初クエストはドラゴン退治…のホント
とある宮廷魔術師が語ります。
大きな荷車を…例のモノを…迎え入れながらふうっと息を吐く。宮廷に仕える俺にとってこのような外泊続きは身体にこたえる。今いる洞窟は大きく例のモノおいれて置くのにちょうど良い。
「シュターデン様」
副官のひとりが声をかけて来た。
「おう、犯人はどうだ?」
「ダメです。息を引き取りました…。」
「馬鹿なやつだ…逃走防止の罠に幻術がきく訳ないだろう。」
この近くの村を襲ったドラゴン騒動、その犯人は王国に登録されていないアビリティ持ちだった。幻術のアビリティを使い騒ぎを起こしていたのだ…。一昨日なんとか捕まえて物理的な逃走防止策を施していたのが役に立った…逃げられるよりはマシだが犯行理由がこれではわからない。
「…まあいい。それよりテストをするぞ。」
荷をほどくと例のモノが姿を表した。
「紋様陣…”操り人形”」
ゆっくりとそれが起き上がった。
数年前王国が回収したモノ…長い首と尻尾、四肢を持ちながら背には羽を持つ巨大生物…ドラゴン。生きているか死んでいるかかわからないが発見してから今日まで一度も動いていない。これを知っているのはあの一隊の中では王女と護衛隊長のみだ。
「模擬戦をするぞ、不自然な動きがあったらすぐに言え!…後は王女がうまく立ち回ってくれるのを期待するか。」
王国の威信がかかっている茶番劇のため、シュターデンは気は乗らないものの、準備を始めた…。