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脳内計算  作者: 西山ありさ
その後の短編+番外編
90/126

ショートストーリーそのいち

さて、ここで短めのショートストーリーでも。

基本ギャグです(笑)



SS「最近の二人」





「あ、見ろよ宏樹。あれって、ナッちゃんと聖悟じゃね?」

「…ホントだ。」


歩きながら信二が指さす方をみると、確かに黒い車から降りてくる二人の男女が見えた。

―車の持ち主である国崎聖悟と、本城那津だ。運転席と助手席から降りた彼らは、そのまま歩きだす。


「おっそい出勤だな。もう10時だぜ?ありゃ、また聖悟の家に泊まったんだなー。」

「最近ずっとじゃない?仲がよろしいことで。」

「半同棲みたいな感じだよな、最早。」


二人でぼやきながら彼らを観察していると、何やら言い争いながらこちらに向かってくる様子。足音もにぎやかに、突進する勢いだ。



「……だから、何で味噌汁に玉葱なんか入れるんだよ!ありえねーだろうがっ!」

「うっさいな、ネギが無かったんだから仕方ないでしょうが!つか、あの貧相な冷蔵庫どうにかしてよね!!」

「んだと!?毎日送ってやってるのに、何だよその言い草!」

「君が君ん家に勝手に連れて行くんだからそれぐらい、トーゼン!むしろそろそろ実家(=那津の家)帰らないと服とか無いし。」

「…ちっ、じゃあ送ってやる。今日、何限終わりだ?」

「もー、勝手に帰るからいいってば、そんなの!」



俺たちに気付いていないのか、ギャーギャーと騒ぎながら、カップルは目の前を通り過ぎていく。

会話の応酬を繰り広げながら、やがて彼らはそれぞれの棟に入って行った。


――そして、その場に残された俺たち。


…まったく、アイツらは全然変わらないな。

俺はやれやれと息をつく。隣の信二も呆れ顔だった。


「…なんか、もう彼氏彼女ってよりは夫婦だな、アレ。」

「数ヵ月後にはマジで結婚とかしてそうで怖いよ……」


苦笑しながら、俺は祝儀代でも貯めてやろうか、と本気で考えた。




END










SS「ガールズトーク」





「さて、那津。今回の報告をしてもらおうじゃない。」

「…………。」


私はずずいと詰め寄る女、――篠原未央をちらりと一瞥した。

…いつもながら、スゴい迫力だ。高級ティーカップを置き、小さく息をついた。


―なんだかんだで、和解(?)し、今では名前で呼び合うほどの仲になった私と未央さん。そして、その隣で麗奈さんがニコニコと笑っている。

今日は一カ月に一回ペース(多い)で開かれる『麗奈さん家お泊まり会』だ。


「違う!『定期報告会』の間違いでしょ!?」

「…いや、そっちが違うだろ。場所提供、麗奈さんなわけだし。」

「シャーラップ。つべこべ言わずに、とっとと出しなさい!」

「……………。」


…無論。こういう高飛車な所は友人になってからもまっっったく、変わっていない未央さん。

…あー、面倒くさい。


「…まあ、いーけどさ。コレいつまで続けんの?」

「私に彼氏ができるまで。」

「成る程。じゃあ少なくともあと二年は続…「相変わらず、どんだけ失礼なのよ。」


ぐいっと胸倉を掴まれたので、私はその場で両手を上げ、ホールドアップ。

…冗談も通じないんだから、全く。

ハッと、鼻で笑い飛ばしてやる。…ま、もちろん心の中で、だけど。

―しかし、これ以上刺激してやると拳が飛んできかねないので、私はヤレヤレとばかりに彼女の目的のブツを見せてやることにした。


「んー、今回はコレ。」


パチン、と携帯電話を開きフォトフォルダーを開く。

そして、手慣れた操作で目的の画像を探し出し、未央さんの目の前に突き出してやった。


「……っ!!?こ、これは…!」


液晶いっぱいに映し出されたソレを見た瞬間、未央さんは。

ぶしゅーーっと、効果音がつくくらい派手に鼻から血を出して倒れ込んだ。


「…え、ちょ、未央さん!?赤っ、血!血が!?」


(お高い)テーブル、椅子、カーペット。

すべてが彼女の手(鼻?)により紅に染まり、それはどんどんと広がっていった。

――言うならば、大惨事だ。


―やべぇ、何コレ。殺人現場みたいになってんだけど。

致死量?え、これ致死量じゃない?あれ、これ私が悪いの?

麗奈さんは『あらあら』とか言って完全他人事にしてるし、

どうすればいいんだ、この状況!?


おろおろと、とりあえずその辺の血を布巾でぬぐう。

すると、元凶の彼女が真っ赤な口を歪め、ニヤッと笑った。



「…ぐふっ、那津、なかなかのモン出すじゃない……。」


ゆら、と鼻から血をぬぐい、起き上がってくる彼女はさながら負傷した戦士のようなオーラを纏っている。

…いや、何と戦ってんだ?この人。


……

…まあ大丈夫そうだからいいか?(適当)


それにしても、やっぱ今回の凄い効果なんだな。



「あ、えっと、うん。自信作だもん今回の。『寝顔聖悟』。」


そう呟いて、私はもう一度画面を見る。

そこには、シャツがはだけ鎖骨と首筋をちらりと覗かせながら寝ている私の彼氏の姿があった。


「うぁあああ!なんってカワイイのおお!!反則でしょ、コレ!」

「…まー、確かに普段とのギャップは凄いよね。」


と、私は一歩引いて未央さんに同意する。

…分かったからハァハァすんな。あと、鼻血流すな。


―あ、最近一緒にいて気付いたんだけど、やっぱりこの人ある種の変態さんだったみたいです。

合掌。




「……でも、聖悟君もこんな可愛い顔して眠るのね。」


―と、横から麗奈さんが今日初めての発言をした。

携帯の液晶画面を私の横から覗きこみ、ふふ、と笑みを零す。


「…そーみたい、だね。私、この間初めて見たんだけど。」


―まあ寝顔だけなら、こいつは本当に可愛い。いうなれば、お昼寝中の天使のようだ。彼女の方を振り向き、私もこくんと頷く。


「あら、はじめて?」

「そ。いつも聖悟の方が先に起きちゃうからさ。この間、やっとアイツより早く起きたの。」


…だから、低血圧で朝は苦手なんだって。逆に何故、聖悟はスッキリと目を覚ませるのか知りたい。


「へぇ。じゃあ彼も持ってるんじゃない?ナツの寝顔。」

「はー?そんな変態なことするヤツ、この女以外いるわけ……「だーれーがっ!変態よ!!」


がし、と突然両肩を掴まれて、私はびくりと身体を揺らす。


……っうわ!?もう復活した!?


くるりと後ろを向くと、やはり未央さんが立っていた。…鼻にティッシュをたくさん詰めて。

オー、美人、台無し。


「何、アホヅラしてんのよ。」

「……う、えっと、(血とか)大丈夫?」

「ふん、モチロンよ!

あ、そうだ。これ、もうデータもらったからしまっていいわよ。それよりこの携帯、画質悪スギ!今すぐ最新のヤツに変えなさい!!」

「いや、無茶言うな!」

「無茶じゃない!むしろこんな旧式持ってるのアンタくらいよっ!」

「わ、悪かったな!」

「悪いと思ってるならスマートフォンに機種変更しなさいよ!」

「ちょ、だからお金ないんだって!…いたっ、髪引っ張るなーっ!」


またまた、ギャーギャーと喚き散らしながらやがて取っ組み合いになる私と未央さん。引っ掻いたり、足使ったり、何でもアリだ。私も負けじと応戦する。


…いや。つか、乙女がこの場から二人ほど消失したんだが、こんなお泊まり会で大丈夫か?

あれ?この話、確か副題が『ガールズトーク』のはずだったんだけどな?

いつの間にかこのぶっ飛んだ変態と本気バトルだと!?勘弁しろって!!


――そんな、乱闘を続ける非乙女たちを横目に、麗奈さんは一人、ぼそっと呟いた。


「確か、信二君が………」



―――――



****** at seigo's house *******



「…おい、聖悟。何だそれ?」

「ん、見んな。」

「即答かよ!?いーじゃねぇかちょっとぐらい!携帯いじって何してんだよ。」

「あ?おい!」


ひょいっと聖悟から携帯電話を奪う信二。そして、どうやら彼が内蔵してあるデータフォルダを見ていたらしいことに気付き、


「……?」


その内容に、目を瞬かせた。


「これ、ナッちゃん……?」


―そう、その大半が最近撮られた那津の写真だったのだ。


「返せ。」

「いやいや、待てお前。いくら彼氏だからってこの量……

…あ、寝顔もある。かわいー。」

「見んな。」

「痛ぇっ!!?」


ビシッと彼の両眼に目つぶしをキメ、聖悟は自分の携帯電話を取り戻した。そして、今日撮った分をしっかりとSDカードに保存する。


「……っ、お前な、ソレ隠れて撮ったんだろ?そーいうの、犯罪って言うんだぞ。」


信二は目を押さえながら低くうなるような声を出した。

――こいつ、涼しげな顔して何してんだよ、と言外に言う。


「…ま、那津も撮ってるんだし、オアイコだろ。」

「は!?ナッちゃんも撮ってんの?聖悟を?」

「本人はバレてないと思ってるらしいけどな。だから、俺もお返し。」

「……………。」


何気なく言う聖悟に、信二はジトっとした視線を送る。そして首を傾げながらぼそりと意見した。


「………それは、果たして健全な付き合いなのか?」

「さあな。ま、いいんじゃないか?」


聖悟はもう一度保存したばかりの自分の彼女の顔を覗き、フッと笑みを零して携帯を閉じた。




END





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