飛行少女とドラゴンとペンペンと(2)
いつも感謝です。
「あーーー!」
思わずペネンリックスは叫んでしまったが、しかたがないと思う。何しろ初めて空を飛んだのだから…しかも心の準備をする暇がなかったのだから。
「大丈夫!手を離さないかぎり落ちないわよ…って、だっ、だから、しょうがなくつないでやっているのよ。勘違いしないで!」
ナゼ怒られるのだろう?勘違いもなにもないじゃないか、と心の中で叫んで口にはしなかった…何しろ自分の運命は全てこの女の子に握られているのだから!
ぐんぐんとドラゴンに近づいて行く。少し慣れたせいか周りが見えてきた…下は見たくないが景色は最高によい。ドラゴンは近づくものに興味を持ったのか旋回して待ってくれていた。とうとうすぐそばまで来てしまった。紫の髪色の女の子はドラゴンの左側に並走するように飛んでいる…よく見える様にといってドラゴンに近いほうの手に握り変えられた。
(何か用か?)
頭の中に直接言葉が響いた。ドラゴンの力か?
「!@#$%^&*」
女の子が何かを話したが、聞いたことのない言葉だった。
(フム…竜族の言葉を使うには修行が足らぬ様だな…それでは汝の思考まで伝わるぞ、考えが筒抜けだ)
女の子はかなり驚いた顔をした。わずかに手の位置が上がる…えっ?盾にされてる?
(乗ってやるのも一興か…試してやろう!)
そういうが早いかボアっと炎を吹かれた。不思議なことに、飛んでいるにもかかわらず炎のブレスは真っ直ぐこちらに向かって来た、しかも速い!
「アビリティ発動!」
そう言ってペネンリックスは耐久力のアビリティを活性化させ、炎が直撃する直前に手を離す。この前の炎のアビリティ持ちの炎よりはるかに熱い竜の炎に押されるようなかたちで吹き飛ばされた。
視界がくるくる回り方向感覚がなくなるが、必死に手足をバタつかせ回転を抑制する…なんとか安定した!
多少落ち着いたらこんどは視界に地面が入ってきた…今度は落下の恐怖が心を縛る。必死に女の子を捜すと少し離れたところに飛んでいてこちらに向かって来てくれる。後少しというところで急に視界がぶれて身体に変な力がかかり悲鳴をあげた!気が付くと方足をドラゴンに咥えられている。空中で油揚げのようにかっさらわれたようだ。
(それ!)
ドラゴンは地面めがけてペネンリックスを振り下ろした。先程に倍する加速度で地面が接近してくる…いやこっちが近づいてるのか!「ぜーったい追いつく!」
遠くで声が聞こえた…まだかなり後方だった…もう無理か…いや、まだ諦めたくない!
両手両足を広げ身体を安定させる…ほんの少しでも時間を稼ぐ!拾われやすい体制を作る!彼女がどうだこうだと考えるより自分に出来ることはなんでもしておくべきだ!
その願いが通じてか地面まで後もう少しというところで抱き留められた!しかし勢いを殺し来れていない。
「いっけ〜〜〜〜〜!!」
なんとか進行方向の向きを下からほぼ横へ変わった。2人は柔らかそうな草の生えた地面へと突っ込む!…ペネンリックスが下で最初に地面に接触しその後は2人で絡まったようにゴロゴロゴロゴロしてやっととまった。
ペネンリックスは飛び起きる。身体の丈夫さは並ではない、すぐにドラゴンを探す。
ドラゴンはゆっくりと降りて来た。
(勘違いしないことだ…我がブレスの熱さはあの程度ではない。汝が得ている祝福を持ってしても防ぎきれぬ、我は一瞬で汝を灰にできるのだ)
疑う気にもなれない…後ろの女の子は意識を失っているようだ。かばうように立ちがらドラゴンに話しかける。
「貴方を侮るなんて絶対しません。勝手に近づいておいてなんですがゴメンなさい。助けてください。」
精一杯説得しよう!駄目元だ!
「では…その女を差し出せば汝は助けよう…。」
その言葉に身体が硬直した…思考も…いきなり因縁つけて来てこの騒動の原因になった後ろにいる女の子はなんのつながりもない…皆もしょうがないと言ってくれるだろう…でも…でも…、
「それは出来ません…」
カッコをつけてる訳ではない。…見て見たかったのだ…自分が。神秘と…地上最強といわれるその姿を…。このことを彼女だけに責任を押し付けたくない…それに彼女は自分を助けようとしてくれた。
もし戦うことになるなら戦おう、自分は冒険者になることを選んだのだ、…自分で!
しばらくの間、ドラゴンはこちらを見ていたが、いきなり羽ばたいた…突風に顔を背け目を瞑っている間に姿が見えなくなった…どこかへ飛んで行ってしまったらしい。
(汝の思考…美味であった…今日は300年ぶりに昼寝から覚めてエサを探しておったがその必要もなくなった…褒美に生かしておいてやろう。)
頭に直接聞こえてくる。ペネンリックスはお礼を言いながらふと首をかしげた…今日300年ぶりに起きたってことは竜、…違うんじゃないかな…。