那津-眼鏡=?
ここから短編です。
完全ノープラン、gdgd書きですがよければ読んでみて下さい。
「…要するにさ、その眼鏡、はずしてみればいいんだよ!」
「…………は?」
なにが、要するに?
――――
―――
――
某月某日、いつかの日曜日。
天気、快晴。
私はいつもの4人の男前と一緒に近所の公園にいた。
―と、いうのも、今日は一日中寝る日と心に決めていたのに、デリカシーの欠如したヤツらに無理矢理起こされたからだ。
…おかげで只今、絶賛不機嫌中。
……休日なのに、外に出るとか面倒くせぇ。
なんで特に用もないのに遊びたがるんだ、こいつらは。
ナチュラルに舌打ちをかますと、突然、私を見つめていた水谷が、冒頭の寝言を言ってきた。
「…ちょ、寝言じゃないって。真剣、真剣。」
「…地の文にまでつっこんでくんな。大体、サブキャラの君の発言で物語が進行するとか、認めないからね。私。」
「ひっど!一応レギュラーなのにぃ!」
ギャーギャーと大げさに叫ぶ水谷に耳を塞ぐ私。
…あー、うぜぇ。声でけぇ。日曜日のコイツのテンション、酷い。
ついてけないし。…ついて行く気もないが。
チッと、新たに舌打ちをすると、他の人たちも、横から話に入ってきた。
「……でも、作者もこんな人数増やすんじゃなかったとか言ってましたよ。」
「えっ!?圭、ナニその裏情報!何で知ってんの?」
「さあ?何ででしょう?」
「ま、でも計画性のない作者だからね。仕方ないよ。」
「え。」
「事業仕分けされるとしたら、間違いなく信二から、だよな。」
「え、え。」
「いままで、おつかれ。」
最後に3人が口を揃えて言う。
「…!か、勝手に消すなあぁあ!!」
水谷の悲痛な叫びは、青空に吸い込まれ、消えていった。
――
「…ま、それはともかくとして。」
斎藤は廃人と化した水谷を放置し、爽やかに会話を続けた。
……って、いいのか?後ろのアレ、放置しても。
なんかもう人間じゃないよ?黒いカゲみたい、だよ?
………。
――ま、いいか。どうせ水谷がいてもいなくても、変わんないし(酷)
そう早々と結論をつけた私は何?と斎藤に先を促した。
「……ナツちゃん、信二の言うとおり、メガネとってみれば?」
…おい、斎藤。お前まで、何言い出すんだよ。
「……何で。」
「ほら、コンタクトで可愛くなるって、王道パターンじゃない?暗さも取れると思うよ?若干。」
いや、どこ情報だよ、ソレ。何の根拠があってその統計?
「カワイクなれば、ちょっとは女子からの攻撃が減るんじゃないですか?」
と、乾も言う。
……そんなこと言われても。私、一般の少女マンガヒロインとは175°くらいズレてるからなあ…。
そんなミラクル、ナイでしょ。普通に。
「…別に、興味ない。眼鏡のままで十分。」
コンタクトなんて、と不必要をアピールし呆れたように肩を落としてやる。
すると、さっきまで黙っていた国崎も会話に入って来た。
「散々女どもにバッシングされてて、よく言うな。印象も変わるし一遍やってみりゃいいじゃん。」
は?君までもノリ気?何故?
「……つーか、俺が見たいし。」
…それか、理由は。てか、絶対楽しんでるだろ、君。顔が半笑いなんだけど。
「…だからー、いらないって。コンタクトなんて、絶対ヤダ。」
しかし激しいオファーに、私は断固拒否する。
……いや、今回だけは拒否せねば!
「何で?」
「着脱が面倒。」
「付けたこと、ないクセに?」
「……高いし。」
「あ、4人で買いますよ、それくらい。」
ねえ、と乾が言うと男たちはニヤニヤしながら頷いた。
…そこまでするか?フツー。
「いいじゃないの、お試しなんだし。上手くいったら、メリットあるでしょ?」
「買いにいきましょうよ。近くに店もありますから。」
「…………。」
嬉々として色々と提案してくる男たちに、私は無言で後ろに後ずさった。
……ヤバい。激しくヤバい。
いつもそうだけど、結局コイツらに流されるパターンだよね、これ。
でも、今回だけは……っ!マジ勘弁―――!
私はじりじりと後退をし、男たちと距離をとった。
――しかし。
「おっと逃げない、逃げない。」
「――!」
後ろに下がっていると、斎藤の広い胸にぶつかった。肩に手が置かれ、動けない。
……っ、くそ。邪魔すんなこのアホがっ!
私が後ろの斎藤を見て、目だけで悪態をついていると、
「…ったく、那津って都合悪くなるとすぐ逃げるよな。」
今度はベンチに座っていた国崎が、私を抱き上げ自分のヒザの上に乗せた。
………あー、あれだ。あぐらかいた父親の間に座る息子みたいな感じ。
とにかく、腰辺りでヤツの腕が巻きつき、逃げ場は完全に無くなった。
「…だーっもう!いいから離せってぇ!」
私は顔面蒼白になりながらも、子供のように足をジタバタさせた。
「ダメ。…つか、何でそんなに嫌がるんだよ。」
国崎は、精一杯の抵抗を全く気にせず、至近距離で私を覗き込む。
「……………。」
「もしかして、怖い、とか?」
「……………。」
「まさか、ナツちゃんに限ってそんなことあるワケないよな?」
ニヤリと笑みを浮かべ、やっすい挑発してきやがる国崎。
私はしばらく無言の圧力をかけていたが、何か言えよ、と国崎にせっつかれ、
「……ったら………か………………」
ぼそりと、呟く。
「は?」
…………あーもうダメだ。
私はせめてもの抵抗に、キッと国崎を睨んだ。
「怖かったら…っ悪いか!」
…恥。恥だーーーーっ!!!
「っだーーっはっはっはっはっ!!マージでー!!?」
…案の定、全員に大笑いされた。
いつの間にか、水谷まで復活してるし。うざ。
私は顔を赤く染め、国崎の膝の上で縮こまるように俯いた。
……あー、赤っ恥。だから言いたくなかったんだってば。クソ野郎どもが。
「ナツちゃん、かーわいー。いまどきコンタクト入れるの怖がる大学生って。」
「う、うるさいっ!あんな半透明の異物、目の中になんか入れられるか!!」
「うわ。人類の進歩を異物言ったよ、この人。」
「…そういや、圭はコンタクト作ったよな?どんな感じだったか教えてやれよ。」
「そうですね。でも初めて入れた時は慣れなくて……
目がえぐれるかと思いましたよ。」
――!!
途端、戦慄が走り私は顔をこわばらせる。
…え、えぐれるって!!
頭の中を、グロテスクな想像が駆け巡った。
「…!いーやーだーっ!やっぱ帰るぅーー!!」
「冗談だって。落ちつけよ。」
爆笑しながら、4人は暴れる私をたしなめた。
…こいつらどこまでSなんだよー!!怖ぇよ。もうなんか、色々と怖ぇよー!
―――
――
「…じゃ、ナッちゃん。ここで待ってるからサクサク作ってきな~」
「………。」
――場面は変わり、今、私はコンタクト屋……というか眼科と眼鏡屋がくっついたような店の前にいる。
…ま、抵抗空しくムリヤリ引き摺られてきたわけだ。予想通りにね。
はあ………やっぱり、結局こうなったか。
「……ホントに入るの?」
最後の確認のように私は背後の4人を振り返る。
すると
「何を今更。」
「行ってらー。お金は後で払ってあげるから。」
「別に、そう大したことないですよ。」
「頑張ってね。」
彼らはそれぞれ適当な激励を送ってくれた。
本当に、相当手を抜いたカンジの。
……………はは。あはははは。
―もう、君ら死んでくれないかな。
何、そのニヤけた顔。
こっちはガクブルだっての。嫌な汗が止まんないのっ!悪いかっ、畜生!
彼らを睨みつけながら、店の一歩手前で止まったままの私。
…入るしかないんだけど、勇気が出ないというか、決心がつかないというか………
つーか、私は承諾してないんだけど、何で自分の為でもないのにこんな高価な買い物しないといけな…
「さっさと入れよ。邪魔。」
「だ、わあああっ!?」
ウィーン。
ついに地の文まで遮ってくれた国崎の容赦ないヒトコト、そして背中を押されたことによって店内に(強制的に)入った。
「いらっしゃいませー♪」
途端に聞こえる、店員の美声。
……おねーさん?
もう、貴女の笑顔すら悪意あるように見えちゃうよ。
私、結構な重症じゃない?このボロボロのハートは修復不可能かも。
……あぁ、もういいよ………さっさと逝ってくるか………
私は足取りも重く、ふらつきながら店内奥まで案内された。
――
那津を待つ間、4人は近くのコンビニの前で待機中だ。
それぞれ思い思いのことをしていたら、ふいに水谷はコーラをグビグビ飲みながら隣の男に話しかけた。
「…なぁ、聖悟。どんなんになると思う?」
「あ?何が?」
「眼鏡とったナッちゃんに決まってんじゃん。そういえば見たことねぇし。」
「ひょっとしたら大変身とかあるかもしれませんよ?」
「ナツちゃん、黒縁だからね~。あんま目ぇ付近は隠れてて見えないし。」
乾、斎藤と次々と彼の考えに便乗するが、
「……無いだろ、そんな漫画みたいなこと。大体、眼鏡がないくらいでそこまで変わらねぇよ。」
国崎は苦笑して答えた。
「えーそうかあ?じゃ、何でノったの、このハナシ。」
「え、だって」
国崎は振りむいた。
「―楽しいだろ?見てて。取り乱す那津見るの、興奮するんだよな。」
ニッコリ。
「…………」
「(ドS……)」
「(ドSだ……!)」
3人の心がひとつになった。
「ん?どした?」
「…や、何でも無いっす。ハイ。」
乾いた笑いの3人を不思議そうに見る悪魔。
『えー分かんないか?』と続けようとする国崎に、斎藤が慌てて口を開いた。
――とりあえず収拾つけとこう。
「……ま、まあそうかもね。そんなこと簡単に起こるわけないよね、実際。」
「……私もそう思うけど?」
女性の声が、ふいに聞こえた。
4人は声のした方に同時に振り向き、
「え、」
「は?」
「な、」
「………」
――全員、呆けた顔を作った。
……彼らの目線の先には、本城那津が普段通りの表情で立っていた。
普段の、覇気のない彼女らしい顔。
――ただ、眼鏡をかけていないという点以外は。
「……な、なにさ、一体。」
当の本人はいきなりフリーズした彼らに、ビクッと肩を震わせる。
――え、何そのアホらしい顔。どうした。イケメンが台無しなんだけど、君ら。
…んー、そんなに変かなー、裸眼の私。
「……いや、何っていうか……」
「…すごい、変わったね?ナツちゃん。」
しばらくして、ようやく水谷と斎藤がぼそぼそと話した。しかし、何故か私と視線を合わそうとしない。
…なんか、よそよそしくね?まぁいいけど。
彼らのリアクションが掴めないまま、私は腕を組んでショーウィンドウ越しの自分のカオを覗き見た。
「えー、そうかぁ?あんま変わってないと思うんだけど。…あ、てか乾!コンタクト全然痛くなかったよっ!」
そういえば店内でちょっとした恥をかいたことを思い出して、騙しやがったな、とばかりに噛みつくと、
「……ん?信じてたんですか?あの話。」
あー、スミマセン。と、彼は事も無げに言って下さった。
………おい。なんぞそれ。
あまりにも自然に言われたんで開いた口が塞がらねぇよ。どうしようお頭。
うなだれる私。そして、
「…君、今回酷くない?」
…そう呟くので精一杯だった。
………ああ、信じてましたよっ!
悪い!?網膜に入れた瞬間ビクッとなりましたけど、何か!?(自棄)