ショートストーリーそのに
ちょっと変わったのを書いてみたくなった。
SS「その後の那津&聖悟」
※前話、「アンチ・ライヤー」の後の話。会話形式。
「で?」
「…は?」
「は、じゃねぇ。拓史にナニされたんだ?言ってみろ。」
「え、ちょ、それはスルーする方向じゃ……」
「俺が、そんな甘い性格じゃねぇことは分かってるだろ?那津。」
「うわ、反論できないところが怖いな…」
「それで、何をされたんだ?」
「ナ、何モ、サレテマセンヨ?」
「片言話してる時点でアウトだろ。話せ。」
「……わ、分かったからじりじり追い詰めるの止めよう?ね?」
「返答と態度による。」
「(…この横暴俺様が。)」
「…まあ、話さないなら仕方ないな。ベッド行こうか、那津。」
「まーっ!ちょ、何で!?いや、言う!言いますからっ!」
「じゃあ、とっとと言え。」
「…うう、別に大したことじゃないケド。」
「けど?」
「…押し倒されてチューされた。」
「……………。」
ガタッ
「わーっ!待って!聖悟、待ってってば!」
「黙れ、那津。俺は今からヤツを血祭りにあげに行く。」
「だ・か・ら!言いたくなかったんだってばぁ!」
「…半泣きでしがみつかれた所で、可愛いだけで何の効果もないんだけど。」
「っ!」
「顔、赤い。」
「う、うるさい!」
「だからソレ、可愛い。」
「って、けなしてんのか!?」
「まさか。」
頭を撫でる聖悟。ふて腐れる那津。
一時休止。説得タイム。
「…だからね。ケーサツ沙汰とかは勘弁してほしいわけよ。私、別に何とも思ってないし。」
「ホントに?」
「ホント。」
「…まあ、那津がそんなに言うならしょうがないな。」
「(…ホッ)」
「次にヤツに会ったら殴っとくとして……」
「(やっぱ殴るんだ…凶暴な彼氏だな、全く)」
「…よし、ベッド行こうか、那津。」
「…って、え?」
ひょい。
「ハイ、連行連行。」
「ちょ、だから何でだぁああああ!」
END
SS「待ち合わせ」
「人生とは、何でしょうか?」
「は?」
噴水の前に腰かけていると、いきなり声がかかる。
那津が横を振り向くとそこには、不精髭を生やし、ぱりっと糊のきいてそうなシャツにスラックスを履いた妙齢の男がいた。
――え、今の、って私に声かけたの?
内心首を傾げながらも那津が曖昧にほほ笑むと、男はにっこりと笑みを作った。
「いかがですか、お嬢さん。」
「(…やっぱ私かよ)…さあ、どうでしょう?」
「私は、そうですね、道のようなものだと思います。」
「……はあ、」
何と言っていいか分からず呆然とする那津。しかし答えなど必要としていなかったように、男はすらすらと自論を述べた。
「私たちは時折選択を迫られることがあります。目の前に何本もの道が引かれているが、一本しか選べない。そして、先に何があるかも分からず不安のまま進むしかないのです。」
「………。」
「先々に待っているのは決して幸福なことだけではありません。
辛いことも障害も沢山あるでしょう。でも振り返って別の道を選ぶこともできない。」
「…………。」
「何とも無情なものです、人生というものは。」
「えっと、そう、ですね?」
那津は適当な相槌を打つものの、半分話をスルーしている。
…いや、聞いていられない、というのが実情だ。
この正体不明の男の話は長い上に、意味が分からないのだ。
男がふう、と息を一旦ついて上を見上げる。
バタバタっとタイミング良く鳩の群れが飛び立った。
「…しかし自分の選んだ、その限られた道の中での数々の出会いや出来事は、何にも変えられないほど尊く、美しい。そう思いませんか?」
「………。」
「特に人と人とのふれあいは貴重です。その人たちの『道』が交差し合わなかったら、一生会うことも無かったかもしれないのですから。」
「…はあ。」
いや、もう本気でそろそろ退席したい、という気分丸出しのまま頷く那津。
―が、男はまた嬉々として口を開いた。
「でしょう!?何十万分の一かの確率で偶然に出会う二人!そして始まる物語!ああ、なんて素晴らしいのでしょう!」
「!?(わ、吃驚した!いきなり大声だしたよこの人。)」
「これはもう偶然ではなく必然と呼べるでしょう、いや、むしろ運命!」
「……。(なんか痛いこと言いだしたな…どうしよう。私まで痛い子だと思われる……)」
「…そう、お嬢さん!必然的にこの場で会った私たち!運命を感じませんか?」
「はあ?」
那津が男の言葉に対して盛大に引いていたら、いきなり男が那津の方を向き、近寄ってきた。那津はびくっと身体をのけぞらせる。
「ぜひこのよき日に巡り合えた必然を感謝し、互いに深く知り合うべきです!そして新たな物語を描きましょう!」
「え、いやでも」
「遠慮することはありません。人生に迷いはつきものですが、時に強い選択力も必要とされます。私と一緒に行く、という選択肢を選ぶだけでよいのです!」
「……えっと。」
「お嬢さん、いかかがでしょう!?」
「……………。」
――口を挟む隙がない。
全くコッチのセリフを聞こうとしない男に、那津はほとほと困り果てた。ワケの分からない迫力に圧倒され、段々と距離も詰められつつある。
男もそんな那津の様子を感じとったのか、顔を合わせるなりぱっと飛びのいて一礼する。
「ああ、失敬した。少し先走り過ぎましたね。してお嬢さん、今からお暇ですか?」
「……いや、今からデートなんですけど……」
「…………。」
そのひとことを聞き、
ああやっと言えたと安堵する那津とは対照的に、
男は途端にぴたりと動きを止め、すっと目を細めた。
「…………おや、そうなのですか。」
先程までの勢いが嘘のようにぼそり、と言葉を濁す。那津は『?』を頭の上にさらにひとつ飛ばした。
「―では、貴女はその彼氏さんが来るのを待っているのですね。」
「あ、はい。」
「そして、ここはその待ち合わせ場所であると。そういうことですか。」
「そうなのです。」
――ヤバい、口調が移った。
那津は慌てて口を閉じるが、そんなことを気にする様子のない男。
「…成る程。それが、貴女の選んだ『道』ですか。私はただの交差点。すれ違っただけなのですか……まあ、そういうこともあるでしょう。」
彼はぶつぶつと独り言のように呟き、また空を仰いだ。
勿論、それを見た彼女は。
「…はあ。」
―と呟くほかない。
そうこうしているうちに、
那津は待ち人――彼女の恋人である国崎聖悟――が角を曲がってこちらに向かってくるのを視界にとらえた。
ほっと息をつき、その方向を見つめていると、男が『来たのですね、貴女の運命が…』などと戯言を言いながら腰を上げた。
「ではさようなら、お嬢さん。貴女の風の分岐点に私が立っていたのなら、またお相手願いますね。…貴女の人生に幸運あれ。」
「……………。」
そう、最後までワケの分からんセリフを残して男は去った。
ポカーンとしたまま動かない那津。聖悟は数秒遅れて那津の元にたどり着き、彼女を見下す。
「那津、待ったか?…今の男、何だったんだ?」
「…手のこんだナンパ?」
「は?」
END
ショートは書くの楽しいけど、オチが安っぽい(笑)
短編書くの上手くなりたいです。




