耐えならがの旅立ち(2)
読んでくださる方、本当に感謝・感謝です。
グラングルドさんに連れていかれたのは近くの森林公園だった。ここはとても広くてよく冒険者の訓練に使われることが多いところだ。
グラングルドさんは林の中の開けたところにくると、振り向いて盾を構えた。
「餞別だ…稽古を付けてやる。こい!」
まあ予想はしていたが…。グラングルドさんは武器は持っていない。手加減をしてくれるのだろう。
「府抜けた攻撃をして来たら、こいつをお見舞いするぞ。」
グラングルドさんは右手を握りしめて拳を作り突き出して来た。あれでこの前モンスターの頭吹き飛ばしていたのを目撃したっけ…。
自分の武器のハンマーよりよほど狂気だよなあと考えながら身構えた。そう、自分の武器はハンマー、頭にウォーがついてない普通のハンマーだ。裏方作業によく使っていた。武器じゃないじゃん!と突っ込まれたら言い返しようがない。
ペネンリックスは気合をいれてハンマーを打ち出した。
「そんなお大振りで当たるか!」
弾かれて拳を食らう。
「小手先でどうするつもりだ!」
弾かれて拳を食らう。
「日曜大工か!」
弾かれて拳を食らう。
そんなエンドレスな感じでかなりの時間稽古を付けて貰った。
かなり疲れて来てはいるが…今まではこんな指導受けたことなかったので嬉しかった。ハンマーを無心で振るう。
かしん!
およ?いまの一撃は手応えが違った。
「何も考えるな!続けろ!」
言われたとおり、ハンマーを繰り出し続ける。手応えが変わって来たのが手に取るようにわかる。
「調子に乗って力を入れるな!無心だ、無心!」
それからも延々と続けて、日がくれる頃まで相手をしてくれた。
夕方になって、きりあげるぞと言って腰を降ろしたグラングルドさんの近くに自分も座る。
「力に頼るな、小手先の技術に走るな、…ただ打てばいい、それだけをしろ。」
そう言って最後に小袋を渡してくれた。お金が入っている、こちらは文字通り餞別なのだろう。そしてくるりと背を向けてしっしっと手を降った。
ペネンリックスは一言礼を言ってその背中に向けて深く頭を下げ、歩み出した。
向かう先は術師会館というところだ。今日は遅くなってしまったので明日行くことにしよう。
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グラングルドを見つめます。
若者が歩み去ると、その大男はむくりと起き上がり一本の木に近づいた。その木には横線のキズがいくつもついている、一番上が一番新しい。その一番上のキズを愛おしそうに指でなぞる…。
近づく足音が聞こえて来た、2人の様子をずっと見ていた者がいたのだ。
「…すんません、追い出す前に行かれちまって。」
その男、スルトは申し訳なさそうな声で話しかけた。
「ふふ、冒険者に向いてないと思って別の道を選ばせようとしたのは間違いだった…。神様にそう言われた気がするよ。」
そう、彼らはペネンリックスの将来のことを思っていびって追い出すことにしていたのだ。しかし、こちらの想像をはるかに超える雑草魂の持ち主だった彼は、辞める気配さえ見せなかった。
「本当に似てましたね、息子さんに。」
大男は少しだけ眉間にシワを寄せた。アビリティを授かって冒険者として家を出た彼の息子はもうだいぶ長いこと連絡がない。
「心配してないさ、あいつは生きている…」
確信を持っているというよりも願望しているという声で返して来た古い友人の大男に…スルトは答えることが出来なかった。
…が、
「餞別、本当に少ししか渡さなかったんですね、給料も普通の半分も出していなかったのに。」
大男はニヤリと笑って
「いつか挨拶にでも帰って来たときに渡すさ。」
と少しだけ嬉しそうにつぶやいた。
ペンペン君は1回1不幸以上が基本です(笑)。