体型とか。


「そのお腹。プリン食べたらでぶったりしちゃうかもよー」

「にゃにゃっ!?」


 慌てて手を引っ込めるねねこさん。こんな仕草を見ていると、ねねこさんホントは人語を理解してるんじゃなかろうか、と思うことがある。ねねこさんものすごく賢いしな。トイレも一発で覚えたし。


「そこんとこどうなの?ねねこさん。」

「にゃ・・・・・・?」


「何が・・・・・・?」とでも言いたげに首をかしげるねねこさん。あらかわいい。追求の手は緩めることになった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 今夜の夕食はチャーハン。材料を切って、フライパンに油しいて、炒めるだけだから簡単だ。エビーチャーハンやイカチャーハンなど、アレンジもたやすい。ちなみに、ねねこさんの夕食は猫まっしぐらである。


 自分の席に着き、まだ食べないの?というふうにこちらを見てくるねねこさん。微笑ましいと同時に、小さな幸せを感じる。


「いただきまーす。」

「にゃー」


 夕方の小さなマンションの一室に一人と一匹の声が響き渡った。

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